表紙 NSX type S with BBS/田辺憲一

 富山にある日本BBSの工場「ワシマイヤー」を訪ねたのは、3年ほど前のことである。

ドイツのベー・ベー・エスのブランドで知られる、強靭で高精度なその一連の鍛造アルミホイールが、実は日本国内で造られているという事実に、ある種の驚きを覚えたこともいまは懐かしい。一般にはほとんど知られていないワシマイヤーという名のその工場は、しかし見る者を圧倒せずにはおかない。BBSホイールの代名詞として伝えられるアルミの鍛造技術とは、あなたが想像するよりもはるかに大掛かりなものであり、同時にまた工芸品的なクラフトマンシップに支えられてはじめて完成するものなのである。

世に出回るアルミホイールの、おそらく95パーセント以上は鋳造品である。鋳造(イモノ)とは、熱してドロドロに溶かしたアルミを型に流し込んで冷やし、固めることで一度に成形するもので、工程が少なく技術的に容易なため製造するメーカーも多い。これに対し鍛造は、はるかに高度な製造技術が必要となる。アルミホイールの1割に満たない鍛造ホイール。その9割以上をBBS、すなわちワシマイヤーで製造していることからも、鍛造技術がいかに高度なものであるかが伺い知れよう。

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