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Hondaが新型NSX-Rのプロトタイプを出品したのは昨年の東京モーターショーでのことだった。Hondaのブースで仲間数名と取材していた時のこと。どこかの国のジャーナリストが歩み寄ってきたかと思うと、「ワオ、これでサーキットを走ってみたいと思わないか」と言った。イエス!そりゃあ走ってみたいし、走ればきっと楽しいに決まっていると、そのとき私は答えた。
そしてその数ヶ月後…
なんと私とポール・フレール(ル・マン24時間で優勝した偉大なレーサーであり、世界でもっとも尊敬されている自動車ジャーナリストでもある、あのポール・フレールのこと)の2人は、ツインリンクもてぎのロード・コースで、まさに東京モーターショーに飾ってあった新型NSX-Rのプロトタイプをテストドライブするチャンスに恵まれたのだ。それもコース上には新型NSX-Rのほかに、初代NSX-R(1992年)、現行のスタンダードモデルのNSX、そしてタイプS(1997年)が比較のために用意されているという、至れり尽くせりのセッティングであった。
これはたっぷり楽しめるぞと、知らず知らずのうちに頬も緩む。新型NSX-Rは、昨年のマイナーチェンジを受け継ぐかたちで、固定式ヘッドライトとフロントに17インチ・ホイールを採用。さらなる軽量化と空力の向上を実現するため、ボンネットとリアスポイラーをカーボンファイバー製にしている。サスペンションもNSX-Rらしく固めにセッティングされていた。ホワイト・ボディにマッチした軽合金ホワイトホイールには専用開発タイヤのポテンザRE070が装着されていて、NSX-Rのアグレッシブなスタイリングを一層強調している。満を持して乗り込み、カーボン製フルバケットシートに身を沈める。インパネの計器類もステアリングもギアレバーもペダルもスポーツ・ドライビングが楽しめるよう、完璧に配置されている。
ピットを出て走り始めた途端に、NSX-Rの少し固めだが俊敏な好ましい動きを体感する。シフトチェンジもストロークが短く、きびきびして小気味良い。ステアリングは相変わらず正確でレスポンスが良い。ブレーキの効きも素晴らしい。コーナリングの限界が格段に上がった新型NSX-Rは、コーナーの多いもてぎのロード・コースをスムーズに駆け抜ける。アンダーステアも大幅に軽減されていて実にコントロールしやすいクルマに仕上がっている。ノーマルのNSXにも乗ってみたが、このNSX-Rに乗った後ではセダンのようにおだやかな感じがした。むろんそれは事実ではない。スタンダードモデルであってもNSXの加速やハンドリングは常に911のそれと比較対照される高い次元にあるからだ。どれに乗ってもNSXは楽しいが、NSX-Rはすべてにおいて一枚上手だと断言できる。非日常のパーソナルカーとして持つなら文句なく新型NSX-Rをお薦めする。 |