また欧州でホンダの快挙がはじまった
イメージNSXがトップでチェッカーを受けた。我々にそのニュースを知らされたのは、ホンダ本社の広報部に送られてきた、一片のFAX用紙である。新聞の切り抜きがコピーされ、およそ8時間の時差を越えてドイツから送られてきたのそのニュースは、NSX、またはホンダを知る者にとって、いささかの興奮を覚えるものだった。
“ホンダ優勝”。その響きは、マン島TTレースの快挙にはじまり、S600のニュルブルクリンクでの優勝、欧州F2界を驚愕させたホンダエンジン、そしていまは見ることのできない世界のトップフォーミュラで圧倒的な強さを誇るホンダのエンブレム、日本のレースシーンの快挙はホンダにはじまるという心地よい記憶を刺激し、心を浮き立たせた。イメージそうか、またホンダがやったか…という、胸をなで降ろすというか、安心感を与えてくれるニュースだった。それもNSXである、そしてベースはタイプRである。いままで、ピュアスポーツカーとして存在するNSXに求めてやまなかったレース参戦、そして走り勝ち抜くという立回りを見事に演じてくれたのだ。やはり、スポーツカーと名乗るからには、レースで勝って欲しかった。それも、日本ではなく、世界の舞台でだ。

イメージ世界のモータースポーツシーンはいま、ツーリングカーレース復活に動いている。スパ24時間レースはターボ車の不参加を決め、一般にニューツーリングカーとよばれるクルマの台頭を促しているし、日本でも新しいツーリングカーカテゴリーは、大いに人気を博している。エキサイティングなツーリングカー、スポーツカーのレースに、世界中の多くの人の血が騒いでいるのだ。 ドイツADAC GT-CUPは、本年、1993年からはじまったツーリングカーのレースカテゴリーで、主催するのは、日本のJAFに相当する機関、ADACだ。ADACが公認するレースとしては、DTMという高度にチューンされたツーリングカー・レースが有名だが、その無制限とも思える改造範囲の広さに資金がかかりすぎることが懸念されている。M3をひっさげ見事なバトルを演じていたBMWが今年撤退したのも、やはりその辺に理由があるらしい。そこで、スポーツカーも交えたコンペティティブなレースが、もっと安い費用でできないものかと、エントラントを集めて新しいレギュレーションを作り出したのが、このGT-CUPレースなのである。

イメージレギュレーションを簡単に説明すると、まず基本的な考え方として車両重量と馬力の関係、すなわちパワーウエイトレシオがすべてを支配する。だからドアの枚数であるとか、乗車定員、排気量などは問題とならない。その数値が4kg/PSのディビジョン1と、7kg/PSのディビジョン2に分類される。ディビジョン1の主な参加車両は、BMW M3GTR、ポルシェカレラRSR、キャラウェイ・コルベット、フォードエスコートRSコスワース、アウディS2などのエントランスとりーがある。NSXが出場するのはもちろんD1である。このD1クラスは車両重量が1300〜1560kg(但し4WDと過給器付きは1350〜1560kgまで)、D2クラスは1050〜1250kg(同1100〜1250kg)ということになる。そこにはルノー・アルピーヌやオペル・カリブラ、トヨタMR2、ニッサン200SXなどがエントリーする。 レース距離は100km。使用できる燃料はD1が40リッター、D2が20リッター、タイヤは予選も含めて6本まで。D1/D2合わせて約40台が出走する、というあらましだ。



back
NSX Pressの目次へNSX Press Vol.12の目次へ

NSX Press vol.12 1993年8月発行