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ザイケル・チームは長距離耐久レースを得意とし、ホンダ・シビックによる活躍でよく知られている。ホンダとの関係は’89年が続いており、今までに35回のクラス優勝をとげている。’90年以来、スパ・フランコルシャンとニュルブルクリンクの24時間耐久レースのクラス優勝は、3年連続で手中に納めている。主宰するペーター・ザイケル氏自身、もともとレーシング・ドライバーであり、エンジニアは2名、メカニック8名で構成される。もっとも耐久レースでは、外部から23人ものメカニックを集めるらしい。
NSXでレースをやることについて、チームは大いに期待を持っている。NSXは、もともと空力特性や燃費がよくブレーキも素晴らしく効くので、現代のコンペティション・カーとして最高であるとスタッフは語った。そこで、市販のタイプRからの改造とテストを快く引き受け、仕上がりに関してはとても満足しているという。総合的なバランスの良さで、他を圧倒するポテンシャルを与えられたと豪語していた。 そして、このレース活動のメインスポンサーを務めるのは現地法人のドイツ・ホンダである。先ほどのレースレポートのなかで登場した、ホンダR&Dヨーロッパ・ドイッチェランドは、フランクフルト近郊のオッフェンバッハに本拠地を持ち、ドイツ市場での品質管理やエミッションなど将来の動向を調査し、デザイン関連の仕事などを行なっている。 GT-CUPレース関連の日本人スタッフは2名が在独、最も重要なエンジンに関しては高根沢工場と直結している。 現在はパーツを供給し、ザイケル・チームが組み上げているが、今度の新エンジンは、高根沢工場から直送されるらしい。1名のドイツ人スタッフは、主にシャシー関係を見ながらレース現場を担当している。そして、ドライバーはアルミン・ハーネとジョン・ニールセンである。ハーネは、決して雨が嫌いなドライバーではないが、第1戦で苦汁をなめているだけに、今回のザルツでは多少ナイーブになっていたようだ。レース用のNSXマシンのドライブを、ホンダが依頼したのは昨年11月。マシーンのテストを引き受けた段階からレースに至るまで、その素晴らしいポテンシャル、新しいスポーツカーのテイストにとても満足しているとのこと。第3戦を振り返り、ゾルダーはツイスティーなコースであり、やや大柄なNSXにとっては不利と思われたが、サスペンションのセットアップもタイヤの選定もうまくいって、BMWやポルシェとイーブンに戦え、チェッカーは2分の1秒差というハードなものだったが、勝てて満足していると語った。市販のNSXについては、フェラーリと違い、スポーツカーでありながら日常の使い勝手も良く、完成度の高いクルマであると評価していた。
ジョン・ニールセンについてはご承知のとおり、ル・マン24時間レースでジャガーを’90年にGTクラス優勝に導いた。これまでホンダの傑出している点はエンジンにあると思っていたが、NSXと出会ってから、ハンドリング、そしてシャーシを含めた全体のバランスが非常に良いので気に入っているとのことだ。アルミボディは車両重量が軽いだけではなく、重心高を低くしているので高速時の安定性は素晴らしいと語った。
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