かつて、スポーツカーの本場たるヨーロッパに調査に赴いた上原氏は、彼の地で聞いた、「ひとつのブランドを根付かせるためには、イメージを確立するためには30年は必要」といったある人の意見が強く印象に残っているという。確かに、その草創から一貫してレーシングカーを第一義とし、そこから派生したスポーツカーを生業としてきたフェラーリは、今年ちょうど創立50周年を迎える。一方の雄のポルシェは、既に33年以上にわたって、恐ろしいまでの意地と努力で時には「WRONG
END」とさえ呼ばれたリアエンジンの911を進化させ続けてきている。それに比べればNSXは生まれてまだ7年、開発のスタートから数えてもまだ10年あまりにすぎない。だが、その歳月の差は開発と熟成に関わる人々の熱意で埋めることもできる。数年後に新たな世紀を迎えたとき、「時代とともに進化していく」NSXが、今度はどのように生まれ変わっているのだろう。もしかすると、上原氏たちは既にその卵の孵化を見守っているところかも知れない。

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