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MotoGP学科

カーボンの話

7限目

カーボン製ディスクの現在

CC製ディスクは500℃以上で繰り返し使用すると、熱による酸化で徐々に強度が低下する傾向があるため、その対策としてセラミックス※1やリン系化合物のコーティングを施す場合がある。これが、このところハイエンドスペックを誇る市販四輪スポーツカーで実用化され、その名が知られるようになったCCB(セラミックス・コンポジット・ブレーキ)と呼ばれるものだ。

CCBは、CCにシリカ(二酸化珪素)を配合し、1700℃程度の高温で焼結させることで表面に炭化珪素を析出(コーティング)させる特殊製法によって製造される。CCの性格に加えて高温での形状安定性、耐腐食性(耐酸化性)、さらには騒音抑制にも優れているといわれている。

半面、その性能を発揮するためには、CCBに対応した成分組成を持つ特殊なブレーキパッドの使用が不可欠で、ユニット自体も非常に高額になる(ちなみに市販四輪車ではドイツ製ブランドの場合、ブレーキユニットのオプション価格は140万円以上と言われている)。

また、このCCのセラミックスによる表面処理自体も、完全に確立されたノウハウではなく、まだまだ開発の余地がある技術とされている。したがって、MotoGP参戦チーム間の資金力による不均衝を是正すると同時に、より確かな安全性を考慮した上で、ブレーキ部品に対するセラミックス・コンポジット素材の、あるいはCC製ディスク自体の規制が行われようとしているのも事実である。

カーボン・コンポジットそのものの歴史は意外に浅く、実用化されたのは1970年代であり、CCになると前述のように、いまだ量産化とさらなる普及に向けて盛んに研究がされているのが現状だ。

そういった点では、MotoGPにおける今後のCC製ディスクなどの進化や変化は、リアルタイムで知ることができる技術の発展であり、興味深い事象であると言っていいだろう。

用語解説

※1セラミックス

もともとは「粘土を焼いた製品=窯業製品」を指す言葉で、ガラスやセメントなども含まれる。現在では、シリコン、炭化物、窒化物など非金属の無機物から生成された固体材料の総称として使われる。

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