犬が寝言を言ったり、寝相が悪かったりする様子は可愛くもあり、面白くもあります。そのため、こうした様子を記録した動画はSNSでも人気です。ただ、あまりに鳴き続けたり、動きが激しかったりすると不安になりますよね。本記事では、犬がなぜこのような行動を取るのか、対処法などについて紹介します。
犬が眠りながら、ワンワン、クーンクーンなど鳴いている姿をしばしば見かけます。これは、犬が夢を見て寝言を言っていると考えられています。
犬の一日の平均睡眠時間は成犬で12~15時間ほどといわれ、人間と比べて長めです。また小型犬や中型犬と比較すると、大型犬の方が長く睡眠時間をとる傾向があります。科学的に証明することは難しいですが、犬にも人間と同じようにレム睡眠とノンレム睡眠があり、多くの時間を占めるレム睡眠中(脳は起きている状態)に夢を見ている可能性が高いといわれています。
人間の場合は、MRI(磁気共鳴画像)で脳の活性を見ることで夢を見ている状態を調べられます。しかし、犬の場合は全身麻酔をかけてMRIを使用するため判別できません。ましてや犬が夢を見たことを言葉にして伝えられないため、厳密にいうと「犬が夢を見ること」は証明されていないのです。
寝言を含め、犬が眠っている間に見せる行動には、以下のようなものが挙げられます。
こうした睡眠中の行動についても、レム睡眠時の夢の影響である可能性が高く、眠りながらその日の記憶を頭の中で整理していると考えられます。したがって、走り回って疲れたり、ほかの犬と出会ったりするなど刺激が多い日には、こうした行動が現れやすい傾向にあります。愛犬がドッグランで走り回った日に足をバタバタさせていたら、眠りながら、走り回って楽しかった今日を振り返っているのかもしれません。
では、犬が寝言やその他の行動をしている時、飼い主さんはどうすべきなのでしょうか。状況別にその対処法を紹介します。
就寝中の寝言や、前述したような動作が見られる程度であれば、「起こさない」のが一番です。これらの行動はその日の出来事を頭の中で整理したり、脳の疲れを回復したりするためのものであり、犬にとって特段異常なことではないからです。睡眠は体力回復に必要な時間とされており、愛犬のストレス発散にもなりますので、起こさずにそっとしておいてあげましょう。
しかし、小刻みに体が震えている場合は、部屋が寒い可能性もあるため、室温を調整してあげるとよいでしょう。ただし、愛犬が発熱している恐れもあります。また、寒さによる異常ではなく、小刻みに震えを反復している場合は、痙攣発作も考えられます。震えが見られた場合は原因が何なのかを注視し、必要であれば迷わず病院を受診しましょう。
痛そうに鳴く、苦しそう・つらそうな声を出す、痙攣に近い震えがあるなど、明らかに不自然な動きが見られるときは要注意です。その場で動画を撮影しておいて、迷わず病院を受診するようにしましょう。その際、発生日時や回数などをメモしておくと獣医師に説明するときに役立ちます。
特に、動きが激しすぎたり、以前より動きの激しさが増してきたケース、さらに行動が長時間に及んだり、1日に何度も繰り返したりする場合には、脳の病気が疑われます。寝言のようでも苦しそうな声を出している場合は呼吸器系の病気も考えられます。
睡眠中に聞こえてくるのが寝言ではなく、グフグフやブーブーなど「いびき」の場合は注意が必要です。のど、鼻、気管などの呼吸器系の部位に問題を抱えている可能性があります。人間であってもいびきは専門の診療科が設けられるほど重要な問題であるため、早めに対処しておきたい症状です。
まずは、愛犬の様子から寝言か、いびきかを判断しなければなりません。寝ている愛犬の鳴き声の長さやトーンに変化があったり、体を動かしたりする場合は基本的に寝言だと捉えてよいでしょう。一方、呼吸に合わせて一定の間隔で口や鼻から聞こえてくる雑音がいびきです。
犬種によってはいびきをかきやすい犬もおり、代表的なものはブルドッグやパグなどの短頭種です。鼻呼吸がうまくできず口呼吸になり、いびきをかきやすい傾向にあります。よっていびきをかいている犬が短頭種ではない場合や、短頭種であってもいびきの様子がいつもと異なる場合は注意が必要です。
そのほか肥満気味である、または喉や気管、鼻などの呼吸器にトラブルを抱えている犬も、うるさく感じるほどの大きないびきをかくことがあります。
いびきに注意が必要な理由は、いびきの裏に「軟口蓋過長症(なんこうがいかちょうしょう)」や「気管虚脱」などの病気が隠れている可能性があるためです。
軟口蓋過長症は軟口蓋と呼ばれる、のどの手前にある上あごの部分が垂れ下がってしまい、のどを塞いでしまう病気です。重症化すると呼吸困難やチアノーゼにつながることもあるので注意が必要です。
気管虚脱について詳しくは「犬の気管虚脱とは?症状や予防方法について解説」をご覧ください。
最近では、犬の「睡眠時無呼吸症候群」も認められています。睡眠時無呼吸症候群は短い時間でも呼吸が停止することにより、心臓や脳、血管に負担をかけることにつながります。愛犬が急にいびきをかき始めた、さらに苦しそうにいびきをかいている場合は、放っておいて重症化する前に早めに受診した方がよいでしょう。
犬が睡眠中に寝言を言ったり、足を動かしたりすることには特段問題はないため、質の高い睡眠が取れるように静かに見守りましょう。日中の散歩などの適度な運動やバランスの良い食生活も犬の睡眠の質を高めます。ただし、愛犬が発しているのが寝言なのかいびきなのか判断に悩む、または不自然な行動が見られるという場合には、動画を撮影して獣医師に異常がないか判別してもらってください。
愛犬の寝姿は大変可愛らしいものです。飼い主さんは愛でると同時に、いつもと違う様子はないかどうかも意識してチェックするようにしましょう。
文・監修:PECO
※このコンテンツは、2021年10月の情報をもとに作成しております。最新の情報とは異なる場合がございますのでご了承ください。