クルマの性能を知り、安全に的確にそれを操る技術を身につける。そして操る楽しさを知る…。これは、現在行われている「NSXオーナーズ・ミーティング」の目的でもある。自らが体験するモータースポーツという、ライフワークとして新たな楽しみが生まれたとの声も、多くのオーナーの方々から聞かれる。
近い将来、高速道路網はますます拡充し、首都と地方がより緊密に結ばれ、パーソナルトランスポーターとしてのクルマの存在は一層重要になるだろう。同時に、安全への働きかけも、今以上に重視する必要がある。また、クルマ自体も、より高度に、複雑化していくだろう。
そうした次なる時代に向け、ホンダが、人とクルマの関係に「安全」と「楽しさ」を提供すべく、誰もが参加できる新しいモビリティ文化の創造を目指して計画したのが、総合モータースポーツ&レクリエーション施設「ツインリンクもてぎ」である。
当初考えられていたのは、関東近辺の新しいロードコースの建設だったという。しかし国内には、既に8つの国際基準コースが存在している。その上で新たに9番目のコースをつくることが、果たして重要な意味を持つだろうか。新しい時代への動きの中で、将来を見据えたものにしていく必要があるのではないか…とホンダで方向性が模索された。
そのためには、安全への対策として、スクーリングができること、さらに、これまでモータースポーツに積極的に取り組んできたホンダが考える、日本のモータースポーツのさらなる発展が可能であること。F‐1や耐久レースにはすでに鈴鹿をはじめとするフィールドがある。そこで、日本にはまだ馴染みの薄い、アメリカ的モータースポーツが着目された。500馬力のモンスターマシンによる超ハイスピードスプリントレース、インディシリーズやNASCARレースは、アメリカで絶大な人気を誇っている。これを日本でも開催できたら…と考えた時、必要なのは国際基準のオーバルコースだった。そこで急遽、もてぎのロードコース計画にオーバルコースを加え、世界初のツインリンク建設が実現したのだ。
さらに、アメリカのモータースポーツから参考にしたもう一点は、週末参加型モータースポーツだ。アメリカでは、大人から子供まで、ビギナーからセミ・プロフェッショナルまでが楽しめるモータースポーツイベントが積極的に行われている。もてぎの敷地内に、オーバル、ロードコースに加え、1kmのショートコース、600mのショートオーバル、さらにダートトライアル、トレッキングコースと、様々な用途に利用できるコースを建設。多くの方に、クルマを通じて様々な感動が得られるよう配慮された。NSXオーナーにも、ミーティングや走行会の場として大いにご活用いただけることとなるだろう。また、これらの充実した施設を利用して、基本的なドライビングレッスンに始まり、スポーツ・ドライバーによるテクニカルレッスンなど、安全運転啓蒙活動も多角的に実施していくことが計画されている。
これは、1960年代より、他に先駆け、安全意識の向上、そして文化としてモータースポーツの発展を担ってきたホンダにとって、欠かすことのできない21世紀へのチャレンジなのだ。
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