IDEMITSU Honda Team Asiaの挑戦

中上貴晶

ラタパーク・ウィライロー 尾野弘樹 カイルール・イダム・パウィ
racereport

特別なコースで2戦連続表彰台をつかみ取る

第13戦サンマリノGP  
会場:ミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリ
予選:2番手  決勝:3位

前戦から2週連続開催の第13戦サンマリノで、IDEMITSU Honda Team Asiaの中上貴晶が2戦連続3位表彰台を獲得しました。ポイントランキングは7位のままですが、16点を加算してランキング3位まで17点差に迫っています。今回のレースウイークの中上の戦いを振り返ってみましょう。

中上貴晶

昨年のサンマリノGPでも、中上は3位表彰台を獲得しました。しかも、前戦のイギリスGPでも表彰台を獲得しています。相性のいいサーキットでの今大会を、非常に良好な流れで迎えたと言えるでしょう。レースウイークの前に中上は、「今回は絶対にレースで勝つためにここへやってきました」と強い決意で語りました。

このサーキットでは、子ども時代からの親友でライバルでもあった富沢祥也選手が、2010年の大会で、レース中のアクシデントにより逝去しています。彼への最高の手向けとして、優勝を飾ることを中上は誓っていたのです。

その気迫が見事に表れて、金曜のFP1とFP2では、両セッションで最速タイムを記録。この日の夕刻には、富沢選手のお母さんや当時のチームスタッフ、パドックの日本人関係者などとともに事故のあった第11コーナーを訪れ、花を捧げて手を合わせました。その中には、同じIDEMITSU Honda Team Asiaのラタパーク・ウィライローやMoto3クラスの尾野弘樹、トーマス・ルティ選手などの姿もありました。

翌日の土曜日も、中上は前日来の好調を維持し、午前のFP3でトップタイム。ここまでの全セッションで最速を記録する、安定した高い戦闘力を見せつけました。午後の予選では、惜しくもポールポジションこそ逃しましたが、0.073秒差という僅差の2番手タイム。翌日の決勝レースは、フロントロー中央から迎えることになりました。

「FP3までトップだったのでポールは獲りたかったのですが、予選序盤にザルコ選手が1分37秒4をマークしたのを見たときに『これは、あまり簡単じゃなさそうだな』という印象でした」

と、中上は予選の展開を振り返りました。

「ポールポジションを獲れなかった悔しい気持ちもありますが、一番大事なのは明日のレースです。フロントローに並べて、レベルの高いアベレージタイムで走れることも証明できています。いいスタートを切って、26周の長いレースを落ち着いて走りたいと思います。おそらく逃げることはできないと思いますが、バトルにはできるだけ加わらず、なるべくトップ集団の前にいるようにすれば、レースの組み立ても楽になると思います」

中上貴晶

午後12時20分に始まったMoto2クラスの決勝は、中上の想定とはやや異なったレース展開になりました。

2番グリッドスタートの中上は、スタートをうまく決めたものの、1コーナーのブレーキングでややはらんでしまい、トップ集団の後方に沈んでしまいました。最も避けたいといっていた位置取りになってしまいましたが、それでもあわてず、前を走る選手たちを冷静に観察して次々とオーバーテイク。全26周のレースの折り返し地点となる13周目には、3番手に浮上しました。このときすでに、トップを走る2台の選手とは3秒以上離れていましたが、それでもあきらめずにペースアップを図りました。

レース終盤で、タイヤの摩耗が厳しくなる23周目に自己ベストタイムを記録しながら猛追しましたが、前との差は縮まらず、その後は3位をキープする走りに切り替えてチェッカーフラッグを受けました。

レースを終えた中上は、「悔しさが半分、うれしさが半分です」と正直な心境を吐露しました。

「悔しいのは、スタート後の1コーナーでミスをしてしまい、序盤数周がうまくいかなかったこと。うれしいのは、そこまでポジションを落としてからもしっかりと追い上げて、週末を通して発揮していた戦闘力をレースで出せて表彰台を獲得できたことです。リズムを取り戻してからは順位をばん回することだけを考えて、うまくポジションを上げていくことができました。3番手に上がってから前を見たときには結構離れていたので、厳しいなとは思ったのですが、レースではなにがあるか分からないし、まだ自分に余力もあったので、最後の最後まであきらめず可能性を信じてプッシュし続けました。

レースで表彰台に上がるのは非常に重要だし、ここは僕にとって重要な場所で、優勝報告こそできなかったけど、3位を獲得してちゃんと祥也に挨拶もできました。結果的に、ウイークを通してすべてのセッションでトップ3だったのでいい週末だったと言えますし、次のアラゴンと日本GPに向けて、さらにポテンシャルを上げて戦っていきたいと思います」

シーズン終盤に向け、中上貴晶とIDEMITSU HondaTeam Asiaは、表彰台争いの一角を占めるMoto2クラスのキープレイヤーとして、どんどん存在感を高めています。