入り口ゲート。高速鉄道TGVも停車する駅から車で15分。また、高速道路出口にも直結しているくらい、交通の利便性が良いサーキットなのだ。
■言わずと知れたレースの街、それが第5戦の舞台、ル・マンだ。「伝統の−」という枕詞とともに呼ばれることの多い街だが、地理的にはパリの南西250kmに位置し、居住人口も15万人、と決して大きな都市ではない。だが、毎年開催される四輪の24時間耐久レースや、それを題材に取ったスティーブ・マックィーンの映画『栄光のル・マン』等の影響で、街の名称は世界に広く知れわたっている。モータースポーツの盛んな都市というと、日本人の場合、まず鈴鹿市を連想するが、このル・マンと鈴鹿は姉妹都市の関係にある。また、地元サッカーチームのル・マンUCには昨シーズンまで日本人選手の松井大輔選手が所属していたこともあり、近年はサッカーファンの間でもその名前が浸透しつつあるようだ。ちなみに、松井選手は昨年のフランスGPの際、中野真矢たち日本人選手を激励に訪問している。
■どのレースでもホームグランプリを迎えるライダーは、地元ファンの期待に応えようといつも以上に気合いが入る。今回は、エルシーアール・ホンダ・モトGPのランディ・デ・ピュニエのホームグランプリだ。マシン、ツナギ、ヘルメットともに、国旗を模した青・白・赤のフレンチトリコロールのスペシャルデザインを施してレースに臨んだ。
とはいっても、フランスの観客たちはランディひとりを応援しているわけではない。MotoGPは世界を転戦する競技だけあって、選手たちの人気もユニバーサルだ。たとえば、公式タイムキーパーTISSOTの物販テントでは、06年王者ニッキー・ヘイデン限定モデルが販売されていた。観客たちは、そのデザインにほれぼれと見入っていた。
■ここで少しパドックやピットエリアを離れて、サービスロードに出てみることにしよう。サービスロード、とはサーキットに沿って設営されている作業移動用の道路で、どの会場でもそれぞれイン側とアウト側に、コースと並走してエスケープゾーンの向こう側を取り巻く形で設けられている。コースから最も近いエリアでもあるわけだが、ここへのアクセスは緊急車両やレース関係者の使用に限定され、観客の立ち入りは禁止されている。
■ところで、このサービスロードは数多くの関係者が各自の仕事にいそしむ「現場」でもある。マーシャルや医療スタッフはもちろん、ムービーを撮影するカメラマンや望遠レンズで一瞬の動きを捉えるフォトグラファー、あるいはマシンやライダーの挙動をチェックするチームスタッフなど、様々な人々が行き来する。ある意味では、グランプリの現場で働くプロの職人たちが行き交う目抜き通り、といってもいいかもしれない。