Through the 20th Century's Special 1/20世紀のスポーツカー、ある苦悩と革新
(イラストのボディカラーは、すべてイメージです。実車に基づくものではありません)
機械としての時計は1350年頃欧州で発明された。その後、1525年頃に時計の動力源がそれまでの錘りの重力を利用する形式からゼンマイとなり、大幅にコンパクト化された。
精度が格段に向上したのは、大航海時代。経度を正確に測定し、航路を正しく把握するためには、正確な時計が欠かせなかったからだ。
1598年にスペイン国王が賞金を出し、正確な時計のアイディアを募るが成就せず、1714年に英国のアン女王が再び2万ポンドまでの賞金を出し、1700年半ば前後にヨークシャーの大工ジョン・ハリソンが温度補正を行う格子式振り子などを用いそれを成し遂げた。それまで日に何秒ものレベルだった誤差が、月に数秒という精度になった。時計が誕生してから約400年も経ってからのことだ。その後、腕時計がおよそ1790年、電気時計が1840年、防水腕時計が1926年、クオーツが1968年に誕生。
デジタル時計の誕生は、何と時計がこの世に生まれてから約600年も経った1972年のことだった。時計は、誕生してから時間をかけて革新を繰り返しながら、進化を続けた機械である。
一方、時計に遅れること約500年の1885年頃に誕生した自動車はどうだろうか。ほぼすべての技術要素が、誕生まもない黎明期に集中して生み出されているのである。電気自動車も4WDもガソリン自動車の誕生とほぼ時を同じくして開発されていたし、オートマチックトランスミッションの原型は1900年、FFは1905年、スーパーチャージャーは1907年、DOHCと4バルブが1912年、ワイパーは1916年、ダブルウィッシュボーンは1923年、気筒内直接噴射エンジン、いわゆる直噴は1939年、衝撃吸収ボディが1951年…といった具合である。
そうした自動車の進化のなかでスポーツカーは、レースに出場してメーカーの威信を高める勝利を重ねるべく高性能化のための苦心と革新を重ねていった。
今回の特集は、20世紀までのスポーツカー史を振り返り、その中から高性能化のための苦心と革新に取り組んだ、ユニークかつ意外性のあるモデルをご紹介したい。
しかし歴史を眺めてみると、自動車誕生約100年目に登場したNSXが従来のカテゴリーにない、新しい考え方のスポーツカーであることがあらためてわかってくる。
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NSX Press vol.24 1999年10月発行