IDEMITSU Honda Team Asiaの挑戦

中上貴晶

ラタパーク・ウィライロー 尾野弘樹 カイルール・イダム・パウィ
racereport

ライバルとの別れ。そしてシーズン初の表彰台

第7戦カタルニアGPで、IDEMITSU Honda Team Asiaの中上貴晶が3位表彰台を獲得しました。このレースウイークは、金曜日午後のFP2でルイス・サロム選手が転倒するアクシデントの結果、亡くなるというとても痛ましい出来事があり、MotoGPパドックの全員にとって、とてもつらい週末になりました。

「あのような出来事があったあとでは、気持ちを再び盛り上げていくことがとても難しかったのですが、皆が気持ちを一つにして悲しみを乗り越えました。この表彰台は、サロム選手と彼の家族にささげたいです」

レースを終えた中上は、つらさを乗り越えた笑顔で、こう話しました。

中上貴晶

第7戦カタルニアGP  会場:カタルニア・サーキット
予選:4番手  決勝:3位

サロム選手と中上は、ロードレーススペイン選手権に参戦していたころに知り合い、Moto2クラスでも切磋琢磨してきた間柄です。スペインと日本で国籍こそ違えども、同年齢の若者としてジョークをかわし合うパドックの仲間でした。訃報が届いた日の夜は、さまざまな思いが去来して熟睡できなかったそうです。しかし、ヘルメットをかぶると気持ちを切り替え、土曜日の走行から再び走りに集中しました。

サロム選手の事故を受けて、土曜日以降の走行は安全性の見地から、コースレイアウトに変更が施されました。シケインなどの導入で後半セクションが低速化されたのですが、中上はその区間のライディングに少々苦戦を強いられました。予選の順位は4番手で、決勝に向けて2列目は確保したものの、コース攻略やアベレージタイムなどの内容面に関する限り、この段階では決して完ぺきな手応えを得ていたわけではありませんでした。

「バックストレートエンドの10コーナーはまだミスも多いし、もう少し安定方向に持っていきたいのですが、いずれにせよこのレイアウトになって、自分たちはやや苦戦しているというのが正直なところです。現段階では、決勝レースに向けて万全の備えができていると言えるところまで、詰めきれていません」

中上貴晶

「日曜日のウォームアップでさらに細かい部分を見直して、長いレースを自信を持って戦いきれる状態にしたいです」と、予選後の夕刻に話していた中上ですが、そのウォームアップ走行ではトップタイムを記録。決勝レースに向けてモチベーションを高め、午後12時20分のスタート時刻を迎えました。

中上貴晶

全23周の決勝レースは、トップの2台が後続を引き離す展開になりました。中上は、3つ目のグループから着実に追い上げ、安定したラップタイムでどんどん前の選手たちをオーバーテイク。クリーンかつ激烈なファイトをライバルたちと繰り広げながら前との差を詰めていき、終盤の17周目には3番手に浮上しました。そして、ラストスパートで後続の選手たちを引き離し、3位でチェッカーフラッグを受けました。

「今シーズンは、ライディングに関していい部分もあり、何度もトップタイムを記録するセッションもありましたが、不運な出来事が何度か続いて、なかなか本来のポテンシャルを発揮できないレースが連続していました。今回のレースも、前日からコースレイアウトが変更されたあとは、自分たちにとっていい流れになりませんでした。予選もなんとか4番手でしたが、実はペース的に『無理です……』という状態だったんです。予選終了後にセットアップを初日の状態に近いところに戻したことも功を奏し、今日の朝にウォームアップでトップタイムを出せたので『よし、やってやろう』という気持ちになれました。また、SNSでもたくさんの方々から応援をもらえたことに勇気づけられ、それがすごくパワーになりました」

表彰台への登壇は、2015年のサンマリノGP以来。実に12戦ぶりのポディウムです。

「表彰台に戻って来られたのは、今後の戦いに向けて大きな弾みになります。これからも表彰台の常連にならなければならないし、なる自信があります。ポイントランキングで上位にいる選手を追いかけ、次のアッセンも全力でがんばりたいです」