上海随一の観光地・外灘(The Bund)。西岸地区には旧租界時代の歴史的建築物がずらりと並ぶが、今や最も有名な存在は、東岸にある上海の代名詞的ランドマーク・東方明珠塔だ。
■MotoGPが開催される全18会場の中でも最も新しい設備が、上海国際サーキットだ。竣工は2004年。MotoGPのグランプリカレンダーに組み込まれたのは2005年からで、今年が4回目の開催となる。5月上旬の開催時期は、中国ではメーデー(五一国際労働節)と重なるため、ただでさえ混み合う上海市街は、休暇中で観光や買い物に訪れる人々で普段以上のにぎわいを見せる。特に今年は、北京オリンピックを目前に控えているためか、例年をしのぐ活気と勢いが街中にあふれていた。また、この時期は日本でもゴールデンウィークに相当することもあって、日本人観光客の姿を見かけることも珍しくない。MotoGP観戦ツアーや選手応援ツアーも精力的に催行されているようだ。
■今回、第4戦の舞台となる上海国際サーキットは、市内から約50kmほど離れた郊外に位置している。高速道路を走れば、約1時間程度もあれば到着するだろうか。
ここのコースレイアウトが、漢字の「上」という文字をイメージしてデザインされたのは有名な話だ。デザイナーはイスタンブールパーク(トルコ)やセパン・サーキット(マレーシア)も手がけた人物、ヘルマン・ティルケ氏。ロングストレートと超低速コーナーを組み合わせたコースデザインが彼の特徴だが、ここも例外ではない。最終コーナーを立ち上がり、長いながいメインストレートの先には、360度近く回り込む複合コーナーが待ち受けている。また、バックストレートは1202mと、全サーキットで1、2を争うほどの距離である。
■最新かつ近代的な設備を誇るサーキットだけあって、コースだけではなくピットボックスやパドックエリアも、十分な余裕を考慮して設計されている。見よ、この広さ。これだけの広大な面積は全18戦でも類がない。ゲート入り口に立つと、天候によってはメディカルセンターのある最奥部あたりがかすんで見えることもあるほどだ。端から端まで普通に歩くだけで、およそ5分を要する。だから、というわけでもないのかもしれないが、チーム関係者や選手たちが自転車に乗ってピットとチームスイートを往復する風景が、ここではごくあたりまえのように見受けられるのだ。
■広大なパドックの裏側には、各陣営のスタッフオフィスや選手の休憩場所などに利用されるチームスイートが、緑と水に囲まれて静かに並んでいる。外から見るかぎり、なんとも優雅で落ち着いた風情だが、それもそのはず。この区域は、明朝時代の庭園「豫園(ヨエン)」をモデルにして設計されたという。各建物にはそれぞれ、20平米から40平米程度の部屋が計四つあり、簡単なキッチンも備えられている。また、部屋の中は壁に埋め込まれたテレビモニターやブロードバンド回線など近代的なビジネスユーティリティが完備され、扉を閉ざせば静まりかえった環境でデスクワークに集中できるのだ。