「とにかくNSXの速さを証明したかった」。昨年に続いてNSXによるルマン参戦にあたった開発陣がそう語ったのは、それなりの事情があってのことだった。70年を越す歴史を誇る伝統の一戦に初出場した'94年、NSXは数々の困難に苦しみながらも全車完走の偉業をなし遂げた。したがって今年は、速さを極め、さらなる上位への到達という高い目標を設定したのだ。それこそは、常に進化し続けることが求められる、スポーツカーとしての宿命だったといえよう。
'96年ルマン24時間レースにホンダNSXで挑戦する栃木研究所プロジェクト・チームは、ベース車の持ち味を活かしつつ、レースカーとしての速さを追求することを開発のテーマに据えた。このため、出場クラスによる広範囲な改造を許されるGT1を選びながら、「NSXのスピリットを見失わない」ことを念頭に置いて、基本構成が検討された。
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