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MotoGP学科

ゼッケンの話

10限目

チャンピオンナンバー“1”を巡るエピソード

冒頭に紹介したスポーティングレギュレーション(1.12)によると、選手が使用するゼッケンは、「通常は、前年の成績に基づく」と記されている。

ところが、今年のMotoGPクラスを見てみると、全選手が独自の「マイナンバー」を使用しており、前年度のリザルトに基づいた番号をつけている選手はひとりもいない。Moto2や125ccクラスでも、多くの選手がマイナンバーを使用している。

かつてはチャンピオンは必ず“1”をつけていた。ケニー・ロバーツ、フレディ・スペンサー、エディ・ローソン、ウェイン・レイニー、ワイン・ガードナー、ミック・ドゥーハンといったそうそうたる歴代王者のバイクに記された“1”の数字は、彼ら以外の何者もそこに到達できない王者の風格と威厳を象徴していた。

エディ・ローソン
ミック・ドゥーハン

マイナンバーの“34”に強烈なこだわりを見せていたケビン・シュワンツでさえ、チャンピオンを獲得した年にはマシンに“1”をつけた。近年では、ニッキー・ヘイデン選手やケーシー・ストーナー選手がチャンピオンを獲得した際に、チャンピオンナンバー“1”の中に彼らのマイナンバーをデザインするという処理を施している。

ただし、7度の世界王者に輝いたバレンティーノ・ロッシ選手の場合は、チャンピオンを獲得してもマイナンバー“46”にこだわり、チャンピオンナンバー“1”はマシンではなくレザースーツの肩に貼付することで対応している。

2007年 ニッキー・ヘイデン選手
2003年 バレンティーノ・ロッシ選手

ロッシ選手のようにチャンピオンナンバーよりもマイナンバーを優先したのは、バリー・シーンが最初だと言われている。1976年と77年に最高峰500ccのチャンピオンを獲得した際に、シーンは自らを象徴する7番にこだわった。当時、この番号はシーンのものとして認識されていたため、ランキング7位の選手は彼に敬意を表してこの番号を譲ったとも言われている。

また、MotoGPで使用する番号は2ケタまでとされており、3ケタの番号は許可されない。この制限を逆手に取って、ジェレミー・マクウィリアムスは「許可されている最も大きな番号だから」という理由で“99”を使用していた。また、全日本ロードレース選手権参戦時に“100”を愛用していた玉田誠は、MotoGPではこの番号を使えなかったために、“6”へと変更している。

玉田誠
01