日本の試乗会におけるコメント
(氏名五十音・敬称略)
青木 淳(ライディングスポーツ編集長)

 大興奮ですよ。アクセルが全開にできたのって一回だけでした。ちょっとずつ開けてってもどんどんスピードがのっていって、エンジンがピークまで回って、シフトアップする。勇気を奮って一回だけ全開したんですけど、いや、もう、異次元でしたね。フロントが浮く浮くって言うんですけど、浮かそうと思って開けると浮くので、浮かさないと思って開ければそんな極端には浮かないなと思いました。レースになるとわからないですけど。

 もうなんか、興奮しっぱなしで、こんな体験させてもらって本当にありがとうございます。一生の思い出としてとっておきます。リアサスが動いているのが僕にはすごい気になっていて、ふわふわする感じがするんですけど、ペースが上がったらどうかなと。高速コーナーでがんと開けられなかったので、高速でのコーナリングのためにああいうセッティングをしてるんだったらいいのかなと思いますが、ちょっと後ろが動きすぎるなと。

 カーボンブレーキの効きがすごくいいのと、エンブレがほとんど感じなくて、2ストロークみたいなエンブレの効き方です。レブリミッターがとんでもなくきれいに効いて、自分のスーパーバイクにも欲しかったなと思うくらい。あとはハンドリングがちょっと気に入らなかったかな。ロッシのマシンに乗ったんですが、彼と僕は合わないですね。同じマシンなら勝負できると思いますね。(笑)

青山 博一(全日本ライダー)

 ありがとうございました。今日初めて乗って、びっくりしましたね。足腰で乗ってないと、ハンドルにしがみついちゃうとすぐフロントが浮いてしまって、バイクの基本の動作ができてないとちゃんと乗れないんだなっていうのがわかりました。普段乗ってる250と比べて、車体のフィーリング、コーナリングのフィーリング的にはそんなに変わらないんですけれども、ストレートになって全開にしたときの感じは全然違いますね。速かったです。

柏 秀樹(二輪ジャーナリスト)

 ちょっと乗り慣れると、自分が前から乗っていたような、エンジンの扱いやすさと、ライディングポジションが、体の自由度も含めて、動きがすごく前後に移動できるんですよ。自由度が高いというのはライディングですごく重要なんです。不足を感じるところはありません。すごく扱いやすくて。あと驚いたのが、パワーバンドがものすごく広いんですね。自分がもう一速下げればよかったな、とか、もうひとつ上げとけばよかったな…とか関係なく、ライダーのちょっとしたミスなんかもカバーしてくれるくらい懐が深い。

 カーボンブレーキは初めてなので、最初食い込まないじゃないですか。そこのところはさすがにびびりましたけど、それ以外は、こんなラクして速くて、すごいんだなと。もうひとつ、とにかく乗っていて車体がコンパクトなんです。ポジションの自由度がある上でコンパクトなので、ホントにこれは990ccなの?と、不思議な感じでした。なんか4サイクルの500みたいな感じのコンパクトさを感じました。すばらしいです。こんなすばらしいマシンに乗せてもらって、感動の嵐です。

辻本 聡(元ロードレース・ライダー)

 今回初めてRC211Vに乗りましたが、今年のGPのシーンでも直線がとてつもなく速いということをよく見てました。一周目、出ていって、今までのHondaのバイクにないようなハンドリングとか、エンジンのパワーに関しては、鈴鹿のバックストレートで、500のときも6速で少しウィリーしたけど、RC211Vは本当にもう、バックストレートを全開でいくのも、うまく走らないと全開でいけないような、すごいパワー出てるよ、やっぱり。

 ハンドリングや旋回性も非常にいいし、もちろんミシュランタイヤとのコンビネーションもあるんでしょうけれども、非常にバランスの取れたバイクで、普通に走るにしても乗りやすい。ただ、あれをフルに使って走らせるのは、相当な人間の能力が必要になってくるなと思いました。マシンの進化に対して、人間がさらに進化していかなきゃいけない時代に来たな…と、そんな感じを受けました。

根本 健(ライダースクラブ誌)

 とにかくびっくりの連続で、すご過ぎちゃって、僕らなりにキャリアもあるし、2ストのNSR500だったら慣れればまあまあ乗れるし、もちろんレースライダーみたいには乗らないですけど、全開もまあ楽しめる感じですが、そんな余裕すら出ないくらい、この世のものとも思われないほどのすごいパワーで、パワーがあり過ぎて、速過ぎて、訳わかんなかったですね。

 ただびっくりしたのは、エンジンも1万回転を超えて、1万2,000〜1万4,000くらいのところでは、エンジンの回転が上がっている感じがしなかった。まるで単気筒で瞬間にスロットル開けたみたいな感じで加速していく。それでまたびっくり。そういうパワーが出ているのに、シャシーがグラッとも動かないとか、コーナーをすごく軽快に走るとか、まだ頭の中でシンクロできないまま終わっちゃいました。すごかったです。あれに乗ってるライダーはやっぱりすごい!すごいよ。

宮城 光(元GPライダー)

 今シーズンRC211Vに乗っていたMotoGPのライダーにあらためて敬意を払います。というのは、そのくらいマシンのパフォーマンスが高いです。僕が乗っていたかつてのNSR500、そしてこの近年の2ストロークの500に比べると、みんなも「すごい」という表現をするように、とにかくアクセルを開けないでも走っちゃう。今までのマシンというのは、きっちりとアクセルを全開にして初めて最高出力が出て、それなりのパフォーマンスが引き出せたんですけれども、今回のRC211Vに関しては、開ける前の特性もいいし、それで十分な感じでマシンが走ってしまう。

 2ストロークに比べて排気量が倍近くあること、2ストロークと4ストロークの爆発工程のことを考えても排気量が実際あるわけで、それプラス、上の回転マージンが2ストロークに比べれば1,000〜1,500回転ある。そこでのパワーというのはやはりすばらしいですよね。ユニットプロリンクも、映像で見ると結構サスペンションが動いてしっかりグリップしている感じがするけど、乗っているとさらにいい。コシもあるし、何がいいって、突き上げ感がない。例えば昔の2本サスっていうのは、フレームの一番後ろに応力を集中するところがあって、どんどんピッチが出ていた。それを解決したのが1本サスだった。それでも真ん中でどんどん車体を突き上げていた。RC211Vはもうウルトラスムーズですよね。

 特に鈴鹿でいえば、ヘアピンを立ち上がってからの右コーナーで、多少路面が荒れているところやダンロップの登りなど、ものすごいスムーズ。きっちりと調整された、いい高級乗用車に乗っているような感じですよね。コシがあって、しっかりと動いてくれて、それでいて自分が今どういう状況になっているか、路面からのインフォメーションもきちんと返ってくる。MotoGPマシンがこんなに進化しているということに対して僕はびっくりしました。11月19日は僕の誕生日だったんですが、最高の誕生日プレゼントをいただいたと思います。ありがとうございました。

宮崎 敬一郎(二輪ジャーナリスト)

 とにかく小さいっすね!。見た目のサイズだけじゃなく、走ってる時にも小さく感じます。ボクにとっては10数年ぶりの鈴鹿フルコースだったし、試乗する順番も一番はじめだったんでタイヤも冷えてたし、マジで緊張してスタートしましたが、すごく不思議ですね…乗りやすいんですよ。中回転域に相当する8,000〜9,000rpmといったところからでもギクシャクせずにパワーがついてくるし、車体がとても素直な反応をするもんだから、ビビって身体が“石”状態になってるのに何とかなっちゃう。

 その上のパワーバンド、1万2,000〜1万4,500回転でなんて、アクセルをぽんっと開けると何速ででもフロントが浮きそうな勢いで加速する。211Vの後に乗ったNSR500のパワーを“柔らかくて重い吹け…”なんて錯覚させるくらい、右手と連動したパワーが手に入る。これにもびっくり!もちろん、じっくりと丁寧に開ければそのとおりの力を出してくれるもんだから「扱えるつもり」にしてくれるんですけどね。

 それにトドメがあの足まわり!。小さく感じるけれどもしっかり接地してくれて、そこからいろんな制御がきくもんだから、よく曲がる気になるのかな。ビビリの入ってるボクなんて、中途半端なペースで、サスなんかにもぜんぜん荷重が掛かってないような走り方ですよ。もちろんパワーも中途半端に使ってんだけど、エンジンだけじゃなく、ハンドリングもギクシャクしない。振動もほとんど無くて、すごく乗りやすくて、不思議なキャラクターを持った世界最速・最強のレーサーなんですねぇ。

山田 純(二輪ジャーナリスト)

 端的に言って“すげえな”。何がすごいかって、確かに220馬力というそのパワーもだけれど、V5というレイアウトであれだけ振動がなく、スムーズにレブリミットまできれいに吹き上がるというのは異次元だね。ああいう体験はしたことない。だからどうやってあのバランスをうまくとっているのかというのにはすごく興味がある。同時に、あれだけ小さくて、コントロールというか、体に自由度が意外とちゃんとあって、フロントの接地感があるからすごく走りやすい。

 もちろんレーシングスピードじゃないので、そこから先はまた違うコントロールのし方があるんだろうけど、でも極端に言うとホントに普通のバイクのように乗れてしまう。これはすげえなと。さすがにNSRで今までやってきたのとまったく違う。車体もエンジンも、新しいバイクの造り方を模索して、それがすごくうまくいっているなという気がします。そういう意味でびっくりしました。

和歌山 利宏(元GPライダー)

 ホントにすごかった。基本的には乗りやすいんでしょうけれども、いかんせん220馬力以上出ているマシンというのは、やっぱり4速でまっすぐアクセルを開けばフロントは浮いてくるし、あれを使いこなすのはやっぱりすごいことだなというのを感じました。走りながらあらためてGPのレースシーンを思い浮かべたりしたんだけど、なんでこれをあんなにスムーズに乗れるのかと思うくらいすごかったですね。

 基本的にスムーズで乗りやすいということだと思うんですけど、あれだけパワーが出るマシンが、コーナーを減速して入っていく時にパッと軽さを感じさせて、小さく周ってくれるあたりはすごいなーと思ってね、もう、乗りながら感心しましたね。自分の座っているところがすごく前にあって、自分がマシンの重心に近いところにあって、振り回せる可能性を持ってるんだなということをなんとなく感じました。自分の感覚を使ってそこまで使いこなせるマシンなんだと感心したし、使わないと本物が出てこないんだ…と。

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