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Rへの期待
   
  2002年2月、ツインリンクもてぎにおいて、始めてNSX-Rプロトタイプに乗る。
路面はあいにくのウェットであったが、
すぐにこのクルマの恐ろしいほどのコーナリング性能を認識した。
市販スポーツカーの一線を超えた空力特性やタイヤにこだわった結果、
強烈な横Gに襲われる「マシン」に仕上がっていたのだ。
さらに一ヶ月ののちNSXの開発チームは、
国内サーキットでのチューニングを経て最後の仕上げに取りかかる。
場所は、勿論ドイツのニュルブルクリンク。
もてぎで味わった感触がまだ消えないまま、私も現地に向かう事となった。

「もてぎでテストした時よりも、さらに走り込んで
セッティングを煮詰めました。高速域の安心感とタイトコーナーで
小気味よく回る気持ちの良さをもっと高い次元で両立させました」
と話すのは車体開発担当の塚本さんだ。
塚本さんはNSXの産みの親である上原さんの愛弟子で、
タイプRにかける志は上原さんにも負けていないという熱い人物。
そんな塚本さんの説明からは、
仕上がりの順調さをうかがうことができ、いやがおうにも期待が高まる。
はたして、国内サーキットを卒業したNSX-Rは、
いったいどんな走りを見せるのだろうか。
「赤バッジ」のNSX-Rがニュルブルクリンクに登場するのは久しぶりだ。
このバッジをつけたからには中途半端は許されない。
私はコクピットに身を沈めながら、
「心が洗われる気がする」と内心で思った。

ニュルブルクリンクでは些細なミスも大惨事につながる。
コーナリングが速くなったNSX-Rは、
いままで以上の速度でコーナーに飛び込むことになる。
パドックをスタートすると、
すぐに下り坂のコーナーが待ち受けている。
クロスギアのつながりは鋭く、どんどん車速が高まっていく。
まだタイヤが冷えており、
ハイスピードコーナーは、息を呑むほどの緊張感が張りつめる。
これがニュルだ。
しかし新しいNSX-Rの走りを早く知りたいという気持ちが勝り、
さらにアクセルペダルを踏みこんだ。
   
新しく採用されたブリヂストンのRE070は強烈な剛性感をもつ。
ステアリングホイールに伝わってくるタイヤのグリップ感を確認すると、
私はペースをさらに上げる。
パワーアシストされないステアリングは、
路面からダイレクトで確かな手応えを伝えてくる。
空力の効果か、ステアリングの重さはたっぷりと味わえる。
かなりのしっかり感。
熱い走りのマシンを操っているという深い感動が
このステアリングからびしびしと伝わってくる。
腕っぷしのヤワなドライバーでは、手に負えないかも知れない。
ますますスパルタンに、体育会系のスポーツカーに進化している。
ポルシェやフェラーリのようにラグジュアリーな方向への進化ではない。
二代目NSX-Rは、かなりレーシーな乗り味となっていたのだ。
この特性は現代のスポーツカーの中でも特異な存在。
だから二代目はとても存在感があるし、
ダイナミクスのインディビデュアリティ(差別化)を強く感じる事ができる。
乗り味は個性的であるが、実際の運動性能はお行儀が良い。
ハイスピードコーナーのコントロール性も良い。
おそらく空力特性が有効に効いているのだろう。
多少無理をしても急激にリアがスライドすることはなく、
初代NSX-Rよりも安定性は増している。
それでいて、正確なステアリング特性を持ち、
アンダーステアをほとんど感じない。
ニュル名物のバンクがついたカルーセルコーナーは、
路面がひどく荒れ、その振動で脳味噌が揺すられる思いをする。
しかし、ボディの剛性感がしっかりしているので、
挙動はすこぶる安定している。
   
  深い森の中のコーナーを抜けるといきなり景色が開ける。
長い直線の彼方に、ニュルブルク城が見てくると、もうじきゴールだ。
最後の上りの2kmにおよぶストレートを駆け抜けながら、
私は新しいNSX-Rが初代より大きく進化し、
サーキットをもっと速く、もっと楽しく走れるマシンになった事を
鼓動の高鳴りとともに実感していた。
   
  ■プロフィール:清水和夫
東京出身。武蔵工業大学電子通信工学課卒業。海外レ−スにも積極的に参戦し、豊富なレース経験を持つ現役のレースドライバー。1982年よりモ−タ−ジャ−ナリストとして執筆活動を開始。運動性能を科学的に分析する論評は支持者が多い。自動車専門誌「NAVI」でクルマの安全性を客観的にテストする連載は人気が高い。日本カ−・オブ・ザ・イヤ−の選考委員。レ−ス活動とともに安全運転のインストラクタ−も務める。NHKクローズアップ現代では準レギュラーとして自動車安全問題で出演。主な著書は「クルマ安全学のすすめ」「燃料電池となにか」(NHK出版)
       
 

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