私の所有するNSXはすでに6年目を迎え、2度の車検を終えたところだが、クルマが老化した感じがなくいまだに新車同様の元気さを保っている。世の中には数多くのクルマが存在するが、本当に長くつき合えるクルマは数少ない。しかもモデルデザインが長く、これまでにいくつかの追加モデルは登場したが、初期型だからといって悲観することはない。むしろ歓迎すべき進化であり、スポーツカー愛好者の所有欲と利用欲を見事に満足させているのである。
さて、NSXオーナーたちにとってもこの6年は重要な意味を持つ。オーナーズ・ミーティングやアカデミーを通じて、NSXとのつき合い方に関して貴重な経験をしたはずだ。インストラクターとして私は、単にスキルの向上だけを意識していたわけではない。速く走ることはつまりリスクも高くなり、結果的にオーナーにとって良い結果は生まれない。大切なことは、広い視野に立った見識と技量を持ったジェントルマンなスポーツカーオーナーになって欲しいと思っていた。
かくも素晴らしいオーナーたちに恵まれたNSXは、今後も確実に成長をし続けることだろう。生みの親がホンダならば、育ての親はオーナーである皆さん自身なのである。 |
2輪の世界の完全制覇、そしてF-1でも世界のトップに立ったという輝かしい経歴を持ち、私たちに多くの夢を与えてくれたホンダが、今度は一般の人たちにも、所有しドライブすることのできるスポーツカーをもたらしてくれた。これは大変素晴らしいことでした。
一昨年、走行会でNSXをドライブし、これはルマンで是非とも走りたいクルマだ、と思った。そして完全なる日本チームでのルマン出場、という私たちの夢を果たしてくれることになったNSX。
特に昨年は、ルマンでのクラス優勝に加え十勝、鈴鹿でも優勝と、私にとってもこれ以上はないというくらい素晴らしい一年でした。やはり世界の舞台に自国のクルマで出場するということは、誇らしさと、一層の感慨がありました。これは携わった大勢の人の力によって成し遂げられた結果であり、その方々や応援してくださった皆さんの期待にそえることができ、感無量でした。
昨年はオーナーの方々と接する機会も多くあり、皆さんが誇りを持ってNSXに乗っているのを身近に感じました。私たちもレースで頑張っていくことで、皆さんと一緒に夢を温めていきたいと思っています。そして、NSXがもっと世界中のレースで世界中の人たちにドライブされる日がくることを期待しています。 |
恥ずかしながら日本一走っていない、そしていつもキタナイNSXは僕のだろうナ、と思いつつ早5年が過ぎてしまった。とにかく走る時間がなかった。グランプリ・サーキットとエアポートをレンタカーで往復するシーズンの日々。ヨーロッパのどこかにNSXを置いておけたら、ひと月で5,000kmは走り込めるのに…。国内・外のレースを追いかけて年間20数戦を地球的移動でカバーするには、国内も富士を除いてNSXは使えないのが悲しい実状。『僕も買ったんだぜ』と故アイルトン・セナとNSX談義になったことがある。『いいクルマだよね。僕はポルトガルの別荘に置いてるんだ』とセナ。『へーいいね。でも、僕にはちょっとパワーが足りなく感じる…』と僕が冗談で言ったら、真面目なアイルトンは仰天。『き、君は普段一体どんな運転をしてるんだい!?』。オーナーの皆さん、セナだって普段は普通のペース。僕も滅多に乗れないからこそ、乗れるチャンスで走らせているが、公道で限界を極める気は全然ない。限界はサーキットだけでいい。そんなNSXには何ら不満はなく、かえっていつも新鮮な気分で乗れる。最新スペックの進化の程を聞くにつけ、ちょっぴりジェラシーも抱くが、愛するマシンのさらなる進化は’90年型を所有するオーナーにとっても誇りである。
常に最新進化を目指す志が、そのブランドの血統を磨き上げるのだから。 |
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NSX Press vol.17は1996年3月発行です。
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