永長氏曰く。「パワーは限界と思われるレベルまで絞
り出しました。しかし、耐久性の点はこれからという
のが本音です。クルマでいえば、まだ他のライバルに
比べて慣らし運転のレベルの距離さえ走っていないの
ですから…」
なるほど無限はスプリントレースのエンジンは数多く
手がけているが、耐久的な距離を走るエンジンのデベ
ロップは数少ない。耐久性はこれから…というのは正
直なところだろう。
―――「レースはそう甘いものではないですよ」。こ
れも永長氏の言葉だ。
童夢の手によるF1テクノロジーを盛り込んだシャシー
開発。無限の手による、これもまたF1を知り尽くした
技術者によるエンジン開発。これらを総合し、最後に
NSX GTマシンはいかなる性能をめざしたかを総括し
たい。
―――前提は、NSXのオリジナルのコンセプト尊重。
これは必然的にパワー面で不利という立場を生む。そ
こで求めたのは、鋭き運動性能である。そのために
NSXの特質に彼らは着目し、それを伸ばす方向で設計
を開始した。
その特質とは―――軽量。ミッドシップ。空力の良さ
。軽量は、剛性アップのための補強の面で有利。ミッ
ドシップは、マスの集中と低重心化に有利。空力の良
さはストレートおよびコーナリングスピードの点で有
利。そうした確固とした方針のもと、彼らは徹底的に
腕を振るった。そしてご覧のマシンがつくられたので
ある。
想定した目標は、計画スタートの時点で、富士スピー
ドウェイのラップタイムが1分30秒。最高時速は
285km/h。
しかしこの目標は、12月半ばの風洞試験で達成。さら
に約10%アップの目標が設定され、それもすでに達
成されたという。まだシーズン半ばであるが、レース
においてターボ勢にすでに肉迫している。
NSXの思想が活かされ、日本最高峰のレーシングコン
ストラクターがつくり上げたNSX GTマシンがいかな
る闘いを演じるか。ともに熱い視線を送ろうではない
か。 |
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エンジンチューンのコンセプトにヒューマンフィッティングの思想があるのがうれしい。NSXが自然吸気にこだわるのはドライバーの感覚に忠実なトルクを得ることを重視しているからだ。コントローラビリティ追求のため、NSX
GTマシンにもその思想が受け継がれた。

ドライサンプ化されたエンジンは、非常にコンパクトにまとまっている。3.5リットルに拡大されたこのタイプSエンジンは、およそ8,000回転まで回す。リストリクターによって空気が入ってこないため、これ以上回しても意味がないからだ。しかしサウンドは抜群。やはりホンダである。

松本恵二監督、黒澤琢弥/山本勝巳ドライバーの無限・童夢チーム。そして、高橋国光監督兼ドライバーと飯田章ドライバーを由良拓也のMOON
CRAFTがサポートするチーム国光。この2台体制で新NSXはJGTCを闘う。
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