昼飯時はお客さんやスタッフで、あっという間に超満員。
■さて、せっかく美食の国イタリアに来ているのだから、レストランも紹介しておこう。ピットビルディング二階にあるムジェロのパドックレストランは値段も安く、なかなかの味でお客さんや関係者からの評判も上々だ。一般に食事の時間が遅いイタリアだが、ここでは皆がレーススケジュールに合わせて行動するため、昼食時でも12時を回るとあっという間に座席が埋まる。サラダとパスタの簡単なメニューなら10ユーロ(約1650円)以下、プリミとセコンドをしっかりいただくメニューでも15ユーロしない。それでいて美味なのだから、人気があるのもうなずける。
■サーキットで働く人々の姿はこれまでにも何度か紹介してきたが、今回はピットレーンの人々を点描風に捉えてみた。ライダーやメカニック、エンジニアたちが安全かつ円滑にそれぞれの仕事を進めることができるよう、縁の下の力持ちとしてレースを裏側からしっかりと支えているのが彼らなのだ。
■ムジェロサーキットといえばテント観戦だ。ここの大きな特徴は、コースサイドの山肌にテントを張り、あるいはキャンパーを直接乗り付けて観戦できるというところ。まるで観客席と宿泊施設が一体となった状態で、朝、眠い目をこすりながら外に出ると目の前をバイクが走っているという、ある意味ではもっとも理想的な観戦スタイルだ。朝起きたらサーキット、ということは、つまり一晩中をここで過ごすわけで、バイクのエンジンをやたらかき鳴らし、盛大に花火をあげながら賑やかに金曜や土曜の夜を過ごす彼らのスタイルは、もはやグランプリ風物詩のひとつと化している。
■ついで、といっては語弊があるが、コースサイドで見かけたちょっと面白いものも紹介しておこう。テレビ観戦しているときに時折り見かけたり、あるいはマスメディアの報道からはすっぽり抜け落ちてしまってなかなか人の目に触れないけれども妙に感心してしまうもの等々。よくよく注意して見ていると、サーキットごとにそれぞれ特徴的なアイテムが転がっているものだ。
■金曜と土曜は不安定な天候もあって観客たちの出足も鈍りがちだったが、すっきりとした快晴に恵まれた決勝日は9万6000人を超す大観衆が押し寄せた。トスカーナ渓谷の小さな集落を目指して一度に数万人が押し寄せるのだから、レース前後に発生する渋滞の激しさたるや、説明するまでもないだろう。とはいっても、ここ数年で各観客席への効率的なアクセスロードが整備され、交通整備のコントロールも向上したために、以前のような激しい渋滞はかなり改善されている。数年前なら、午後9時を回ってもサーキットから出ていこうとするテールランプが延々と動かずに連なっている、なんていう風景が定番だったのだが、昨年あたりからはかなり円滑に流れるようになった。だが、レースの余韻を噛みしめながら家路へ向かう、祭りのあとにも似たちょっともの悲しい気持ちは、今も昔も変わらない。じゃあ、翌年のイタリアGPまでarrivederci(アリヴェデルチ:さようなら)!