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MotoGP学科

ファクトリー資格の話

19限目

Hondaが提供する市販レーサーとは?

ただし、量産市販車エンジンを改良し、オリジナルフレームに搭載した現行のCRTマシンでは、ファクトリーマシンとの間に大きな戦闘力の差が開いているのも事実だ。その溝を埋め、レースをさらに盛り上げるため、各メーカーが新たなマシン供給を準備していることは、今年はじめから告知や報道がされてきた。

Hondaでいえば、2014年の参戦に向けて、HRCがMotoGP市販レーサー(仮称)の開発を進めていることは、すでに広く知られている。2月のプレシーズンテストが行われたセパンサーキットで、HRCの中本修平副社長が記者会見を開き、その概要を世界に公表した。

その後、5月にはテストライダーがツインリンクもてぎで実走をしたことも発表。8月6日・7日には、ツインリンクもてぎで来年型RC213Vの試走をした2011年MotoGPチャンピオンのケーシー・ストーナーも、近日中にこの市販レーサーマシンのテスト走行を実施する予定だ。

Hondaの「MotoGP市販レーサー」は、RC213Vの技術を大幅に投入し、「MotoGPレプリカ」といってもいいほどの戦闘力を備えたマシンだ。電子制御は公式ECUソフトウエアを使用しており、燃料容量は24リットルとなっている。規則では年間12基までエンジンを使用できることになるが、エンジンメンテナンスはHRCが行うため、それほど数多くのエンジンを使用する必要性は生じない見通しだ。

エンジンスペックに関しては、ファクトリーマシンのRC213Vがニューマチックバルブとシームレストランスミッションを搭載しているのに対し、市販レーサーのエンジンはスプリングバルブとコンベンショナルなトランスミッションという仕様になっている。

MotoGP参戦チームに対して、完成車2台とスペアエンジン、パーツ類というパッケージで、価格は100〜120万ユーロ、最大で5名程度の選手への販売を予定している。

ほかの陣営もエンジン供給などを計画していることはすでに各所で報道されている。2014年のMotoGPが、Hondaやヤマハ、ドゥカティといったファクトリー勢に加え、これらの市販レーサーがグリッドに並ぶことになれば、マシン差の溝が埋められ、レースはさらに接近した争いになり、一段と手に汗握るスリリングな戦いが期待できるだろう。

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