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2016.11.10 ロードレース世界選手権 最終戦 バレンシア バレンシアGP プレビュー

バレンシアGP プレビュー

MotoGP レポート

2016年シーズンの最終戦となる最終戦バレンシアGPが、11月11日(金)〜13日(日)の3日間、バレンシア・サーキットで開催されます。バレンシアGPは1999年に第1回大会が行われ、2002年からは最終戦の舞台として定着し、今年で18回目を迎えます。バレンシアGPは、シーズンで最も観客が集まる大会の一つ。今年も3日間で20万人を超える大観衆が集まることが予想されます。

このサーキットは、一周が4.005kmのテクニカルコース。スペインGPが開催されるヘレス、マレーシアGPが開催されるセパン、オーストラリアGPの舞台となるフィリップアイランド同様、ウインターテストの舞台として定着しています。そのため、ライダーの経験値が高く、チームの持つデータも豊富で、初日からレベルの高い走りが繰り広げられます。

コースの特徴は、左回りで低中速コーナーが連続し、メインストレートを除き、常にマシンがどちらかにバンクしている難易度の高いレイアウトです。また、この時期のバレンシアは不安定な天候が多く、例年、チームの総合力が要求されます。これまでも、ファンの脳裏に刻まれる名勝負とドラマが数多く繰り広げられてきました。

今シーズンは、マルク・マルケス(Repsol Honda Team)がシーズン序盤から着実に表彰台に立ち、第15戦日本GPで2年ぶり3度目のタイトルを獲得しました。17戦を終えた段階で、史上最多となる9人のウイナーが誕生した今シーズンにおいて、マルケスは5勝を含む11度の表彰台に上がり、世界の頂点に立ちました。

タイトルを獲得してからの2戦は、チャンピオンらしいすばらしい走りをみせましたが、結果にはつながりませんでした。第16戦オーストラリアGPでは、シーズン7度目のポールポジション(PP)から首位を独走しますが、転倒リタイアに終わりました。第17戦マレーシアGPでは、体調を崩しながら大会に挑み、予選4番手からトップグループに加わりますが転倒。再スタートを切って11位でフィニッシュしました。

タイトルを獲得したことで、マルケスは来年に向けてさまざまなことにトライ。まだ結果には結びついていませんが、来年に向けて、一足早くスタートを切りました。最終戦バレンシアGPは、タイトルを獲得してから初めてのホームグランプリであり、凱旋レースとなります。大勢のファンが駆けつけることは必至で、今季6勝目を挙げてシーズンを締めくくる意気込みです。

マルケスは、10年の大会では125ccクラスでチャンピオンを獲得しました。Moto2クラスでは、タイトルを獲得して迎えた12年の大会で、最後尾スタートから優勝するという伝説的なレースを披露して世界中が驚愕。MotoGPクラスにスイッチした13年は、タイトル争いが最終戦までもつれ込む中で3位表彰台に立ち、史上最年少記録でチャンピオンを決めました。そして、14年にはシーズン最多優勝記録となる13勝目を挙げ、史上最年少記録で連覇を達成しました。バレンシアGPで数々のドラマを生んできたマルケスですが、昨年は2位でフィニッシュ。今年は2年ぶりの優勝を狙います。

チームメートで総合6位のダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)にとっては、久々の大会となります。ペドロサは、第15戦日本GPのフリー走行で転倒。右鎖骨を折り、予選と決勝を欠場します。日本GPを含む3連戦となったマレーシアGPまでを欠場し、今大会が4戦ぶりの決勝レースとなります。

バレンシアGPでは、これまで125ccクラスで1勝、250ccクラスで2勝、最高峰クラスでは、07年、09年、そして12年と3度の優勝を経験しています。13年は2位、14年は3位、15年は3位で表彰台に立ち、シーズンを通じて最も得意とするサーキットの一つ。今年は4年ぶりの大会制覇と5年連続の表彰台を目指します。

総合7位につけるカル・クラッチロー(LCR Honda)が、今季3勝目を目指します。今年は第11戦チェコGP、第16戦オーストラリアGPで優勝、MotoGPクラスのトップライダーに成長しました。そんな中、シーズン3勝目を狙った前戦マレーシアGPは転倒リタイア。今大会はその雪辱に挑みます。昨年の大会はスタート進行でマシンチェンジ、最後尾からのスタートとなり、9位でフィニッシュしています。バレンシアGPでは11年の4位が最高位であるクラッチローが、今年はバレンシアGPで初となる表彰台の獲得に挑みます。

シーズン中盤戦をケガのために棒に振ったジャック・ミラー(Estrella Galicia 0,0 Marc VDS)は、最終戦を表彰台で飾る意気込みです。今年は第8戦オランダGPで初優勝を達成しました。後半戦はさらなる活躍が期待されましたが、ケガのために欠場が続き、苦しい時期を過ごしました。しかし、ホームグランプリとなる第16戦オーストラリアGPで予選5番手、決勝10位。第17戦マレーシアGPでは予選14番手から8位でフィニッシュと調子を上げています。最終戦では、今季2度目の表彰台を目標に、全力で挑みます。

チームメートのティト・ラバトは、ホームグランプリとなる最終戦でベストリザルトを目指します。MotoGPにデビューした今年は、17戦を終えて9度の入賞を果たしています。ベストリザルトは第2戦アルゼンチンGPの9位。ヨーロッパラウンドに入ってから苦戦が続いていますが、地元ファンの声援を力に、今季ベストを目指します。

Moto2 レポート

Moto2クラスは、前戦マレーシアGPでヨハン・ザルコ(Ajo Motorsport)が、クラスでは初となる2連覇を達成しました。今年のザルコは、シーズン中盤まで着実に表彰台に立ち、2位以下に大きなリードを築いていきました。後半戦は思うような走りができずに足踏みが続きましたが、タイトル王手で迎えたマレーシアGPでは、今季6度目のPPから6勝目を挙げるすばらしい走りを披露しました。

現在、終盤戦に入って調子を上げてきたトーマス・ルティ(Garage Plus Interwetten)が214点で総合2位。対照的に、終盤に調子を落としたアレックス・リンス(Paginas Amarillas HP 40)が203点で総合3位、過去4戦連続で表彰台に立っているフランコ・モルビデリ(Estrella Galicia 0,0 Marc VDS)が197点で総合4位につけており、この3選手の総合2位争いに注目が集まっています。

以下、サム・ロース(Federal Oil Gresini Moto2)、ジョナス・フォルガー(Dynavolt Intact GP)、中上貴晶(IDEMITSU Honda Team Asia)と続いています。ロースは162点、フォルガーと中上は159点で並び、この3選手の総合5位争いも注目です。ウエットコンディションとなった前戦マレーシアGPで、今季ワーストとなる予選20番手、決勝21位に終わった中上は、その雪辱のため、最終戦を表彰台で飾る意気込みです。

Moto3 レポート

Moto3クラスは、総合2位のエネア・バスティアニーニ(Gresini Racing Moto3)が、今大会での復帰を目指します。バスティアニーニは、第16戦オーストラリアGPで背中を負傷。連戦となる第17戦マレーシアGPを欠場しました。今大会もメディカルチェックを受けてから、出場できるかどうかが決まりますが、2戦ぶりのレースとなる最終戦に闘志を燃やしています。

バスティアニーニにとって今シーズンは、チャンピオン争いが期待されるシーズンでした。しかし、シーズン前半戦に思うようなリザルトを残せずチャンピオン争いから大きく後退。中盤戦に入ってからは調子を上げ、3度のPPと6度の表彰台に立っています。そして、第15戦日本GPでは今季初優勝を達成しました。連勝を狙った第16戦オーストラリアGPでは多重クラッシュに巻き込まれてケガをするという不運に見舞われましたが、最終戦では今季2勝目を目指します。

総合4位のホルヘ・ナバロ(Estrella Galicia 0,0)は今季3勝目を目指します。今年は、第7戦カタルニアGPで初優勝。後半戦の第14戦アラゴンGPで2勝目を達成と、ホームグランプリとなるスペイン大会で好結果を残しています。昨年の大会では2位。今大会の走りに大きな期待が集まっています。

ルーキーで総合7位のファビオ・ディ・ジャンアントニオ(Gresini Racing Moto3)は今季4度目の表彰台と念願の初優勝に挑戦です。第15戦日本GP、第16戦オーストラリアGP、第17戦マレーシアGPと続いた3連戦は、大荒れの展開が続いて表彰台を逃しました。最終戦はその悔しさをぶつける意気込みです。

以下、総合8位にヤコブ・コーンフェール(Drive M7 SIC Racing Team)、総合11位にニッコロ・アントネッリ(Ongetta-Rivacold)、総合14位で第16戦オーストラリアGPにおいて初表彰台を獲得したアーロン・カネット(Estrella Galicia 0,0)が2度目の表彰台に挑みます。ルーキーで2勝を挙げているカイルール・イダム・パウィ(Honda Team Asia)が17位、前戦マレーシアGPの予選での転倒で頭を打ち、決勝をキャンセルした総合23位の尾野弘樹(Honda Team Asia)は、初の表彰台に挑みます。

MotoGP コメント

マルク・マルケス(MotoGP 1位)
「3連戦となった遠征を終えました。この3連戦でタイトルを決めて家に戻ることができ、家族や友人とそれを祝えました。その後、ジムでのインドアトレーニング、モトクロスやサイクリングといったアウトドアのトレーニングもいつものようにこなしました。時差ぼけのおかげで、サイクリングをしながらとても美しい夜明けも楽しめました。でも、シーズンはまだ終わっていません。日曜日にバレンシアでレースがあります。そして、そのあとは重要な2日間のテストがあります。レースでの目標はもちろん、ファンの前で上位でフィニッシュすることです。できれば優勝か、少なくとも表彰台には立ちたいです。ダニ(ペドロサ)がよくなってバレンシアで戻ってくるのはうれしいです」

ダニ・ペドロサ(MotoGP 総合6位)
「この3週間は痛みがありました。大好きなサーキットでのレースにも出られず残念でした。手術直後は痛みがひどかったですが、リハビリを始めてからは、日に日によくなりました。バレンシアまでには回復させたいという思いが、つらい時期の励みになりました。まだマシンに乗った感触がどうなのか分かりませんが、レースに戻ることができてうれしいです。バレンシアのサーキットは大好きです。最高の思い出もあります。地元ファンの前で復帰できるのはうれしいです」

カル・クラッチロー(MotoGP 総合7位)
「バレンシアでは、すばらしい結果を残したいと思っています。このサーキットはあまり得意ではありませんが、自分のライディングスタイルに合うエリアも、マシンに合うエリアもあります。今シーズン最後のレースなので、みんな全力で走ると思います。前回のセパンは残念でしたが、遠征の3レースには満足しています」

ジャック・ミラー(MotoGP 総合17位)
「忙しい遠征を終えてアンドラのベースに戻れました。久しぶりにサイクリングができてよかったです。オーストラリアとマレーシアでのレースでは、ポジティブな面を多く持ち帰れました。今週のバレンシアが楽しみです。2017年シーズンに向けた火曜日のテストを前に、いい結果でシーズンを終えたいです」

ティト・ラバト(MotoGP 総合21位)
「バレンシアは思い出のあるサーキットです。昨年はMoto2クラスで優勝できて、特別な場所となりました。レース後には、初めてMotoGPのマシンでテストをしました。あれから一年が経つので、自分の成長を確認するのも楽しみです。冬に入る前に戦闘的な走りをして、いい結果でシーズンを終えたいです。マシンはかなり扱いやすくなったので、バレンシアでいい走りができると思います。いつものように全力を尽くし、ファンのためにもいいパフォーマンスをしたいです」

Moto2 コメント

ヨハン・ザルコ(Moto2 総合1位)
「セパンでタイトルを獲得しました。MotoGPクラスに進む前に、Moto2で最後となるバレンシアでのレースを、できる限りいい結果で終えたいです。今シーズンはとても長く感じたし、とても思い出深いものがあります。今季はいいスタートを切りましたが、その後にいくつか問題が出て、危うくチャンピオンシップを逃すところでした。タイトルが獲得できたことを誇りに思います。チームには本当に感謝しています。Moto2クラスで最後のレースです。今週末も速く走れると思うので、いつものように全力を尽くします」

トーマス・ルティ(Moto2 総合2位)
「ヨハンがいい仕事をして、タイトルを獲得しました。シーズン序盤に大きくリードされましたが、終盤に入ってからはいいレースができています。特に日本とオーストラリアで連勝できたことはよかったです。次はバレンシアです。僕たちは(アレックス)リンスの前でフィニッシュできるようにがんばらなければなりません。目標はこのポジションを維持し、リンスや(フランコ)モルビデリの前にいることです。モルビデリは最近強いです。リンスも戻ってくるでしょう。彼にとってはバレンシアもホームレースです。このサーキットでは過去にポジティブなレースをしたことがあり、好きです。とても楽しみです」

アレックス・リンス(Moto2 総合3位)
「僕もチームもできる限りすばらしい結果を残して、いいかたちでシーズンを終えたいです。これまでのシーズンと同様に、今シーズンもアップダウンがあり、厳しいシーズンでした。シーズンを通じてタイトル争いに加われたことはとてもいい経験でしたが、終盤戦はあまりうまくいかず残念です。Moto2の最後のレースをスペインのファンと一緒に楽しみたいです。Moto2クラスでもMoto3クラスでも、バレンシアでは表彰台の経験があります。でも、まだ勝ったことがないので、今週末はそれが目標になります」

中上貴晶(Moto2 総合7位)
「前回のマレーシアGPは、本当に残念な結果でした。ドライコンディションではとてもいい走りができていただけに悔しいです。ウエットから徐々に乾いていくという中途半端なコンディションでは、全くいいところがありませんでした。今年最も悪いリザルトです。それだけに、今大会はシーズン2勝目を目標に全力で挑みます。とにかく、これがシーズン最終戦なので、いい結果で終えたいです」

Moto3 コメント

エネア・バスティアニーニ(Moto3 総合2位)
「最終戦となるバレンシアGPを迎えます。今年は木曜日にメディカルチェックを受けて、医師からの出場許可をもらう必要があります。3連戦の2戦目となったオーストラリアGPでアクシデントに遭い、それから気持ちを入れ替えました。モチベーションは高く、体調も日に日によくなっています。バレンシアのレースとバトルに向けて準備は整っています。3位とは19点差。チャンピオンシップでの2位を獲得するために、激しい戦いを期待しています」

ホルヘ・ナバロ(Moto3 総合4位)
「日本とオーストラリア、そしてマレーシアと続いた、とても難しい連戦を終えて、今週末はバレンシアでレースです。スペインでは、家族や友人の前で走るため、いつもとても特別です。彼らが近くにいることはモチベーションやサポートにつながります。今大会はMoto3クラスで最後のレースになります。そして、チームに最高のかたちでさよならを言えるようにしたいです。レースウイークを楽しみたいです。どんなときもこういう気持ちでレースをすれば、物事はいい方向へ進みます。目標は優勝です。すべてのプラクティスセッションで、日曜日へ向けての準備をして、優勝争いに備えたいです」

ファビオ・ディ・ジャンアントニオ(Moto3 総合7位)
「バレンシアにはいい思い出があります。ちょうど一年前にデビューしました。オーストラリア、マレーシアと不運なレースが続いたので、反撃したいです。いいレースができると思います。ルーキー・オブ・ザ・イヤーのトロフィーをかけて3人のライダーが戦っています。そのバトルへの準備は整っています」

尾野弘樹(Moto3 総合23位)
「今シーズンの集大成となる今大会は、日本GP以来の表彰台を狙います。前戦マレーシアGPは、予選の転倒で体調が悪く決勝をキャンセルしました。とにかく今週は、3日間、悔いのないように戦いたいです」