 |
NSXは世界初のオール・アルミニウムによるフルモノコック・ボディ、V6DOHCエンジンはVTEC280馬力という、そのままでも十分に速いクルマであるが、レギュレーションにしたがって、当然ながら仕様変更を受けている。重量は最低重量の1300kg、レース仕様はバラストを積む必要があるほどだという。パワー・ウエイト・レシオ4kg/PSを満たすエンジン出力は325PSで、これはアメリカのIMSAで戦っているパーツの流用で簡単に得られる数値だ。すなわちVTECの高速側カムプロフィールを替えて、6000rpmから上の馬力をアップし、リミットは8500rpmまで回す。当然バルブスプリングやクランクシャフトの材質なども変更され、圧縮比はピストンを変えて12:1くらいまで上げているようだ。90mmのボアと78mmのストロークはそのまま。排気量も2977ccとオリジナルに等しい。2個のロホハウゼン(ROCHHAUSEN)社製のレーシング・キャタライザー(触媒)を備え、エミッションもクリアする。マフラーはチタンに材質変更され、騒音も欧州の公道を走れる一般の規制をパスする。そしてタイヤはヨコハマ、ホイールはBBS、ダンパーはBILSTEIN(ビルシュタイン)、スプリングはEIBACH(アイバッハ)、大容量ブレーキキャリバーはbrembo(ブレンボ)、パッドはPAGID(パジド)、シートはRECARO(レカロ)で武装する。
第2戦ベルリンで3位、第3戦ゾルダーで優勝
このNSXを走らせるザイケル(SEIKEL)モータースポーツ・チームは、昨年のレギュレーション検討の段階から参加しており、マシーンの熟成度も高く、初戦から好成績を上げている。
第1戦が天候を理由に中止され、第2戦が事実上の第1戦となる。その戦いは5月9日、ベルリンのAVUS(Automobili Verkehrs-unt Ubungs StraBeの略でベルリン郊外の自動車練習道路)で行なわれ、ドライバーのアルミン・ハーネは大半をトップで独走していたが、雨が降り、水溜まりに足元をすくわれ3位になってしまった。しかしその結果は2万人の観衆“NSXは速い”との印象を植えつけた。
続く5月30日の第3戦はベルギーのゾルダーで行なわれた。市販のタイプR自体が、ドライビングバランスを重視しているスポーツカーであるだけに、その素性の良さがさらに磨かれることにより、コーナーリングで圧倒的な速さを誇るNSXは、期待に違わずアルミン・ハーネ/ホンダNSXの優勝となった。2位はBMW M3GTR(新型M3)、3位はポルシェ・カレラRSR…と、ここまでのチャンピオンシップ・ポイントを集計してみると、右のようになる。ポイントの与え方は1位より10位まで順に20、15、12、10、8、6、4、3、2、1点となり、焦点はハーネとチェコット、ホンダNSXとBMW M3の闘いに絞られる。一騎打ちの様相が濃厚となってきた。当然、微妙なセッティングに熱がこもる。同じパワーウエイトレシオのマシンが、いかにして相手を追いやるかは、コースにマッチしたセッティングと、ドライバーの腕の勝負となったのである。続く第4戦と第5戦は7月11日と8月22日にニュルブルクリンクへと舞台を移し、激戦が展開された。しかし、惜しくも不運に見舞われたハーネは6位と3位を獲得し、チェコットは1位とリタイアとなった。そして、チャンピオンシップ・ボイントは両者共に50ポイントとなり、同点で第6戦のザルツブルクリンクへと、もつれこんだのである。
|