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MotoGP学科

ポイントの話

6限目

チャンピオンシップの種類

シーズンも終盤戦にさしかかり、ランキング争いはいよいよし烈になってきた。MotoGPなどのモータースポーツの世界では、各レースの結果に応じて獲得するポイントの積み重ねでシーズン王者が決定されるのは周知の通り。

ところで、このポイント争いやランキングだが、チャンピオンシップ(選手権)※1という言葉にもあるように、一般的には選手たちの順位に最大の注目が集まる。だが、実はMotoGPでは3種類の選手権が争われているという事実をご存じだろうか。

1つは、言うまでもなく、選手たちが1年間の王者を争うライダーズチャンピオンシップ。もうひとつは、ライダーたちが操るマシンのチャンピオンを決めるコンストラクター(マニュファクチャラー)※2ズチャンピオンシップ。そして、もうひとつが、ライダーたちの所属するチームが覇を競うチームチャンピオンシップだ。ライダーズチャンピオンシップとコンストラクターズチャンピオンシップは全クラス共通だが、チームチャンピオンシップが争われるのはMotoGPクラスのみ、となっている(125ccクラスと250ccクラスにはチームチャンピオンシップは存在しない)。

これに関して、ルールブックでは、条文{1.28 チャンピオンシップとその区分}という項目で、以下のように定義をしている。

1.28.1 ライダーとコンストラクターはFIMロードレース世界選手権のチャンピオンシップを争う。チームはMotoGPチームチャンピオンシップを争う。

1.28.1 Riders and Constructors will compete for the FIM Road Racing World Championship Grand Prix. Teams will compete for a MotoGP Team Championship.


獲得ポイントについて

これら3種類のチャンピオンシップは、1年間のシーズンで争われる各レースの結果に応じて、それぞれ以下の基準でポイントが与えられる。

・ライダーズチャンピオンシップ――優勝者から15位までの各選手にポイント(下記参照)を与える。

たとえば、2009年第13戦サンマリノGPの結果を例に挙げると、優勝したバレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)が25点を獲得し、以下、2位のホルヘ・ロレンソ(ヤマハ)20点、3位のダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)16点、4位のアンドレア・ドヴィツィオーゾ(Repsol Honda Team)13点と、決勝順位が下がっていくに従い、与えられるポイント数も減少する。

■ライダーズポイント(2009年第13戦まで) ライダーズポイント(2009年第13戦まで)

※「-」はポイント対象圏外(16位以下、リタイア・欠場を含む)

第8戦アメリカGPで優勝したペドロサ。1位の25ポイントを獲得

・コンストラクターズチャンピオンシップ――レースをフィニッシュした各コンストラクターのマシンのうち、最上位で終えたマシン一台に対してポイントを与える。

同じく第13戦サンマリノGPを例に挙げると、Hondaが獲得するポイントは、Honda勢最上位でフィニッシュしたペドロサ(3位)の16点。また、ヤマハの場合は、優勝したロッシの25点をコンストラクターズポイントとして獲得する。ペドロサより下位でフィニッシュしたドヴィツィオーゾや、ロッシより下位でフィニッシュしたロレンソが獲得したポイントは、コンストラクターズポイントには加味されない。ちなみに、コンストラクターズチャンピオンシップにワークスチーム※3とサテライトチーム※3の区分はなく、ペドロサよりも上位でHondaサテライトチームの選手がフィニッシュした場合には、Hondaはそのサテライト選手が得た得点をコンストラクターズポイントとして獲得することになる。

■コンストラクターズポイント(2009年第13戦まで) コンストラクターズポイント(2009年第13戦まで)
■Hondaのコンストラクターズポイント対象(赤枠) Hondaのコンストラクターズポイント対象(赤枠)

※Hondaのコンストラクターポイントは、赤枠の数字を合算した「220点」となる

・チームチャンピオンシップ――チームに所属する全ライダー(2名、もしくは1名)が獲得したポイントを、チームのポイントとして算入する(ワイルドカードを除く)。

第13戦サンマリノGPの場合、このレースでRepsol Honda Teamが獲得するポイントは、ペドロサの16点とドヴィツィオーゾの13点を足した計29点。Fiat Yamaha Teamは、ロッシの25点とロレンソの20点を足した45点を獲得する。一方、選手が1名だけのLCR Honda MotoGPの場合は、12位でフィニッシュしたランディ・デ・ピュニエの4点のみがチームの獲得ポイントとなる。

■チームポイント(2009年第13戦まで) チームポイント(2009年第13戦まで)
■Repsol Honda Teamのポイント対象(赤枠) Repsol Honda Teamのポイント対象(赤枠)

※Repsol Honda Teamのポイントは、ペドロサ、ドヴィツィオーゾのポイント(赤枠)を合算した「290点」となる

ルールブックでは、{1.28.2}から{1.28.4}までの項でこの規定を説明し、また、{1.28.5}では各順位に与えるポイントを定義している。

1.28.2 ライダーには、各レースで以下のポイントが与えられる。

1.28.3 コンストラクターには、レースの順位で最高位に位置するコンストラクターのモーターサイクルに対して、ポイントが与えられる。

1.28.4 MotoGPクラスのチームは、原則として2名の選手で構成される。(中略)チームはチャンピオンシップを争う。代役や交代を含め、チームに所属する両ライダーが獲得した全ポイントは、チームチャンピオンシップに加算される。
ライダーが1名のチームの場合は、そのライダーが獲得したポイントのみがチームチャンピオンシップに加算される。
ワイルドカードライダーは、チームチャンピオンシップのポイントを獲得しない。

1.28.5 各レースで、チャンピオンシップポイントは以下のように与えられる:
    1位 25ポイント
    2位 20ポイント
    3位 16ポイント
    4位 13ポイント
    5位 11ポイント
    6位 10ポイント
    7位 9ポイント
    8位 8ポイント
    9位 7ポイント
    10位 6ポイント
    11位 5ポイント
    12位 4ポイント
    13位 3ポイント
    14位 2ポイント
    15位 1ポイント

1.28.2 For riders, the points will be those gained in each race.

1.28.3 For Constructors, only the highest placed motorcycle of a Constructor will gain points, according to the position in the race.

1.28.4 Teams in the MotoGP class will, in principle, be comprised of two riders. ….(text partly omitted)…Teams will compete for a Championship. All points scored by both riders in the Team, including substitutes or replacements, will count towards the Team Championship.
In the case of a one rider Team then only the points scored by that rider will count towards the Team Championship.
Wild card riders will not score points for the Team Championship.

1.28.5 For each race, Championship points will be awarded on the following scale:
    1st 25 points
    2nd 20 points
    3rd 16 points
    4th 13 points
    5th 11 points
    6th 10 points
    7th 9 points
    8th 8 points
    9th 7 points
    10th 6 points
    11th 5 points
    12th 4 points
    13th 3 points
    14th 2 points
    15th 1 point

また、獲得ポイントが同数で並んだ場合の規定は以下のとおり。

1.28.7 獲得ポイントが同数で並んだ場合、最終的な順位は各レースでの高位成績数に基づいて決定する(優勝回数、2位の回数など)。それでも同数で並ぶ場合には、最高位を達成したチャンピオンシップの日付を比較し、直近のレースで上位にある方を優先して判断する。

1.28.7 In the event of a tie in the number of points, the final positions will be decided on the basis of the number of best results in the races (number of first places, number of second places etc.). In the event that there is still a tie then, the date in the Championship at which the highest place was achieved will be taken into account with precedence going to the latest result.

ところで、これら3種類のチャンピオンシップをすべて制覇することを指して、三冠と呼ぶことがある。Hondaは、ニッキー・ヘイデン(当時、Repsol Honda Team)がチャンピオンを獲得した2006年に、ライダー、コンストラクター、チームの三冠を達成している。

2006年最終戦、バレンシアGPで逆転でライダーチャンピオンに輝いたニッキー・ヘイデン(当時、Repsol Honda Team)

用語解説

※1チャンピオンシップ(選手権)

選手権シリーズのチャンピオンに与えられる資格・称号(タイトル)のこと。または、ある競技におけるチャンピオンを決する大会/シリーズのこと

※2コンストラクター/マニュファクチャラー

レーシングマシンの製造者(メーカー)のこと。選手権によってコンストラクター/マニュファクチャラーと表記が変わるが、どちらもメーカーを指す

※3ワークスチーム/サテライトチーム

ワークスチームはマシンメーカーが自らの資金、自社開発のマシン(ワークスマシン)で参戦するチームのこと。ファクトリーチームも同義。これに対してマシンの貸与を受けたり購入するなどして参戦するチームをプライベーター(プライベートチーム)と言うが、中でもワークスマシンを貸与されて参戦するプライベーターをサテライトチームと呼ぶ。セミワークスも同義

 

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