田辺憲一 田辺憲一 1946年生まれ。'70年より(株)二玄社に。WRCリポートの他、主に外国車のテストを手掛け、初めて実測300km/hを超えたフェラーリF40の性能計測も担当する。'80年代前半は富士フレッシュマンをはじめ様々なレース参戦も。'84年からはテレビ朝日系の「カーグラフィックTV」を主宰、現在に至る。


田辺「四方さんはこれまでずいぶん色々なスポーツカーに乗られていますが、もし、NSXに乗るとしたら、どういう風に乗りたいですか」。

四方「僕はまだ正直言って、NSXというクルマが見えてきていないんですよ。なぜだろうと考えていたんだけれど、こういうことかも知れない。つまり、自分がどういう風に着こなすか、が見えなかったんですね。高性能で、快適で、新しいスポーツカーとして素晴らしいことは知っていますが・・・。でも、今回オープントップが出てくれたことで、何か見えてきたような気がするなあ。オープントップのオートマチックを選んで、フル装備にして、シートの色も自分で選んで、とびきりのラグジュアリースポーツとして、オープンエアモータリングを楽しむという風に・・・。そうシチュエーションを考えると、NSXの先進性能が僕の中で生きてくるんです。スペシャル・ラグジュアリーといっても、このクルマそのものは速いんだぜ、余分なものを取り払ってチューニングをすればルマンでも活躍できるんだ、というオーラのようなものがスポーツカーには絶対に必要ですよね。NSXはルマンに出てそれをやってくれていますから」。

田辺「そうですね。NSXの今後(レースにおける)には僕達も大いに期待しています。昨年のルマンでもファンの人達に『NSXをこれからスポーツカーとして育てて行くぞ』というホンダの意気込みが伝わったと思うんです。また今年もかなり結果を意識して取り組むようだし・・・」。

四方「だからといってスポーツカーイコール速いクルマで、だからクルマ好き、運転が上手い人が乗るクルマ、と発想を固めてはいけないんです。僕は運転が下手な人でもスポーツカーに乗ってもいいじゃないか、と思うんですよ。スポーツカーには色々な乗りこなし方があるはずなんです。そういう意味で、爽快感を存分に楽しめるオープントップの登場は嬉しいですね。
そういえば、田辺さん、今回オープントップに乗られたんですよね。どうでしたか?自動車雑誌評論家を自称する僕としては、剛性感とか走行性能とかどうだったか、聞かなければいけないな」。

田辺「そうですね、いわゆるハード的な見方をすると、ホンダがやるんだからそれなりのことをしてくれるだろう、オープンということに対してしっかりした技術的な裏付けがあるんだろうと思って試乗に臨みました。話を伺い、実際に乗ってみたらその期待通りでした。これが、屋根をとったボディかと思うぐらいしっかりしているんですよ。
アルミボディ自体がかなり苦労して作ったもので、ホンダ以外のメーカーにはなかなか手が出せないような領域のものだけれども、それで苦労しているからオープントップとして新たに手を加えるべきところもすでに十分見えていたんでしょう。だから、当然の成りゆきとして、重量増を最低限に抑えながら非常にしっかりとしたものに仕上がっています。昔、ポルシェがスピードスターとかタルガなどを作って、そのしっかりした出来が評判になりましたが、そのレベルにいきなり到達している、いや、むしろ超えてしまっていますよ。しかも、本当に目立ないことなんだけれども、このタイプTの開発に伴ってクーペのボディ剛性もきちんとワンランク上がっているわけです。こうしたこだわりが、クルマ好きにとってはたまらないですよね」。

四方「それじゃ、走っていてもミシミシするオープン独特のあの感覚がないわけですね?」


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NSX Press vol.15は1995年3月発行です。