SPOTLIGHT -中上貴晶-
記事提供:ライディングスポーツ
Racing Diary
Vol.032018.10.16

第9戦ドイツGPから第13戦サンマリノGP、鈴鹿8耐への参戦を含め怒とうの数カ月となった中盤戦の戦いを振り返る

中上貴晶

前半戦最後の第9戦ドイツGPでは、いいフィーリングを見つけるも無念の転倒
第11戦オーストリアGPでは5戦ぶりにポイント獲得を果たした

シーズン前半戦最後のレースとなった第9戦ドイツGPから鈴鹿8耐へ。そして、後半戦のスタートとなったチェコGP、オーストリアGPと連戦が続きました。思えば、8耐の事前テストから日本とヨーロッパの往復が始まっていたし、ここの数カ月はほぼ休みなしでしたね。レースが終わるたびに「疲れはないですか?」と聞かれていたのですが、次々にスケジュールが埋まっているので、疲れているのも分からない感じでした。

この間の成績を振り返ってみれば、第9戦ドイツGPは転倒リタイア。鈴鹿8耐は予選2番手、決勝2位。第10戦チェコGPは17位。オーストリアGPは15位でポイントを獲得しました。

ドイツGPは、来年からHonda入りするロレンソと自分の走りが似ているということで、ロレンソ向けのセッティングにトライすることになり、ホイールベースを伸ばし、車高を上げて走りました。傾向としては、高速コーナーとブレーキングで安定性が出るというもので、ザクセンリンクの後半セクションではかなりいい走りができました。対照的にタイトなコーナーでは旋回性に課題が出るのですが、初日のフリー走行で7番手。2日目のフリー走行ではタイムを出せずQ1からになりましたが、Q1で2番手となり、今季3回目のQ2進出となり、ベストタイの12番グリッドから決勝に挑むことになりました。

決勝もいいフィーリングでザルコに付いて走っていました。マシンのキャラの違いなどからお互いに速いポイントは違いましたが、付いていければ確実にトップ10はいける感じでした。しかし、最終コーナーの進入で入りすぎて転んでしまいました。シーズン前半締めくくりのレースとしては、いいベースのセッティングは見つけられたけれど結果を残せないという、うれしくも悔しい結果でした。

中上貴晶

そして鈴鹿8耐へと向かいました。優勝こそ果たせませんでしたが、2位表彰台に立つことができました。初めて経験するワークスチームでの8耐。本当にいろいろなことが勉強になったし、自分のライディングの幅を広げるという点でも、とてもいい経験になりました。

そのあとのブルノは、ドイツGPのあとに1日だけ事前テストをしていて、ドイツGPでよかったセットと、事前テストのベースをミックスしたような状態で挑みました。鈴鹿8耐と同じくらい暑かったブルノですが、決勝日はやや気温も路面温度も下がりました。本来ならタイヤにも条件はよく、ペースも上がるはずでしたが、最後まで苦労するレースとなり、フラストレーションがたまりましたね。

そして、連戦最後第11戦オーストリアGPは、金曜日の午後と土曜日の午前中に久しぶりに雨が降りました。レインタイヤで走るのは第2戦アルゼンチンGP以来でしたが、しっかり走り込めていいスタートが切れました。2日目の予選では遅いところがはっきりして、それをいかに解消するかが課題で、予選16番手。決勝はスタートも決まり、前半はビニャーレスをマーク。離されてからもまずまずのペースで走ることができて、第5戦フランスGP以来となる今季5回目のポイント獲得。久しぶりにいいレースができたと思います。

中上貴晶

得意とするシルバーストーンでの第12戦イギリスGPは雨により中止に
第13戦サンマリノGPでは追い上げのレースで13位に入賞した

この夏は、鈴鹿8耐参戦とそのテスト、MotoGPもレースとテストなどで、11週連続で仕事をすることになりました。その11週目が第12戦イギリスGPとなったのですが、決勝レースは雨の影響で中止になりました。

今年は路面の改修が行われ、どんなコンディションになったか楽しみにしていました。しかし、木曜日にコースの下見をすると、相変わらずバンピーなままという印象で、実際に走ってみたら、グリップは上がっている感じだけど、バンピーな路面は変わらず、昨年よりひどくなっているように感じました。

不安定な天候が続いていたイギリスGPですが、土曜日の午後は本格的な雨になりました。雨が降ると極端に水はけが悪く、アクアプレーニング現象で多重クラッシュが発生、ティトが大ケガをしました。翌日の決勝日も、朝のウォームアップはドライで走れたのですが、決勝レースは雨でフルウエット。グリッドに着くためのサイティングラップでだんだん降りが強くなり、何人かがオーバーランしたり危ない状況になりました。スタートはディレイ、最終的に中止になりました。

今まで、天候悪化のために赤旗中断やレース周回数を短縮したりというのは何度も経験してきましたが、全クラスがキャンセルになるというのは初めてのことでした。

中上貴晶

シルバーストーンはMoto2時代に優勝しているし、これまで何度も表彰台に立ってきた得意なコースです。また、カルのホームレースなので、チームにとっても特別なレースでした。2人ともいい結果を出せたらと、気合が入っていただけに本当に残念でした。

決勝を楽しみにしていた方々には本当に申し訳ない気持ちでした。もちろん、ライダー全員がレースをしたかったと思います。しかし、コンディションが回復せず、セーフティコミッションに出席したMotoGPライダー全員が中止に賛成したし、安全を優先した決定は正しかったと思います。皆さんにも理解してほしいという気持ちでした。

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第13戦サンマリノGPは青空が広がる中で行われました。ミサノは8月下旬に事前テストも行い、準備はできていたのですが、テストのときに比べて気温も路面温度も低く、さらに金曜日の夜から土曜日の朝まで降り続けた雨の影響で、路面コンディションがすっかり変わっていました。セットアップが難しいレースとなりましたが、チームのすばらしいサポートで、決勝はタイヤの選択もよくて13位まで追い上げることができました。

ミサノは自分にとっては本当に特別なレースです。13位というリザルトには納得していませんが、スタートからプッシュし続け、最後までミスすることなく走りきることができたし、3点を獲得しました。カルも表彰台に立ったし、ホームグランプリを迎えたチームにとっては、すばらしい結果になったと思います。

中上貴晶

イギリスGPのあとは、やっと1週間の休みを取れました。とはいっても毎日バルセロナでトレーニング。また、イギリスGPの前には、マルクのダートトラックの練習に参加させてもらい、いろいろ勉強になり、刺激にもなりました。

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