HRCチーム代表 リビオ・スッポ 現場レポート

2017.03.31 Vol.164 Round 01
HRCチーム代表 リビオ・スッポ 現場レポート

2017シーズンの開幕、タイトル獲得に向け最初の一歩を踏み出す

2年連続でタイトル獲得を目指すRepsol Honda Teamにとって、2017年シーズンの開幕戦は、予想以上に厳しい戦いとなりました。砂漠の国カタール。年間の雨量が50mmから70mmと、ほとんど雨が降らないドーハですが、開幕の1週間ほど前から不安定な天候が続いていました。それはレースウイークを迎えても変わらず、土曜日に行われるはずだった予選は豪雨のため、カタールGPの歴史の中でも、初めてのキャンセルとなりました。

そのため、フリー走行の順位でグリッドが決まり、Repsol Honda Teamの両選手はポジションをばん回するチャンスもなく、マルク・マルケスは3番手、ダニ・ペドロサは7番手から決勝に挑むことになりました。

決勝日も夜に入ってから雲の動きが激しくなり、MotoGPクラスの決勝レース直前に雨が降りました。雨はすぐに上がりましたが、通り雨に濡れた路面が乾くのを待つため、午後9時のスタートは9時45分に延期され、さらにウォームアップを本来の1周から2周に増やし、周回数は22周を20周に減算してスタートが切られました。

フロントローから決勝に挑んだマルケスは、スタートがディレイとなった際、グリッド上でフロントタイヤを予定していたハードからミディアムに変更しました。スタート時間が遅れ、気温も路面温度も下がり始める時間帯に入ったこと、直前の雨で路面コンディションが滑りやすくなっていることが予想され、転倒のリスクを減らすための決断でした。しかし、これが本来の走りを引き出せない原因となり、中盤までは優勝争い、表彰台争いを視野に入れながらもペースを上げられず、終盤では4位をキープする作戦に切り替え、チェッカーを受けました。

7番グリッドから決勝に挑んだペドロサも、フロントにミディアムを選択しましたが、タイヤのフィーリングに苦しみ、我慢の走りが続きました。序盤からペースを上げられず、最終的に5位でフィニッシュしますが、ペドロサにとっては力を出しきれない悔しいレースとなりました。

―Repsol Honda Teamの開幕戦の戦略は、どういうものでしたか?

「今日は変りやすい天候だったため、スタート直前に戦略を立てるのは難しい状況でした。実際にレースはディレイとなり、直前にすべてを決めなければなりませんでした。とにかく、長いシーズンの初戦であり、我々のマシンと相性があまりよくないサーキットだということもあり、マルクもダニも、あまりリスクを負うことなくベストを尽くせるようなプランとしました」

―結果はマルケス選手が4位、ペドロサ選手が5位。表彰台には立てませんでしたが、今大会のよかった点、悪かった点は?

「ポジティブなことは両選手ともに価値あるポイントを獲得したこと。そして、レース全体を通して戦う姿勢がみせられたことですね。ネガティブなことは、我々が使ったフロントタイヤが我々のマシンの特性には合わず柔らかすぎたことです。そのため数周でマルクもダニもブレーキングで苦しみ出しました」

―レース中、ピットウォールから見ていて、どんな気持ちでしたか?

「序盤、マルクがトップグループで戦い、ダニもいいスタートを切ってポジションを上げていったことがうれしかったですね。しかし、2人ともに優勝争いが難しいことは明らかでした。それでも2人は、できる限りいい結果を出すためにすばらしい仕事をしてくれたと思います」

―今大会のサイドストーリーを教えてください。

「カタールで雨降ったのは初めてではありません。2009年にもスタート前に激しい雨が降り、月曜日にレースが延期になったことがありました。しかし、砂漠でこれほどまでの雨を見たことがありません。土曜日の午後、我々のオフィスの床は水浸しになったし、乾かすのがとても大変でしたからね」

―RC213Vは、ほかのサーキットに比べてロサイルを苦手にしています。その理由は?

「おそらく、一番の理由は、このサーキットが基本的に強いブレーキングポイントをメインストレートの最後の1カ所しか持っていないからだと思います。ブレーキングが我々のマシンの強みの一つですからね。今大会、もっとハードにフロントタイヤを使うことができていたら、決勝では、違う戦いができたと思います。いずれにせよ、我々のエンジニアやチームは、この冬にいい仕事をしました。マシンは昨年のシーズン序盤よりさらに戦闘的になっていることは間違いありません」

2年連続のタイトル獲得を目指すマルケス。そして念願の初タイトル獲得に標準を定めるペドロサ。17年シーズンに向けて行われたウインターテストは、マレーシア、オーストラリアと順調にメニューを消化し、着実にパフォーマンスを上げてきました。そして開幕戦の舞台となるカタールテストでも、昨年に比べれば仕上がりはよく、Honda陣営にとっては3年ぶりの開幕戦勝利を視野に入れての調整が続いていました。

しかし、レースウイークに入ってからは、雨と強風、滑りやすい路面コンディションに翻弄され、そして決勝ではタイヤ選択が完全ではなく、パフォーマンスを存分に発揮することができませんでした。

悔しいレースとなりましたが、マルケスが4位、ペドロサは5位と着実に走りきってチェッカーを受けました。2年連続個人とコンストラクターズタイトル、そして2年ぶりのチームタイトル獲得という3冠制覇に向けて、まずは最初の一歩を踏み出すことに成功しました。

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