フロント・サスペンションが高性能になればなるほど、リア・サスペンションの重要性も高まります。ホンダが、リア・サスペンションに求めた理想は、走行中に起こるさまざまな現象に対して自ら制御する能力と、荷重変化に対応する快適な乗り心地、リアシートやラゲッジスペースのための高いスペース効率です。そのために、フロント同様リアにも、ダンパーをショック吸収機構のみの目的に独立させることでフリクションの少ないフラットライドな走りを生む、マルチコントロール式のダブルウイッシュボーン・サスペンションを採用。より効率化を図るためにロングスパンで剛性の高いトレーリングアームに、ロアアーム、アッパーアーム、コンペンセーターアームの3本のリンクを最適配置し、キャンバーおよびバンプステア、サイドフォースステア、コンプライアンスステアをマルチコントロール。まったく新しい発想から生まれた、その運動性能は、フロントと同じく、コーナリング性能、高速直進性ともに、きわめて高いポテンシャルを獲得しています。まず、ロール時のキャンバー変化に対しては、ほぼ対地キャンバー0(ゼロ)を維持することで生みだされる高いコーナリング性能と、ゼロ・バンプステアによる安定した高速直進性を実現。そのうえで、コンプライアンスステアに対しては、リンクブッシュの変位によるトー・アウトをリンクジオメトリーのトー・イン設定により打ち消すゼロ・コンプライアンスステアを達成することで、高速直進安定性および制動安定性に寄与。加えて、操縦性・安定性に与える影響を最小限に抑えながら、コンプライアンスを増加することが可能となり、ホイールストロークの増大とあいまって、さらに乗り心地を快適なものとしました。また、ブレーキトルクをトレーリングアームでうけることでアンチリフト効果を発生させ、制動時の姿勢変化を抑制します。また、ロアアームとコンペンセーターアームのワイドスパン化により、高いトー剛性と広いタンクスペースをもたらしています。高性能な特性を獲得しながら、スペース効率を徹底して追求することで、リア側のトランクフロア面は、これまでに比べ実に65mm※1も低くなり、トランクスペースの拡大に大きく貢献しています。
※1 シビック3ドア
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