IDEMITSU Honda Team Asiaの挑戦

中上貴晶

ラタパーク・ウィライロー 尾野弘樹 カイルール・イダム・パウィ
racereport

予想だにしていなかったウエットでの苦戦

第17戦マレーシアGPが行われるセパン・サーキットは、熱帯地域特有の天候がときにレースを大きく左右します。朝から赤道直下の強い日差しが照りつけ、気温と路面温度が一気に上昇。サーキットのコンディションは、タイヤとマシン、ライダーに対して非常に過酷なものとなります。そして、かなりの確率で、この高い気温が午後の雨を引き起こすことにもなります。南国独特の大粒で勢いの強いシャワーが降りしきると、路面は一気にウエット状態になり、水量が増して走行が危険な状態になることも少なくありません。

第17戦マレーシアGP  会場:セパン・サーキット
予選:20番手  決勝:21位

セパン・サーキットは、この対応として今年のレースに先立ち、路面の再舗装と水はけの改善を行いました。ウエット路面でもグリップ性能が向上し、排水性もよくなりましたが、路面そのものの乾きが遅くなり、しかも黒いアスファルトに残るウエットパッチの判別が難しくなってしまいました。つまり、一度濡れると路面全体が完全に乾くまでには、かなりの時間を要するのです。

IDEMITSU Honda Team Asiaの中上貴晶は、第15戦日本GP以来からの連戦を非常に濃密な内容で戦ってきましたが、その締めくくりとなる今大会は、この難しいコンディションに翻ろうされるレースウイークになってしまいました。

中上貴晶

ドライコンディションでは、中上は本来の切れ味鋭い速さを発揮していました。金曜午後のFP2では、トップから0.089秒という僅差の2番手タイム。土曜午前のFP3ではライバルたちを圧倒する走りでトップタイムを記録しました。決勝日の朝は午前7時ごろまで雨が降って、Moto2クラスのウォームアップ走行が始まる午前10時10分でも、まだところどころにウエットパッチが残る状態でした。その難しいコンディションで中上は最後にきっちりとタイムアップを果たしてセッション3番手タイム。ドライコンディションなら、確実に優勝争いをできるだけのスピードを持っていることを感じさせました。

中上貴晶

しかし、前日の予選では20番手に沈み、決勝レースのグリッドは低い位置からのスタートを強いられました。決勝は、Moto2クラスの選手たちがスタート進行のグリッドに着くころに強い雨が降り、レースはウエットスタートになりました。決して走りやすいとは言えないコンディションで中上はスタート直後から悪戦苦闘を強いられました。ラップタイムも本来のスピードを発揮できないまま周回数が経過していき、最後は21位でのゴール。今季では経験したことのない、厳しいレースになってしまいました。

「今回のレースウイークは、ドライやハーフウエット、そして完全ウエットのコンディションなど、いろいろなセッションがありました。ドライではまだよかったものの、決勝は散々なレースになってしまいました」

中上貴晶

苦笑するしかない、という表情で中上はレースを振り返りました。

「レインタイヤのフィーリングを一切つかめず、ブレーキングでもターンインでもフロントのフィーリングがなく、マシンを倒していくと今度はリアのグリップがないという状態でした。スロットルを開けていくときもイニシャルグリップがなかったし、高速コーナーでも異常な動きが出て、正直なところ、とてもレースにはなりませんでした。低いポジションからのスタートをばん回するために追い上げていけるフィーリングもなく、つらくて長い19周でした。今日の結果を今後の教訓に生かしたいと思いますが、今日はあまりにレベルが低すぎて、果たして役に立つかどうか…。ほかのサーキットではウエットでも上位で走れていたのに、今日に限ってこれだけ遅かったのは、なにかしら原因があるとは思うのですが。現状のベストを尽くしましたが、前も離れていたしポイント圏外だったので、完走を目指すしかありませんでした。

今週に関しては、ウエットタイヤのフィーリングをつかめなかったことが最大の敗因だったと思います。正直なところ、このレースはもう忘れたいですね。それくらい遅かったです。次はシーズン最終戦なので、今までがんばってくれたチームの努力に恩返しをして、応援してくださる方々の期待にも応えるために、本来の位置で優勝争いをできるように、気持ちを切り替えて臨みます」