ルーキーライダーにとって、1年目のシーズンは初経験の会場が連続します。そのため、彼らは自分が思っているようなポテンシャルを存分に発揮できず、フラストレーションの溜まるレースが続きます。Drive M7 SIC Racing Teamに所属するマレーシア人選手のアダム・ノロディンにとっても、それは例外ではありません。
シーズン2戦目のアルゼンチンGPでは2番手を走行し、同じ出身地のカイルール・イダム・パウィ(Honda Team Asia)とともにマレーシア人選手が1-2フィニッシュを飾るかにもみえましたが、運悪くウエットパッチに乗ってしまい転倒。再スタート後、11位でチェッカーフラッグを受けました。
その後、レースがヨーロッパラウンドに移ってからは欧州の洗礼を受け、ポイントを獲得できない厳しいレースが続きました。やがてシーズンは終盤戦に差しかかり、アジア太平洋の3連戦を迎えることになりました。
日本、オーストラリア、マレーシアと続くこの3週間の戦いで、ノロディンはそのうち2つの会場を経験していました。日本GPが行われるツインリンクもてぎはアジアタレントカップ時代に走行済みで、マレーシアGPのセパン・サーキットは勝手知ったる母国のコースです。その3連戦の端緒となる日本GPで、ノロディンは本来の才能の一端を示す好成績を残しました。
「今回の日本GPはとても楽しみです。アジアタレントカップで走行経験のある場所で、シーズンを通して走ってきたことでマシンに対する理解もだいぶ深まっているので、ツインリンクもてぎでは速さを発揮できると思います。シーズンも終盤なので、残りの4戦ではできる限りいいリザルトを残すつもりです。得意コースのツインリンクもてぎで好結果を残すことができれば、シーズン終盤戦にいい弾みをつけることができるはずです」と、レース前には抱負を述べていました。
日本GPのレースウイークが始まると、初日は午前と午後の2回のプラクティスを終えて16番手。まずまずの走り出しと言えるでしょう。
「乗れば乗るほど、このサーキットを好きになります。FP1ではギアリングに少し問題を抱えていたのですが、すぐにいい方向性を見つけてFP2では一気にタイムアップできました。初日としては狙い通り、上々の走り出しになったので、明日もこの調子で集中して走り続けたいと思います。僕の走りはまだ完ぺきではありませんが、どんどんよくなっていく手応えをつかんでいます。今日の走りをもう一度復習して改善点を洗い出し、もっといい走りにつなげたいですね。明日はもっとがんばっていい走りをしてみせます!」
そう話していた通り、翌日の予選では9番手タイムで3列目を確保。第3戦のアメリカズGP以来となる、今季2度目のシングルグリッドを獲得しました。
日曜の決勝レースは、スタートを成功させて序盤に6番手まで浮上し、トップグループでバトルを続けました。その後、先頭集団からは少し離れてしまいましたが、最後は12位でチェッカーフラッグ。第2戦アルゼンチンGP以来の、貴重なポイントを獲得しました。
「昨日の予選を終えて、ポイントを獲得できそうな調子だったので、今日の決勝が本当に待ち遠しかったです。レースではスタートをうまく決めて、序盤は6番手でトップグループに食らいついていくことができました。後ろのライダーが何度もオーバーテイクを狙ってくるのをうまくブロックしていたのですが、彼が僕の後ろでハイサイドしそうになったときに接触を避けようとして前との距離が開き、順位を落としてしまいました。もう一度追いつこうとしたのですが、ヒザに痛みがあり、それ以上は速く走れませんでした。落ち着いて最後まで走りきり、ポイントを獲得できたのはよかったと思います。今週は初日から調子もよく、今シーズンで最も充実した内容のウイークになりました。次の2連戦も、この調子でがんばりたいと思います」
その言葉通り、翌週のオーストラリアGPではさらに1つ順位を上げ11位でゴール。ホームグランプリのマレーシアでは、今季ベストリザルトを目指して戦いましたが、荒れたレース展開で序盤の転倒に巻き込まれ、残念ながらリタイアとなりました。そして、いよいよ最終戦のバレンシアGPが迫ってきました。ルーキーイヤーの締めくくりとして、ノロディンが目指すのは今季ベストリザルトであるトップ10フィニッシュです。
