開幕戦 ベテランライダーの新たな挑戦がIDEMITSU Honda Team Asiaで始動
今年からIDEMITSU Honda Team Asiaに加わったラタパーク・ウィライローは、タイ出身の28歳です。250ccクラス時代から世界選手権に参戦し、中排気量クラスの経験は豊富。また、スーパースポーツ世界選手権(WSS)での優勝経験もある、クラス屈指のベテラン選手です。
開幕戦カタールGP 会場:ロサイル・インターナショナル・サーキット
予選:23番手 決勝:13位
2016年シーズンの開幕戦カタールGPは、恒例のナイトレースとして開催されましたが、ウィライローはその豊富な経験を生かし、チームとともに、着実にセットアップを積み上げていきました。土曜日の予選を終えて、スターティンググリッドは8列目23番手。厳しい位置から日曜日の決勝レースを迎えることになりましたが、ウィライローは全20周の戦いを落ち着いて乗りきり、周回ごとに前の選手たちをオーバーテイクし続けました。最後は13番手まで浮上し、チェッカーフラッグ。今季初レースで、しっかりと3ポイントを獲得しました。
ウィライローは「厳しいグリッドからのスタートになってしまいましたが、いいレースができたと思います」と、落ち着いた口調の中にも喜びをにじませながら、この日の戦いを振り返りました。
「レース周回を通じて、狙っていた通りの安定したラップタイムを刻めました。Moto2で久しぶりに獲得したポイントなので、とてもうれしいです。週末を通じてがんばり続け、すばらしいマシンに仕上げてくれたチームに感謝したいです」
次戦のアルゼンチンGPは、ウィライローにとって初体験のコースになりますが、好調の波を維持して乗りきりたいところです。
第2戦 ピンチでみせたベテランらしさ
南米アルゼンチンのアウトドルモ・テルマス・デ・リオ・オンドで開催された第2戦は、天候に翻ろうされるウイークになりました。土曜日まではドライコンディションで順調に推移したのですが、決勝日は未明から雨が降り、午前のウォームアップ走行は、この週末で初のウエットセッションになりました。
第2戦アルゼンチンGP 会場:アウトドルモ・テルマス・デ・リオ・オンド
予選:21番手 決勝:17位
Moto2クラスの決勝レースが行われる時刻には、すでに雨は上がっていましたが、路面上にはまだ、至るところにウエットパッチが残る難しいコンディションでした。現地時間の午後2時20分にスタートした決勝レースでは、ウィライローは序盤の混戦で集団に飲み込まれてしまいましたが、ベテランらしい落ち着いた処理で自分のペースを少しずつ回復。最後はポイント圏内目前の17位でチェッカーフラッグを受けました。
「レースではまずまずのスタートを切れたのですが、集団の中で前に出ることができず、後れを取ってしまいました」レースを終えたウィライローは、悔しそうな口調でレースを振り返りました。
「マシンはとてもよく走っていただけに、ポイント圏内でフィニッシュできなかったのが残念です。今回のウイークでは一度も転倒せず、着実に前進できたのはポジティブな要素だと思います。いつもがんばってくれるチームには本当に感謝をしているので、次のアメリカズGPではしっかりと結果を出して、彼らの努力に報いたいです」
第3戦 痛みに耐えて走りきったアメリカズGP
第3戦アメリカズGPは、テキサス州オースティン郊外のサーキット・オブ・ジ・アメリカズで開催されました。初日の午前はまずまずの走り出しとなったウィライローでしたが、午後のフリープラクティス2回目では、最終コーナーで他車に後方から追突され、転倒を喫してしまいました。チームがマシンを修復し、45分間のセッション終盤に再びコースへ出ることはできましたが、この日のタイムは総合24番手。また、転倒の影響で右肩とでん部を少し痛めてしまいました。左肩に古傷を抱えているため、満身創痍で以後のセッションに臨むことを余儀なくされたわけです。
第3戦アメリカズGP 会場:サーキット・オブ・ジ・アメリカズ
予選:24番手 決勝:19位
そのような状態でもウィライローは強いプロ意識を持って以後のセッションに臨み、予選は24番グリッドを獲得。「前日よりも身体の調子がよくなり、セットアップ面で前進できました。フロントのフィーリングをもう少し改善できれば、さらにいいリズムで走れると思います。明日のレースは、前のライダーをできる限りたくさん抜いて、トップ15フィニッシュを狙うつもりです」と、日曜日に向けた意気込みを語りました。
決勝レースでは、粘り強い走りで少しずつポジションを回復し、19位でゴール。狙っていたポイント獲得こそかないませんでしたが、予選の位置よりも前でチェッカーフラッグを受けたところに、彼のがんばりが表れていました。
「レース途中から肩の痛みが強くなり、切り返しやブレーキングが辛くなってきました。痛みに耐えてなんとか最後まで走りきることができたのは、よかったと思います。次のヘレスでは、体調もよくなっていると思うので、もっと上位を目指したいと思います」
第4戦 データと経験のあるサーキットで悔やまれる転倒リタイア
本格的なヨーロッパラウンドの始まりを告げる第4戦スペインGP。開催地は、同国南部アンダルシア地方のヘレスサーキット。このサーキットでは、開幕前にプレシーズンテストを実施しているだけに、データと経験を生かしたいところでした。
第4戦スペインGP 会場:ヘレスサーキット
予選:21番手 決勝:リタイア
レースウイーク初日の金曜日は、2回のフリープラクティスを終えて、トップと1.430秒差の23番手。前戦で痛めた肩は確実に快方に向かっており、レースを想定したペースも悪くなかったと、ウィライローはこの日の走りを振り返りました。
土曜日の予選はトップとのタイム差をさらに詰めて1.135秒差とし、7列目21番グリッドで決勝レースを迎えることになりました。
決勝レースは、日曜日の午後12時20分にスタートしました。開始直後、ウィライローは5コーナーで他選手と接触して転倒。残念ながらレースはそこで終えざるを得ませんでした。その際、軽い脳震とうを起こしたウィライローは、レース後にヘレス市内の病院へ行き、念のために精密検査を受けることに。大事がないことを確認しつつ、この日は一晩安静に過ごして、次のフランスGPに備えました。
第5戦 手に異常を抱えながら過ごした我慢のレースウイーク
第4戦スペインGPを終えたIDEMITSU Honda Team Asiaは、レース後の4月29日(金)に、カタルニア地方でプライベートテストを実施し、第5戦の舞台、ル・マン・サーキットへと向かいました。
第5戦フランスGP 会場:ル・マン・サーキット
予選:24番手 決勝:21位
ウィライローは、このプライベートテストで左手に違和感を抱えていましたが、第5戦の走行が始まると、その違和感は痛みへと変化していきました。テーピングと鎮痛剤で対応しながら走行を続け、土曜日の予選は24番手タイム。日曜日の決勝レースでも歯を食いしばって最後まで走りきり、21位でチェッカーフラッグを受けました。
「本当につらいレースでしたが、完走するために全力を尽くしました」。完走した充実感と疲労感をにじませながら、ウィライローは26周のレースを振り返りました。
「決勝前には鎮痛剤を打って臨んだので、レースでは集中力を途切れさせることなく走りきれました。レースウイークを通じて全力でがんばってくれたチームに、本当に感謝しています。彼らのためにも、次のムジェロには万全の体調で臨みたいと思います」
レントゲン検査の結果、ウィライローの左手第一指中手骨が折れていると判明したのは、第6戦イタリアGPを数日後に控えた火曜日のことでした。