メインストレート最終コーナー側の地下通路を抜けてグランドスタンド裏へ……。
■では、本格的に観戦エリアへ足を運んでみよう。欧州で開催されるグランプリの例に漏れず、サーキットのどこに目を向けても観戦客で混雑している。観客が多いということは、それを目当てにしたショップもたくさんある、というわけで、土産物や飲食店もいたるところで見かける。他国よりもツナギやTシャツを販売する店舗が多いように思えるが、ここはファッションの国フランスだから、と考えれば、それも納得できるような気がする。
■全周4.185kmのル・マンは全18会場の中でも小さいほうだが、それはあくまで競技用コースの話。敷地そのものは冒頭でも紹介したとおり、やたらと大きく、だだっ広い。だから、というわけでもないだろうが、サーキット内には観客用の様々な施設や設備が用意されている。ル・マン独特の施設や設備を、少しだけ紹介しておこう。
■欧州のサーキットを訪れるたびに感心するのは、観客層の幅広さだ。圧倒的な数の老若男女がごく当たり前のように観戦する姿を見るにつけ、ロードレースが彼らの生活と文化に深く根ざしている、という事実を今さらのように思い知らされる。大排気量のレーサーレプリカにまたがったツナギ姿のカップルがヘルメットを脱ぐと、白髪の老夫婦だった、などという例もここではごく当たり前で、いくらでも目にすることができる日常の風景なのだ。
■欧州のレースでは、日本人にはとても想像できないほどの数のバイクが続々とサーキットへやってくる。ということは以前にもお伝えしたが、バイク乗りの心理はどうやら万国共通のようだ。駐輪場に自分のマシンを停めると、時間の差こそあれ、たいていの者が他人のバイクを見て回るのだ。「へえ、なかなかいい趣味してるじゃないか」「オレも昔、このバイクに乗ってたんだよね」「いいバイクに乗ってるな」等々。この風景だけは、どの国に行っても変わらない。バイクっていいな、と思わせる瞬間だ。
■レース観戦のスタイルは国によって様々だが、キャンパーで乗り付けたり、コースサイドにテントを張ってアウトドアなレースウィークを楽しむスタイルは、欧州各地で共通して見られる風景だ。近年では日本でもキャンプ観戦が少しずつ増えているようだが、そうはいってもこちら欧州は気候も良ければ空気も乾燥している。野宿に最適な環境なのだ。キャンプ観戦の本格的紹介は次戦ムジェロに譲るとして、まずはそのさわりを簡単に紹介して今回の締めくくりとしよう。