MotoGP現場レポート

Vol.230 - Rd.15 最終戦は中上、ブラドル、アレックス・マルケスがシングルフィニッシュ

大西洋に面したポルティマオ近郊のアルガルベ・インターナショナル・サーキットで、最終戦となる第15戦ポルトガルGPが11月22日に開催されました。ポルトガルGPが開催されるのは8年ぶり。初開催となったアルガルベは2017年からグランプリのリザーブサーキットでしたが、今年は新型コロナウイルスの感染拡大で最終戦の舞台となりました。

今年は4年連続6度のタイトルを獲得し、今季7度目のタイトル獲得を目指したマルク・マルケスが第2戦スペインGPの決勝で転倒、右腕上腕を骨折するケガをし、欠場が続きました。その代役としてテストライダーのステファン・ブラドルが11戦(出場12戦も1戦決勝をキャンセル)に出場し、シングルフィニッシュが2回という活躍。最終戦ポルトガルGPではベストリザルトの7位でフィニッシュしました。ルーキーのアレックス・マルケスも2度の表彰台に立つ活躍で大きな成長を遂げました。今大会は予選16番手という厳しいグリッドから追い上げを見せて9位でチェッカーを受けました。

そして、今季大きな成長を見せた中上貴晶(LCR Honda IDEMITSU)が、予選11番手から追い上げて5位でフィニッシュ。今季14戦を戦い、4位2回を最高位にシングルフィニッシュ9回という活躍でした。チームメートのカル・クラッチロー(LCR Honda CASTROL)は、6年間所属したチームと最後のレースになり、予選4番手から中盤まで上位を走りましたがリアタイヤの消耗に苦しんで13位でした。

MotoGPクラスでは今年タイトルを取ることはできませでした。厳しい一年となりましたが収穫の多いシーズンでもありました。そんなシーズンと最終戦をRepsol Honda Teamのアルベルト・プーチ監督が振り返ります。

初開催となったポルトガルGPの戦略を聞かせてください。

「このサーキットでレースをするのは初めてのことです。レースした経験がないサーキットで戦略を立てるのは難しいものです。レース中に風がどのように変わるのか、タイヤのパフォーマンスはどうなのかなど、分からないことがいくつもあるからです。明確な戦略がないときは、できる限り速く走るだけです。プラクティスセッションから、ほかのサーキットと比べてもタイヤに大きな問題がないことが分かりました。そのためタイヤテストには、それほど集中しなくてすみました。ステファン・ブラドルは2列目からのスタートだったので目標はトップグループについていくことでした。その通りに走って7位でフィニッシュしました。今シーズンのベストリザルトでした。

カル・クラッチローもトップグループについていくアイディアがありました。しかしレース終盤までそれを継続できませんでした。中上貴晶とアレックス・マルケスはレースを通して前のライダーたちを追い、2人ともトップ10でフィニッシュしました」

今大会のポジティブポイント、そしてネガティブポイントがあれば、それも教えてください。

「ポジティブなことは、Hondaのライダー全員が完走したことです。みんな無事にレースを終え、そして健康な状態で冬休みに入ります。全員、とても戦闘的なレベルを見せ、テストライダーのブラドルは7位を獲得しました。いい終わり方になりましたが、新たなスターティングポイントとも言えます。シーズンを通してマシンを改善することができました。そして新しいシーズンが始まります。今年は私たちのトップライダーが不在だったため、簡単ではありませんでした。それでも残ったライダーたちとテストライダーでマシンを改善することができました。もちろんチームも一生懸命取り組みました。みんなの努力を称えたいです。難しい年でしたが、マシンを改善することができました。

2020年のネガティブなことは、マルク・マルケスがいなかったことです。来シーズンには彼が回復することを願っています。カル(クラッチロー)はアップダウンのある年でした。あまり運がありませんでした。彼のポテンシャルは分かっています。彼が速いことは分かっています。今後の幸運を祈っています。

ほかの2人のライダーは若いです。タカ(中上)は大きく前進しました。来年は進歩したマシンで上位争いをすることでしょう。アレックスも最高のシーズンにまとめました。序盤は、Honda以外のひとは彼の力を信じていませんでした。しかし突然フランスとアラゴンで表彰台を獲得しました。そして2回目のアラゴンのレースでも戦いました。初めてのシーズンで2度表彰台に上がりました。一度はドライコンディションでした。これは最高峰クラスではとてもいいことです。彼がこのクラスへの適応力と彼のパフォーマンスは期待以上でした。

Moto3クラスでは小椋藍がベストを尽くしました。彼はMoto3クラスのチャンピオンシップで3位を獲得しました。彼は2015年にアジア・タレント・カップでHondaとの仕事を始めました。そして今日、Hondaのマシンでチャンピオンシップ3位を獲得しました。彼はいい仕事をしましたし、Moto3クラスのコンストラクターズチャンピオンシップの優勝に貢献してくれました」

レース中、ピットウォールから見ていた感想は?

「とても興味深いレースでした。タカ(中上)は追い上げていき、ステファンはバトルをしていて、アレックスも追い上げていました。すべてのライダーが接近戦を繰り広げていておもしろいレースでした。チェックすることがいろいろありました。ピットからだけではなく、テレビで見てもいいレースでした」

インサイドストーリーがあれば、それを教えてください。


「私たちやライバルたち、そしてオーガナイザーにとってとても難しいシーズンでした。チャンピオンシップを進めていくために見せた、主催者であるドルナ・スポーツの努力、勇気そして彼らの決断力をHondaとして称えたいと思います。チームマネージャーとして個人的にはHRCの日本人スタッフに感謝したいと思います。日本の家族から離れて約6カ月仕事に取り組んでくれました。多くの苦難へ立ち向かう姿、勇気、そして仕事への情熱を見せてくれました。日本の戦士であることを証明しました。この状況に対応してくれた彼らに感謝したいです。大きな拍手で称えたいです」

今年のMotoGPクラスは7月の第2戦スペインGPで開幕し、11月の最終戦ポルトガルGPまで、5カ月間で14レースというハードスケジュールとなりました。Moto2クラスとMoto3クラスは3月の開幕戦カタールGPを戦い、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で約4カ月間の休止期間を経て、7月から再開したシーズンに挑みました。

Moto3クラスは、最終戦までライダーズタイトル争いを繰り広げ、トニ・アルボリーノ(Rivacold Snipers Team)が総合2位、小椋藍(Honda Team Asia)が同ポイントで総合3位という結果を残しました。ライダーズタイトルは獲得できませんでしたが、4年連続20回目のコンストラクターズタイトルを獲得しました。

来季のMotoGPクラスは、再び、3冠を目指し、Moto3クラスは、ライダーズタイトルの奪還に挑みます。

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