最後に、ここまで磨き上げたタイヤを製造する技術の絞り込みを行なう。製造する成型器ごとにテスト、製造作業員についてもテスト…。作業員を限定し、製造技術までも高め、ついにNSX「専用」のロープロファイルタイヤは完成した。季節は一巡し、秋を迎えていた。

試作コードは、「ZZZZZ」までいった。その数は前後とも130種。すべての組み合わせを考えると、数千という驚異的な数になる。もちろん、一度NGとなったタイヤは、そこで切り捨てられていくが…。しかし、これほどまでに時間と情熱をかけられて誕生したロープロファイルタイヤが他にあるだろうか。それも、ひたすらNSXのための最高性能を求めるべく、すべてが投入されているのである。まさに世界で唯一の贅をつくしたロープロファイルタイヤと言えよう。
しかし、これがスペシャルであると言いたいのではない。費やした時間と情熱はすべて理想を求めるためである。だから、これがNSXのための本物のロープロファイルタイヤであると言いたいのだ。
このロープロファイルは、当然ながらグリップを高める役割を果たし、限界時に発生してくるロールによるトラクションの抜けやタックインを抑え込み、抜群のスタビリティを確保する。サーキットでのタイムアップは言うまでもない。まさに走りを追求したロープロファイル。
NSXの夢が、またひとつ加速された。
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