ルールブック内のラップタイム関連条項
ところで、このラップタイムに関する文言は、ルールブック内では以下のようにごく簡単な取り決めとして記述されている。
1.15 プラクティス
1.15.4. ラップタイム
選手のラップタイムはすべて計測される。
1.15 Practice
1.15.4. Lap time
All laps of the riders will be timed.
1.24 レースの終了およびレース結果
1.24.7 プラクティスとレースの双方とも、コース上に塗布されたフィニッシュラインを連続して2回通過した間の差分をラップタイムとする。
1.24.7 Both for practice and for race, the lap time is the subtraction of the time between two consecutive crossings of the finish line painted on the track.
また、罰則や写真判定に関する取り決めでラップタイムが関与するものには、以下のような条文がある。
1.21 プラクティスとレースにおける行動
3) 選手はコースとピットレーンのみを使用しなければならない。ライダーが偶発的にコースを離れた場合は、その後にマーシャルの指示する場所もしくは自らに有利にならない場所への復帰が許可される。プラクティスもしくはウオームアップ中にこの規則に違反した場合は当該ラップタイムの取消、レース中の場合はライドスルーが科せられる。さらなる罰則(罰金、失格、チャンピオンシップの剥奪)などが適用される場合もある。
1.21 Behaviour During Practice and Race
3) Riders should use only the track and the pit-lane. However, if a rider accidentally leaves the track then he may rejoin it at the place indicated by the marshals or at a place which does not provide an advantage to him. Any infringement of this rule during the practices or warm up will be penalised by the cancellation of the lap time concerned and during the race, by a ride through. Further penalties (such as fine - disqualification - withdrawal of Championship points) may also be imposed.
1.24 レースの終了およびレース結果
1.24.2 2名あるいはそれ以上の選手間の写真判定の場合、前輪の先端がフィニッシュラインの平面へ先に到達した競技者を先着とする。 同着の場合は、レース中の自己ベストタイムに従って順位を考慮する。
1.24 Finish of a Race and Race Results
1.24.2 In case of a photo-finish between two, or more, riders, the decision shall be taken in favour of the competitor whose front wheel leading edge crosses the plane of the finish line first. In case of ties, the riders concerned will be ranked in the order of the best lap time made during the race.
ラップタイムの取消については、今年の第5戦イギリスGP(シルバーストーンサーキット)のMoto2クラス予選で、この条文に関連する出来事が発生した。5コーナー出口で大きなラインを取って縁石外側のグリーンゾーンにタイヤが接触した選手は、全員が当該周回のラップタイムをキャンセルされた。このコーナーで大きくはらむ走り方は、決してラップタイム的に有利な走行ラインではなく、グリーンゾーンにはみ出した選手はいずれもタイムロスにつながっていたのだが、それでもこのルールが適用されて、中にはタイムアタック時のラップタイムがキャンセルされた場合もあった。
また、フィニッシュ時に写真判定でも順位が決まらない場合のベストタイム順による順位決定だが、近いところでは2009年と2010年のマレーシアGP(セパンサーキット)でこの条項が適用されている。
2009年は250ccクラス。青山博一が優勝を飾ったレースだが、2位争いのマルコ・シモンチェリとエクトル・バルベラ選手が同着。写真判定でも差が見いだせなかったため、決勝レース中により速いベストラップタイムを記録していたバルベラ選手に2位の判定が下った。
2010年の125ccクラスでも、同着になった8位と9位の間で上記と同様の審査が行われ、ベストラップタイムを比較した結果、ルイス・サロム選手が8位、小山知良選手には9位という判定が下っている。
このように、過去のベストタイムなどを参照しながらレースを観戦すれば、楽しみの奥行きはさらに広がる。特に予選のラップタイムは、時間軸で比較するという見どころも増えて、各選手への応援にもいっそうの熱がこもるだろう。2011年シーズンは、過去の記録も参照しながらレースを観戦してみてはどうだろうか。