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それはNSX-Rの動力性能がポルシェ993と同等の凄いものであったという理由からではなく、NSX-Rのスポーティなキャラクターを愛したからである。その類稀なる機敏さ、素晴らしいギアボックス、そして何と言ってもあの美しいエンジン音を愛したのだ。 その後1999年に鈴鹿のNSX fiestaに招待された時に、よりスポーティなタイプSに乗る機会を得た。スパ・フランコルシャンの次に好きな鈴鹿と、タイプSをともに楽しんだことを思い出す。また、NSX fiestaは私に新鮮な驚きをもたらしてくれた。 鈴鹿サーキットはNSXオーナーたちの熱気で溢れ、100台以上ものNSXが集まってきていたように思う。それらすべてのNSXが万全のコンディションにあったのもNSXの優秀さを物語っていた。ポルシェ911がヨーロッパでそうであるように、NSXは完全にカルト・カーになったと感じた。さらには、このことひとつをとってみてもHondaのエンジニアには、NSXをさらに進化させるべく開発を続ける大きなモーティベーションになるのではないかとも感じた。 その思い通り、NSXはさらなる進化を遂げた。空力特性を極限まで高めた新しいフロント・エンドなどの採用。そして、新型NSX-R開発である。 私はつい最近ツインリンクもてぎのロード・コースで、この新型タイプRのプロトタイプをドライブする機会を与えられた。ツインリンクもてぎには一度も来たことがなかったので、私は数日前からその日を心待ちにしていた。 サーキットで私を迎えてくれたのは「NSXの父」(S2000の父でもある)であり、友人でもある上原 繁氏であった。 |
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コース上には新型NSX-RのプロトタイプのほかにタイプSと初代NSX-Rなどが比較用に用意されていた。私は新型NSX-Rのポテンシャルを最大に引き出すべく、最初はタイプSに乗り数ラップし、今回のテストに使われたショートカット・コースをじっくりと研究した。続いて新型NSX-Rにクルマをスイッチして乗り込み、カーボン製フルバケットシート、ステアリングコラムを調整した。正面に据えられた大きなタコメーターと、ヒール・アンド・トウを行うのに理想的なペダルの配置がうれしい。左手を左に数センチ移動させると、短いギア・レバーのチタン製ボールの上に自然なかたちで落ち着く。 数ラップこなしたあと、3・4・5速のみを使えばいいことがわかった。それも、5速はピット前の正面ストレートのみでの使用である。正面ストレートの先は下っていて90度の右カーブへと続いている。ストレート・エンドでスピードメーターは200km/hを指していて、コーナーの手前でめいっぱいブレーキを踏んで、ギアを3速に落とす。そんなときも“ドライブ・バイ・ワイア”による優れたスロットルレスポンスのおかげで、シフトダウンがピタリと決まる。ギアボックスは新型NSX-Rの売りモノのひとつだ。完璧にマッチしたレシオもさることながら、短いギア・レバーは、扱いやすいクラッチ・ペダルと相俟って、非常に素早いシフト・チェンジを可能にしてくれる。 今回走ったツインリンクもてぎのコースには3ヶ所ほどハード・ブレーキングが要求されるポイントがあってブレーキにとってはタフなコースだったが、全開で数周したあとでも、まったくフェードしなかった。 初代NSX-R同様、新型にもパワーステアリングは付いていない。当然低速域でのとりまわしは一苦労だが、一旦走り出せば素晴らしいのひと言につきる。サイドフォースの増加に応じて、ステアリング保舵力がリニアに高まっていく。リミテッドスリップデフはコーナーの立ち上がりで思い切り加速したいときに威力を発揮する。ただ、ドライな路面でテールを振り出すには、意図的にきっかけを与えてやる必要がある。穏やかなアンダーステアがこのクルマの基本的な特性だが、スロットルを戻すと、それがほんのわずかであっても、即座にアンダーは消える。上原氏によると、新しいセッティングによってラップ・タイムは縮まったと教えられた。 爽やかな天候に恵まれたツインリンクもてぎでの新型を含めたNSX-Rとの再会は、時間の経つのが残念なほど楽しいひと時だった。 12年目の進化を全身で確かめて、NSXが依然世界のトップレベルにあるスポーツカーであることを再確認した。是非これからも進化を遂げ、他の手本であり続けてほしいと願ってやまない。 |
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NSX Press vol.28 2002年5月発行 |