Testingセパン公式テスト
MotoGP
2019年2月6日(水)-8日(金)
セパン・インターナショナル・サーキット
2019年のシーズン幕開けを告げる公式テストが、2月6日から8日までの3日間、マレーシア・セパンで行われました。12月1日から1月31日までは、レギュラーライダーのテストが禁止されるルールがあり、解禁日の2月1日から3日までの3日間、各陣営はテストライダーと、コンセッションルールで参加が認められているメーカーのレギュラーライダーが参加して合同テストが行われました。Hondaは、このテストにステファン・ブラドル(HRC)が参加、2019年型RC213Vなどの確認テストや新たな開発テストに取り組み、6日から始まる公式テストの準備を進めました。
今年は、開幕戦カタールGPに向けて、2回の公式テストが行われます。今回のセパンと2月下旬(23日~25日)のカタール・ロサイルです。年明けのテストとしては、例年より1回少ない2回6日間となったために、チーム、選手たちはミスのないよう、確実にテストメニューを消化しました。
今季初テストに参加したHondaのレギュラーライダーは、Repsol Honda Teamのマルク・マルケス、LCR Honda CASTROLのカル・クラッチローと中上貴晶(LCR Honda IDEMITSU)の3人で、今季からRepsol Honda Teamに加入したホルヘ・ロレンソは、トレーニング中のケガのために今回のテスト参加を見送りました。
今年のセパンは、連日、青空が広がりました。最高気温は連日33℃を記録。路面温度も日中は60℃前後と厳しいコンディションが続きました。今年は3日間を通じて一度も雨が降ることがなく、3選手ともにドライコンディションで着実にメニューを消化しました。
今年は、2016年に共通化されたエンジン・コントロール・ユニット(ECU)、ミシュランタイヤの1社供給体制となって4年目のシーズンを迎えます。これまでは、マシン作りに大きな影響を及ぼすこの二つの変更点を確認しながらマシンの開発テスト、調整が行われてきました。しかし、4年目となる今年は、各陣営ともに多くのデータを蓄積、シーズン初テストとは思えないレベルの高い走行となりました。
その厳しい戦いの中で、4年連続で最高峰クラスのライダーズタイトルと3年連続三冠を目指すHondaは、昨年11月の最終戦バレンシアGP後に行われたバレンシアとヘレスの公式テストのデータをもとにつくりあげた2019年型RC213Vをサーキットに持ち込みました。すでに、昨年の段階でエンジンスペックもほぼ固まっていることから、さまざまなテストに取り組みました。
13年に史上最年少記録で世界チャンピオンに輝き、14年にシーズン史上最多優勝記録で二連覇を達成、15年はタイトルを逃すも、16年、17年、18年とタイトルを獲得したマルケスは、今年は4年連続6回目のタイトル獲得を目指します。
マルケスは昨年12月上旬に脱臼癖のついた左肩の手術を行いました。4時間かかった手術は成功し、これまで抱えていた左肩の不安感解消に大きく前進しました。手術を終えた左肩は、6週間は安静にしなければなりませんでしたが、その間もマルケスは一日5時間のフィジカルトレーニングに励み、開幕初テストの準備を怠りませんでした。
マルケスは、テスト開始の1週間前にHonda NSF100でテスト走行を行いました。しかし、まだ完全ではないことを感じたため、今回のテストの最大の目的は、2019年型RC213Vの変更点をしっかり確認し、3日間のテストを完走することでした。そのため、左肩になるべく負担をかけないようにスムーズなライディングを心がけ、一日平均35周、3日間で105周をこなしました。
その3日間でマルケスは2019年型RC213Vの高いポテンシャルを感じることになります。初日の走行では、1分59秒621をマークして全体のトップタイムをマーク。新型マシンの開発の方向性が正しかったことを確認すると、2日目、3日目は、マシンのセットアップとニューパーツの確認テストに集中しました。最終的なベストタイムは1分59秒170で総合11番手ですが、転倒もなく、大きな成果を得ることに成功しました。マルケスは、次回のカタールテスト、そして開幕戦カタールGPと走りのレベルを上げていく意気込みです。
LCR Honda CASTROLに移籍して5年目のシーズンを迎えるクラッチローは、マルケス、ロレンソとともにHRCのサポートを受ける契約選手で、マルケス同様、2019年型RC213Vのテストに取り組みました。クラッチローも昨年10月のオーストラリアGPで右足首を負傷しています。以来、治療とリハビリのために111日間、サーキット走行から離れましたが、着実にタイムを更新、約3カ月半ぶりに乗るRC213Vのライディングを楽しみました。
クラッチローは、初日は足の状態を確認をしながらのスロースタートとなりましたが、2日目に1分59秒566、3日目に1分58秒780と自己ベストタイムをマーク。165周を消化し、総合6番手で初テストを終えました。クラッチローも、マルケス同様、次回のカタールテスト、開幕戦カタールGPと体調を整えていくことになります。
クラッチローのチームメートでMotoGP2年目のシーズンを迎える中上貴晶は、初日2分00秒台でスタートすると、2日目には自己ベストとなる1分59秒966、3日目にはさらにタイムを更新し、1分59秒148の好タイムをマーク、総合9番手で今季初テストを終了しました。
昨年は、目標とする「ルーキー・オブ・ザ・イヤー」を獲得できませんでしたが、シーズン最終戦のバレンシアGPではベストリザルトとなる6位でフィニッシュ。11月のスペイン・ヘレスの公式テストでは初めてトップタイムをマークするなど大きな成長をアピールしました。今年の公式テストの目標は、昨年のチャンピオンマシンRC213Vのセットアップに集中し、常にトップ10に入ることでした。今年はさらにタイムが接近する厳しい戦いとなっていますが、初日7番手、2日目10番手、3日目9番手とトップ入りの目標を達成、幸先のよいシーズンのスタートとなりました。
マシンの開発ライダーのブラドルは、3日間で177周。ベストタイムは1分59秒368と、レベルの高い走りでマシン開発に取り組みました。昨年は代役とワイルドカードで5戦に出場、9位を最高位に総合24位という結果を残しました。今季もマシン開発の重責を担い、スーパーサブとしての活躍が期待されます。
2019年シーズン、Hondaは最高峰クラスで21回目のライダースタイトル、25回目のコンストラクターズタイトルを目指します。次回のテストは2月23日から25日までの3日間、開幕戦の舞台となるカタールのロサイル・インターナショナル・サーキットで行われます。
カル・クラッチロー(総合6位、1分58秒780)
1日目(14位、2分00秒681)
「久しぶりのライディングとなりましたが、フィーリングは悪くありませんでした。正直、今日は難しい一日になると思っていましたが、思っていたより気持ちよく乗れて驚きました。確かに、走り出しはちょっと不思議な感じでした。自分の感覚では、きっと2分01秒台くらいかなと思っていたら、2分08秒台のタイムだったりしました。そのため今日はプッシュしませんでした。久しぶりだったので、とにかくマシンの感覚を取り戻すことに集中しました。最初は2018年型で走り始めて19年型にスイッチしました。今日はチームがすばらしい仕事をしてくれました。みんな僕の情報に真剣に耳を傾けてくれました。チームとHRCのスタッフとこうして仕事を再開できたことが本当にうれしいです。あと2日、しっかり感覚を取り戻したいです」
2日目(5位、1分59秒566)
「今日は2019年型RC213Vで一日走行しました。2台のマシンを使い、いいリズムでテストを行いました。昨日よりはるかに快適に乗ることができました。今回のテストに向けてしっかり準備をしてくれたHRCに感謝したいです。手術をした右足首の状態はそれほど悪くありません。1日の終わりにはさすがに痛みがあり、かなりのむくみがありますが、バイクのフィーリングはよく、いいテストができました。今日は、コースに出た最初の周回に5コーナーで軽い転倒をしました。なぜ転んだのか分かりませんが、ケガがなくてよかったです。明日の最終日が楽しみです。セッティングをさらに集中したいです。そしてシーズンのスタートに向けて必要なインフォメーションを得られるようにがんばりたいです」
3日目(6位、1分58秒780)
「テストが順調に進んだことはもちろんですが、こういう結果で終われて、とてもうれしいです。今日は右足首に痛みがあり、かなりむくみましたが、走っているときは痛みはそれほど感じず、状態も悪くありませんでした。今日はいくつかのニューパーツを試すなど、テスト項目を消化する一日でしたが、ペースは悪くありませんでした。ユーズドタイヤでも気持ちよく乗れたし、全体的な仕上がりも悪くありません。午前中のコンディションのいいときにほとんどの選手がアタックしました。僕もアタックしましたが、転倒してタイム更新のチャンスを逃しました。完全に僕のミスです。そのときはテストタイヤのソフトを使っていました。転ばなければ、あと0.6秒は速く走れたと思います。2019年型RC213Vは、明らかによくなっています。今はまだ足首が完全ではないので、スムーズに乗るように心がけています。今回のテストではフロントに課題を残しましたが、3日間を通じていい内容だったと思います。いいシーズンになると確信しています。次のカタールテストが楽しみです」
中上貴晶(総合9位、1分59秒148)
1日目(7位、2分00秒158)
「約2カ月ぶりのMotoGPマシンでの走行なので、フィーリングを取り戻すのに少し時間がかかりました。しかし、徐々にフィーリングはよくなり、リズムある走りができるようになりました。今日はブレーキングの安定性に取り組みました。まだ、昨年最後のスペイン・ヘレスのような感じではないので、引き続き、セットアップに取り組みます。この冬は、新しいシーズンに備え、多くのトレーニングをこなしました。残り2日、しっかいバイクを仕上げたいです」
2日目(10位、1分59秒966)
「今日も目標とする10番手以内で終えることができました。昨日はブレーキングの安定性に苦しみましたが、今日はリアを中心に車体のセッティングに取り組み、改善することができました。その結果、コーナーの立ち上がりでリアのトラクションが多少うすくなるという状況が生まれましたが、明日は、その部分の改善に取り組みたいです。今日は気温も路面温度も高く、とても厳しいコンディションでしたが、テスト終盤の時間帯に1分59秒台に入れることができました。通常、夕方になると気温も路面温度も下がるのですが、そういう状況の中でベストタイムを更新し、2分00秒台で連続ラップを刻めたことは大きな収穫でした。それが2日目の目標の一つだったので、達成できてよかったです」
3日目(9位、1分59秒148)
「この3日間は気温も路面温度も高く、厳しいコンディションとなりました。セパンは、シーズンを通してフィジカル面でもっとも厳しいサーキットですが、今回のテストは、改めてそれを実感することになりました。今回のテストの目標の一つは、トップ10で終えることでした。それを3日間通じて達成することができました。今日はほとんどの選手が午前中の早い時間にアタックしましたが、僕はほかのテストメニューもあり、ちょっとタイミングが遅れてしまいました。そのため気温も路面温度も上がり始めたときにアタックしなければなりませんでした。加えて、アタックした周回にミスも犯しました。もし、一周をうまくまとめられれば1分58秒台はいけたと思います。いずれにしても今日は限界を探る走りができました。ユーズドタイヤでも59秒台、マレーシアGPのレース周回数となる20周を越えたタイヤでも2分00秒台で走ることができました。トップとのタイム差は0.9秒ありますが、ベストタイムも連続ラップのアベレージも、今日は高いレベルで周回できたことで大きな自信になりました。次のテストではトップ5、6を目指し、さらに前進したいと思います」
マルク・マルケス(総合11位、1分59秒170)
1日目(1位、1分59秒621)
「長い冬休みを終えて再びマシンに乗ることができてとてもうれしいです。正直、今日はもっといい走りができるんじゃないかと思っていました。しかし、手術をした左肩は完調にはほど遠く、パワーもありませんでした。1周か2周なら大丈夫なのですが、力不足をカバーするためにライディングスタイルを変えなければなりませんでした。今日は残り2日間のテストに向けて体力を温存するため早めに切り上げました。今回のテストは、本当にたくさんのメニューがありますが、今日は最も重要なテストを行えたのでよかったです。あと2日、テストメニューをしっかりこなしたいです」
2日目(8位、1分59秒790)
「今日もいくつか重要なテストに取り組み、貴重なデータを得ることに成功しました。今日は、走り始めのフィーリングはよかったのですが、肩の痛みが少しひどくなったので、予定より早めに切り上げることにしました。まだ思い通りの走りができていません。特にブレーキングは、いつものようなハードブレーキングが全くできません。そのため、コーナー出口のフィーリング改善に取り組んでいますが、このサーキットは、気温も路面温度も高く、時々グリップが大きく変わることがあり、とてもシビアな感じでした」
3日目(11位、1分59秒170)
「とてもポジティブな1日でした。昨日はかなり体調が悪く、最終日を走れるだろうかと不安になりましたが、一晩寝たら状態はよくなっていました、そのため、今日は本当に多くのことを試すことができました。マシンは、とてもいい感触です。快適でとても安定しています。3日間ともに周回数はそれほど多くはありませんでしたが、予定していたメニューはすべて消化しました。もちろんもっと走りたいですが、今はまだ我慢しなければなりません。今回は左肩の力不足をカバーするために、いつものライディングスタイルではありませんでした。それでも楽しく走ることができたのはよかったです。転倒もしませんでした。Repsol Honda Teamのために最も重要なテストをこなせたことがうれしいです。次のカタールテストでは、もう少し肩の状態もよくなっていると思うので、とても楽しみです」
順位 | No. | ライダー | マシン | タイム/差 |
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1 | 9 | D.ペトルッチ | ドゥカティ | 1:58.239 |
2 | 63 | F.バニャイア | ドゥカティ | +0.063 |
3 | 43 | J.ミラー | ドゥカティ | +0.127 |
4 | 4 | A.ドヴィツィオーゾ | ドゥカティ | +0.299 |
5 | 12 | M.ビニャーレス | ヤマハ | +0.405 |
6 | 35 | カル・クラッチロー | ![]() | +0.541 |
7 | 41 | A.エスパルガロ | アプリリア | +0.783 |
8 | 21 | F.モルビデリ | ヤマハ | +0.902 |
9 | 30 | 中上貴晶 | ![]() | +0.909 |
10 | 46 | V.ロッシ | ヤマハ | +0.916 |
11 | 93 | マルク・マルケス | ![]() | +0.931 |
12 | 42 | A.リンス | スズキ | +0.941 |
13 | 6 | ステファン・ブラドル | ![]() | +1.129 |
14 | 53 | T.ラバト | ドゥカティ | +1.246 |
15 | 36 | J.ミル | スズキ | +1.247 |
16 | 20 | F.クアルタラロ | ヤマハ | +1.258 |
17 | 5 | J.ザルコ | KTM | +1.401 |
18 | 44 | P.エスパルガロ | KTM | +1.512 |
19 | 88 | M.オリベイラ | KTM | +1.710 |
20 | 17 | K.アブラハム | ドゥカティ | +2.139 |
21 | 29 | A.イアンノーネ | アプリリア | +2.271 |
22 | 66 | M.カリオ | KTM | +2.284 |
23 | 55 | H.シャーリン | KTM | +2.527 |
24 | 31 | Yamaha Test 1 | ヤマハ | +2.726 |
25 | 50 | S.ギュントーリ | スズキ | +2.751 |
26 | 38 | B.スミス | アプリリア | +2.756 |
27 | 32 | Yamaha Test 2 | ヤマハ | +3.004 |
28 | 85 | 津田拓也 | スズキ | +5.037 |