SPOTLIGHT -中上貴晶-
記事提供:ライディングスポーツ
Racing Diary
Vol.012018.10.09

初陣となった開幕戦カタールGPこそノーポイントに終わるも、
第2戦から第4戦スペインGPまで3戦連続入賞を果たす

中上貴晶

トラブルに悩まされた開幕戦カタールGP
第2戦アルゼンチンGPでは24番グリッドから追い上げのレースで見事、初入賞を果たす

カタールは17位でノーポイントでしたが、アルゼンチンは13位でフィニッシュして初ポイントを獲得しました。今シーズンの目標は表彰台獲得、ルーキー・オブ・ザ・イヤー獲得です。ウインターテストを終えたときの最初の目標は、トップ10フィニッシュだったので、その目標には届きませんでしたが、テストでは学べないことをたくさん経験できました。

今年は自分にとって初めてのMotoGPクラスを戦うシーズン。どのライダーもポテンシャルが高く、その中でポジションを上げていくのは楽ではありません。でもHonda RC213Vはすばらしいパッケージで、加えて、Moto2時代からサポートしてくれている出光というすばらしいスポンサーがついています。今年はその期待にこたえたいという想いで各レースに取り組んできました。序盤の2戦では、自分がしなくてはいけないことがウインターテスト以上に明確になりましたし、克服していくべき課題が見つかりました。

中上貴晶

今、振り返れば、マレーシア、タイ、そしてカタールでのテストは、思っていた以上にレースペースは力強かったと思います。課題は、コーナー出口でマシンを素早く起こすこと。Moto2時代と違い、マシンを寝かせている時間を極力短くしてエンジンのパフォーマンスを活かさなくてはいけません。徐々に改善していますが、まだまだRC213Vのパフォーマンスを活かしきれていませんでした。

変則スケジュールのカタールGPでは、フリー走行は明るい時間に走ることが多く、予選、決勝はナイトセッションになりました。そのためコンディションが大きく変わるので、セットアップがとても難しかったです。予選方式もQ1、Q2とMoto2時代にはないやり方で、タイヤをどう回していくのか、といったことにも気を遣わなければなりません。そういう状況の中で、予選前のフリー走行で転倒してしまい、そのため2号車で予選を戦わなくてはなりませんでした。

このとき、2号車のホイールセンサーに少し不具合があり、電子制御に影響したこともあって、23番グリッドからのスタートになりました。決勝ではこの問題は解消しましたが、序盤はフルタンクのフィーリングをうまくつかめずにペースが上がらず。タンクが軽くなってきた中盤以降はリズムもよくなり、最終的に17位でフィニッシュできました。

第2戦アルゼンチンは、毎年、金曜日は汚れているスリッピーな路面に苦戦します。さらに土曜日、日曜日と不安定な天候が続き、翻ろうさせられました。決勝はレインタイヤでグリッドに着きましたが、ほとんどの選手がスリックタイヤのマシンに乗り替えることになりピットへ。スタートの混乱を避けるためにレースはディレイになり、全員がスリックでグリッドにつきました。スリックで走れたのは初日のフリー走行だけ。未知数の部分が多く不安もありましたが、24番グリッドからいいペースをキープして13位でフィニッシュ。また一歩前進できたレースだったと思います。第2戦ではチームメートのカルが優勝しました。僕もポイントを獲得したし、チームにとっては、すばらしい結果になったと思います。

中上貴晶

第3戦アメリカズGPではマシンの攻略を進め、
第4戦スペインGPではタイヤの習熟がさらに深まった

第2戦アルゼンチンGPで13位になり初ポイントを獲得。続く第3戦アメリカズGPで14位、ヨーロッパラウンドに入った第4戦スペインGPでは12位になり、3戦連続でポイントを獲得することができました。『MotoGPクラスで、まずはトップ10』という目標を達成できていないので数字的にはまだ満足していませんでしたが、RC213Vのパフォーマンスを引き出すという点では、また一歩前進できたレースだったと思います。

特にアメリカズGPは、フリー走行、予選と攻める走りができました。初日の1回目のフリー走行ではベストポジションとなる7番手スタート。午後2回目のセッションでは、トップ10を狙ったのですがフロントから転倒してしまい、接戦の中で17番手までポジションダウン。『たられば』ですけども、もし転倒がなければ、ダイレクトでQ2進出のトップ10に入れたんじゃないかと思います。

17番手なので11番手以下のQ1から走ることになりましたが、ポル(エスパロガロ)と(ダニロ)ペトルッチに続いて3番手。ペトルッチと0.2秒差でQ2進出を逃しました。それでもMotoGPに参戦してからウインターテストも含めて久しぶりに攻める走りができたと思うし、今季ベストグリッド(第3戦アメリカズGP時点)の13番手から、決勝ではグリッドのアドバンテージを活かしたいと思っていました。

中上貴晶

ところがスタートした1コーナーの混乱の中で接触を避けるためにポジションを落とし、加えて、フロントに選択したミディアムコンパウンドのフィーリングがよくなくて、序盤にペースを上げられませんでした。これはまずいなと思いながら、ライディングスタイルを変えたりして試行錯誤。リアをグリップさせない走りに変えていったらペースが安定してきて、ポジションも上げることができました。

結果は14位。シングルでフィニッシュできるポテンシャル、パフォーマンスがあっただけに悔しかったですが、RC213Vの攻略という点では、手応えあるレースとなりました。

中上貴晶

そしてヨーロッパラウンドの最初のレース、スペインGPでは12位。そこまででベストリザルトでしたが、内容的には納得のいくものではありませんでした。MotoGPクラスを戦うようになってからの課題は、スタートしてからの序盤のペースの遅さ。この大会でも序盤に思うようにペースを上げられず、それがリザルトに影響しました。中盤以降のレースペースが悪くなかっただけに本当に残念でしたね。序盤、しっかり走れていればトップ10フィニッシュはすぐにでも可能だったと思います。

一方、予選ではソフトタイヤのパフォーマンスを今まで以上に引き出すことができたのは大きな成果でした。ミシュランのリアタイヤのグリップはすごくよくて、ソフトを入れると前後のバランスを取るのがとても難しく、それが非常に重要になります。スペインGP予選では、アタックのときに前後にソフトを入れたことでいいバランスを見つけられました。

中上貴晶

アメリカ、スペインと、トップ10は達成できませんでしたが、着実に前進していると実感できたレースでした。スペインGPの翌日に行われたテストでは、エアロダイナミクスを中心にフランスGPの行われるル・マン対策のテストをして大きな成果がありました。

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