今年、総合優勝の可能性がみえるマシンとしてGT1クラス、ターボエンジンと新たなチャレンジを行ったホンダ。研究所のサポートプロジェクトチームの代表としてこの挑戦に奔走した橋本だったが、無念の表情を一瞬たりとも表に出すことはなかった。 |
クラッシュによってダメージを受けた46番のシャーシを直すTCPのメカニック。気が遠くなるほど叩き込みを加えた上、最後には、ピット裏で溶接作業まで行うこととなった。誰もがリタイヤとあきらめていた。しかし、不屈の作業により午前3時、このNSXは復活するのである。 |
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決勝までの4日間、次々と起こる不測のトラブルにほとんど寝る暇がなかったGT1のメカニック。しかし、疲れた表情を見せず、ときに笑みさえ浮かべながら仕事を続ける彼らの姿に、感動を覚えずにはぢられなかった。46番が走り続ける日曜日の朝、彼はどんな夢を見ているのだろうか。 |
火曜日、ジャコバン広場でのNSX。ポスターの顔としてルマンの街を飾ったこのマシンに多くの人が注目していた。そして、GT2優勝という栄光とともに、NSXはルマンの人々の心に刻まれることになった。スポーツカーの伝統を育みはじめたNSXにとって、これは大きな一歩である。 |
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鬼門といわれ、今回のルマンでも多くのマシンをのみこんだポルシェコーナーで後続車をパスさせようとしたころ、勢い余ってコースをはずしてしまったフィリップ・ファーブル。残念。このクラッシュがなければ…悔やまれる46番のアクシデントである。 |
夜が明けようとする頃、着実にラップを重ねるGT1NSX。上位を臨むべくもないが、やはり走っていることが心の支えになる。勝つ運命を背負った者以外、負けるために闘い続けるのだという勝負の明確な現実を目の当たりにした。しかし、闘える限り引いてはならないのも勝負である。 |
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不運のクラッシュがなければ上位入賞も夢ではなかったかもしれない。24時間終了寸前の残り2ラップ程度となったとき、チェッカーを受けるために痛んだギアをどうにかかみ合わせて出走準備を整えた46番の、無念のステアリングを握る岡田秀樹。 |
47番は、予選、決勝を通じてこのようにリアを開いている時間が長かった。650馬力の高出力を発揮できるターボエンジンはギアボックストラブルの痛みに顔をしかめながら、咆哮を上げられない悔しさに地団駄を踏み続けているようだった。 |
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エキゾーストのトラブル以外、エンジンも、サスペンションもギアボックスもまったく危なげなかったGT2NSX。しかし、森脇監督は一度たりともピットを離れることなくじっと戦況を見守っていた。疲れを見せないどころか「ピットはきれいにするのが基本」と、掃除まではじめてしまうのだ。 |
クラス優勝を成し遂げたチーム国光のNSX。最終ピットインでは、ミッションオイルの油温アラームが点灯していた。問題なしと判断されたが、念のためミッションのクーリングシステムをチェックしてコースに復帰。しつこく追撃を続けてきたキャラウェイコルベットを退けることができた。 |
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世界の舞台で絵になる高橋国光。土屋と飯田がピットインするときは常に駆け寄り、ベルトをはずして労をねぎらうとともにNSXの状態、コースの状態に耳を傾け、支持を与えていた。このルマンでは、ドライバーの結束力も走り続けるための大きなパワーとなるのだろうか。 |
'93年のADAC GTカップ、昨年のルマンと、いまやNSXモータースポーツの顔といえるアーミン・ハーネ。どんなときも冷静だとチームからの信頼は厚い。リタイアが決まったあとも、彼は長くNSXの闘いを見守り続けた。そして“アゲイン”と言い、サルテサーキットをあとにした。
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