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スーパーマシンVFR750R/RC30がベース
 RVF750が登場したての頃のベースモデルは、VFR750だった。しかし、Hondaは8耐の必勝マシンを作るために、限定1000台販売のスーパー市販車、VFR750R/RC30を1987年に市場に投入する。チタン合金製のコンロッド、クロモリ浸炭鋼製のカムシャフトを採用。レースで得た技術を投入した新設計のV4 DOHCエンジンである。シリンダー周りがきわめてコンパクトでマスの集中化を図っている。フレームも、異形5角形断面材を使用した、Honda独自の極太アルミ・ツインチューブ・バックボーンフレーム。さらには、アルミ製燃料タンク、FRP製のフェアリングを採用。17年も前でありながら販売価格が148万円もするまさにスーパーマシンである。
 
 最高出力は77PS/9,500rpm。このスーパーマシンをベースに開発された1990年型RVF750は、アルミのツインチューブフレームや片持ちのプロアームなどを新規投入。エンジンには360°クランクを採用し140PS以上のハイパワーを発生させた。ちなみに、同年代のグランプリバイクNSR500は150PS。スプリントマシンに迫るパワーを獲得していたのだ。
 
1990年 RVF750
 「しかもレブリミットが13,500rpmです。そこまで回して8時間を走り切れるマシンにすることを見越して市場に投入した、VFR750R/RC30というベースがあったから実現できたパフォーマンスだと僕は思います。さらに言えばRVF750は1990年、1991年のスプリントレース、全日本選手権でも活躍したマシンですから、その技術を8耐用のRVF750にも惜しみなく投入しているわけです。この頃の全日本選手権マシンは、四輪でいえばシルエットフォーミュラですよ。市販車のクランクケースとシリンダー、シリンダーヘッドを使っていればハイレベルなチューニングが可能な時代です。そうしたもの全部を投入して、8耐で勝つために作り上げたのが、ガードナーとドゥーハンが乗ったRVF750です」
 
 「このエンジンはとにかくすごい。前回お話したRS750もV型エンジンですから、圧倒的なトルクのある低回転域から高回転域までスムーズに回るんです。でもこの1991年のRVF750は、さらにもう2ランクぐらい上です。6,500とか7,000回転というレーシングバイクとしては低い回転域から、ビューっとトルクがしっかりのったまま、13,800回転ぐらいまで回っちゃう。何のストレスもなく。RS750では、11,000か12,000回転ぐらいまででした。でもRVF750は、13,800回転まで回ってもまだパワーが衰えず回ろうとしているんですよ。それを電気的なリミッターで止めている。耐久レースのためのマージンを確保するためです。今となっては不可能なことですが、電気的なリミッターがなければどこまで回るのか試したいぐらいです。そんな気持ちにさせるエンジンです」
 
 「つまるところRVF750は、Hondaが1980年代前半からいろいろなレースで蓄積していったテクノロジーの集大成ともいえるんです。しっかりとした高剛性フレーム、ものすごく品質の高いサスペンション。乗り手のマシンコントロールと、アクセル開度に対してしっかりとトラクションを生み出すリンクレシオが導きだされています。それと、限りなく高回転まで回ろうとするトルクフルなエンジン。そのすべてが見事にバランスした究極のマシンですね」
 
 「また、この頃からパーツやデザインの質も高くなっています。ライダーが跨がったときに見えるものがきちんと整理して並べられていたり、パーツの加工もきちんとしていた。ライダーに安心感を与える作り込みがなされていました。それとこのマシンに採用されていた、ベンチレーテッドディスクがよかった。ベンチュレーションが単に穴を開けたものではなく、微妙な形状のディンプルを彫り込んだものでした。とにかく効きがよくてコントローラブル。耐久レースでは天候の変化を考慮して鋳鉄製なのですが、この上はカーボンブレーキしかないんじゃないかと思いますね。そう言った品質の高さ、エンジンの面白さ、ハンドリングのキレのよさなどから、8耐マシンのなかで“どれか持って行っていい”と言われたら、このRVF750かRS1000か迷うところですね」
 
NSR500のタイムを上回ることもあった
 「現役だった頃の経験ですが、合同テストなどでちょっと油断していると、グランプリバイクのNSR500よりRVF750の方がタイムがよかったりしました。それくらい高いレベルにあったマシンなんですが、やはりすべてにおいて刺激的なNSR500に乗っていた現役ライダーの頃は、耐久マシンにいちいち感動などしていられませんでしたが…。しかし、約20年たった今、あらためて乗ってみてあまりのパフォーマンスの高さに驚いたというのが正直なところです」
 
 「このRVF750が活躍している頃から、8耐は耐久レースのなかでも世界的に注目される特別な存在となり、グランプリライダーがたくさん乗るようになったんです。グランプリライダーも、8耐でいいところを見せて自分の存在を強くアピールする。その相乗効果でどんどん盛り上がっていったんです」
 
 「1987年に世界チャンピオンとなったガードナーも、その前に8耐に出場し始めてから頭角を現しました。予選ですごいタイムを出したりして、自信を高めていったと思います。彼とペアを組んで8耐で優勝したドゥーハンも、その後世界チャンピオンの座に輝き続けます。そういう背景から8耐は、世界のトップライダーが過酷なスプリント耐久を闘う特別なレースになっていったんです」
 
宮城光の「鈴鹿8耐歴代ロードレーサーの鼓動」次回は2000年代の8耐マシン、Hondaの破竹の連勝を支えたVTR1000SPWをご紹介します。
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