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2016.10.20 ロードレース世界選手権 第16戦 オーストラリア オーストラリアGP プレビュー

オーストラリアGP プレビュー

MotoGP レポート

日本GPからの連戦となる第16戦オーストラリアGPが、10月21日(金)〜23日(日)の3日間、フィリップアイランド・サーキットで開催されます。一周4.4kmのフィリップアイランドは、高速コーナーが連続するレイアウトで、シーズンを通して高いアベレージスピードの高速サーキットの一つ。アクセル全開で走る割合が多いので、エンジンの性能差がほとんど出ません。また、こうした特徴により、スリップストリームを使い合うことになるため、毎年し烈なバトルが繰り広げられます。今大会も壮絶な優勝争いとなることが予想されます。

前戦日本GPでは、マルク・マルケス(Repsol Honda Team)がシーズン11回目の表彰台に立ち、シーズン5勝目を獲得。2年ぶり3回目のシーズンタイトルを勝ち取りました。今年は第14戦アラゴンGPを終えて8人のウイナーが誕生し、競争の激しいシーズンとなっていました。その厳しい戦いの中で、マルケスは安定したリザルトを残し、アラゴンGPから2連勝を達成。シーズン5回目の優勝で、タイトル獲得を決めました。

シーズン13回の最多ポールポジションと最多優勝記録を樹立した2014年は、圧倒的な強さをみせて日本GPでタイトル獲得を決めました。今年は、レギュレーションの変更でタイヤがブリヂストンからミシュランに代わり、全メーカー、全選手が一からのスタートとなる波乱含みのシーズンでした。その中でマルケスは、RC213Vが持つパフォーマンスを着実に引き出し、Hondaのホームレースとなる日本GPでタイトルを決めました。

この優勝でHondaは、最高峰クラスで2年ぶり通算22回目のコンストラクターズタイトルに王手をかけました。また、Repsol Honda Teamもチームタイトルに王手をかけました。

日本GPはダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)がケガのために欠場。急きょ、青山博一が代役出場して1ポイントを獲得しました。今大会は、03年から08年までRepsol Honda Teamに所属し、Honda World Superbike Teamからスーパーバイク世界選手権に参戦するニッキー・ヘイデンが代役として出場します。Honda時代には、フィリップアイランドで3回の表彰台に立っているヘイデン。Repsol Honda Teamとしては8年ぶりのオーストラリアGPとなりますが、代役出場に闘志をかき立てています。

これまで苦手としていた日本GPを予選5番手、決勝5位で走ったカル・クラッチロー(LCR Honda)は、得意とするオーストラリアGPに気合を入れています。日本GPでもコースアウトがなければ表彰台争いに加われただけに、その悔しさをフィリップアイランドで晴らす意気込みです。昨年の大会は予選5番手、決勝7位。今年は12年大会以来の表彰台獲得を目指します。

MotoGP2年目のジャック・ミラー(Estrella Galicia 0,0 Marc VDS)は、ホームレースとなるオーストラリアGPに気合を入れています。ルーキーだった昨年は15位という不本意なリザルトでしたが、今年はオランダGPの優勝ライダーとしての凱旋です。前戦日本GPを転倒でリタイアしてしまっただけに、大好きなサーキットの一つであるフィリップアイランドで今季2度目の表彰台を目指します。チームメートのティト・ラバトは、MotoGPで初めてのオーストラリアGPを迎えます。Moto2クラスに参戦していた昨年はケガのため欠場しているので、2年ぶりのオーストラリアGPとなります。

Moto2 レポート

3クラスの中で唯一タイトルが決まっていないMoto2クラスは、今大会も厳しい戦いが予想されます。総合首位で2年連続チャンピオンを目指すヨハン・ザルコ(Ajo Motorsport)は、前戦日本GPを2位でフィニッシュ。5戦ぶりの表彰台を獲得しました。一方、総合2位のアレックス・リンス(Paginas Amarillas HP 40)は前戦で痛恨の転倒を喫し、再スタートしましたが20位。ノーポイントに終わったため、1点差から21点差へとリードが広がりました。日本GPから連戦となる今大会は、リンスが得意とするサーキットで2年連続制覇を狙います。今大会もザルコとリンスの戦いに大きな注目が集まっています。

日本GPで今季3勝目を挙げたトーマス・ルティ(Garage Plus Interwetten)は総合3位に浮上。1位のザルコとの差は残り3戦で43点と厳しい状況ですが、追い上げムードなだけに、最終戦までタイトル争いを持ち込む意気込みです。後半戦に入って好調なルティによって、チャンピオン争いがおもしろくなることは間違いありません。

ルティのあとにはサム・ロース(Federal Oil Gresini Moto2)が総合4位、後半戦に入って表彰台の常連になったフランコ・モルビデリ(Estrella Galicia 0,0 Marc VDS)が総合5位、中上貴晶(IDEMITSU HondaTeam Asia)が総合6位と続き、上位6選手がチャンピオンの可能性を残しています。今大会を終えて、上位6選手のうち何人の選手がタイトル争いに生き残るのか。そして、総合3位のルティから総合6位の中上までのランキング争いにも大きな注目が集まります。

Moto3 レポート

Moto3クラスは個人タイトルが決まり、残るコンストラクターズタイトルの行方に焦点は移っています。第15戦日本GPを終えてKTMが316点。Hondaは、前戦日本GPでエネア・バスティアニーニ(Gresini Racing Moto3)がシーズン初優勝を達成して301点。Honda勢としてはシーズン6勝目を挙げて追い上げムードだけに、残り3戦でタイトル獲得を目指します。

日本GPで優勝した総合2位のバスティアニーニは後半戦に入って登り調子。昨年の大会では転倒を喫していますが、今年はオーストラリアGP初制覇とシーズン2連覇を狙います。総合3位のホルヘ・ナバロ(Estrella Galicia 0,0)は第14戦アラゴンGPで優勝するも、前戦日本GPでは転倒によるリタイアで悔しいレースに終わりました。今大会は2戦ぶりの優勝と日本GPの雪辱に挑みます。

バスティアニーニのチームメートでMoto3ルーキーのファビオ・ディ・ジャンアントニオ(Gresini Racing Moto3)は、後半戦に入ってトップグループの常連に加わりました。今大会では4回目の表彰台と念願の初優勝に挑みます。

総合9位のニッコロ・アントネッリ(Ongetta-Rivacold)は開幕戦カタールGP以来の優勝を目指し、総合10位のヤコブ・コーンフェル(Drive M7 SIC Racing Team)は今季初表彰台に挑みます。

前戦日本GPで予選トップタイムを記録し、決勝では3位でフィニッシュするも、最低重量規定違反で失格になった尾野弘樹(Honda Team Asia)はその雪辱に挑戦。今大会は、シーズン2度目の予選トップと今季初表彰台を目指します。昨年は日本GPで負ったケガでオーストラリア大会を欠場していますが、初めて経験するフィリップアイランドで前線の悔しさを晴らす意気込みです。

MotoGP コメント

マルク・マルケス(MotoGP 総合1位)
「チャンピオンシップのプレッシャーがなにもない状態でフィリップアイランドへ来られるのは最高の気分です。このサーキットはオースティンやアラゴンと同じように大好きなサーキットの一つです。高速で流れるようなレイアウトで、走っていてとても楽しいです。注意しなければならないのは天候です。この時期は、とても寒くて風も強く、特に最終ストレートではそれを強く感じます。なるべくマシンが安定するようなセットアップを見つけなければなりません。最終戦まで、なるべく多くのレースで勝てるようにがんばりたいと思います。また、コンストラクターとチームのチャンピオンシップのことも考えなければなりません」

ダニ・ペドロサ(MotoGP 総合5位)
「手術のあと、数日間は強い痛みに襲われました。でも今は少しずつよくなってきています。すでに退院して、これから診察を受けることになります。それで回復状況や、いつマシンに戻ることができるかがもっとよく分かると思います。また、タイトルを獲得したマルクとHondaにおめでとうと言いたいです」

カル・クラッチロー(MotoGP 総合7位)
「フィリップアイランドでいいレースをすることが目標です。失うものはなにもありません。ほかのみんなも同じ状況です。天候があまりよくなければ今週末は大変なレースになると思います。路面温度も問題になります。天候次第ではどんな展開も起こり得ます。そのためどのようなことにも対処できるように準備しなければなりません。ここまでチーム、そしてHondaとともに、とてもいい仕事をしているので楽しみにしています」

ジャック・ミラー(MotoGP 総合18位)
「母国へ向かい、地元ファンの前で走るのをとても楽しみにしています。今年はMotoGP第8戦で優勝したライダーとして戻ることになるため、余計に特別な気持ちです。日本GPは難しいレースになりました。今週はその分を取り戻したいです。フィリップアイランドは大好きです。限界までプッシュできるために、いい状態を見つけられることを願っています。昨年はオープンクラスのマシンでいい走りができたと思います。後半戦に入って厳しい状況が続きましたが、ここからいい方向に転換させたい気持ちです。ホームレースはいつもよりプレッシャーがあります。でも、多くのファンが見に来てくれるというのは、とてもいい気分です。オーストラリアのファンのためにいい走りができることを願っています」

ティト・ラバト(MotoGP 総合20位)
「フィリップアイランドが大好きなサーキットの一つなのは僕だけではないと思いますし、楽しみにしています。日本GPは簡単ではありませんでした。しかし、集中力を維持して全力でプッシュしました。ポイント圏内に戻ることができたのは重要なことです。目標はいつもと同じで、すべてのセッションで自信とリズムをつかみ、楽しむことです。2月にはフィリップアイランドでテストしているので、そのときのデータを比較したり検証したいです」

ニッキー・ヘイデン(MotoGP 総合26位 代役出場2戦目)
「まず、ダニの幸運を願っています。ダニは、これまでのように強くなって戻ってくるに違いありません。今回の出場は、僕にとってはクレイジーなハードワークですが、チャンスでもあります。Repsol Honda Teamでタイトルを獲得してから10年になります。ファクトリーのHondaとフィリップアイランドで仕事をすることは考えただけでもかなり感動的です。このような機会を与えてくれたこと、そして信頼してくれたことに本当に感謝しています。また、現在のチームとスポンサーにもチャンスを与えてくれたことに感謝しています。これを実現するためにみんなが一生懸命がんばってくれたので、今は飛行機に乗ってフィリップアイランドへ行くことを楽しみにしています。チームのためにいい仕事ができることを願っています。フィリップアイランドでは常に2つのことに気を付けなければなりません。天候とタイヤです。でもこのサーキットは大好きで、とても楽しみです。金曜日の午前中からがんばって前に進みたいと思います」

Moto2 コメント

ヨハン・ザルコ(Moto2 総合1位)
「このサーキットは最高のサーキットです。昨年はリンスがここで優勝したので、今大会は優勝争いに戻ってくると思います。このサーキットでどうしたら速く走れるのかを考えてみたいと思います。目標は表彰台獲得ですが、ポイントも少しでも多く獲得しなければなりません。レースのこともチャンピオンシップのことも考えなければなりません」

アレックス・リンス(Moto2 総合2位)
「日本GPの前とは全く違う状況でフィリップアイランドへ向かいます。しかし日本GPで分かったように、モーターサイクルレーシングではどんなことも起こり得ます。ベストを尽くすしかありません。そして残り3レースでどうなるか様子を見るしかありません。このサーキットは大好きです。昨年ここで優勝したので、今年もいいことがあることを願っています」

トーマス・ルティ(Moto2 総合3位)
「フィリップアイランドは毎回本当に楽しみにしています。天候がいろいろと展開を複雑にするものの、それでも楽しいサーキットです。寒くなると思いますが、ドライコンディションでレースができることを願っています。コースはもてぎとは全く違うキャラクターなので、いいセットアップが見つけられるようにチームとがんばって取り組まなければなりません。このサーキットを走るのは大好きです。レースを楽しみたいです」

中上貴晶(Moto2 総合6位)
「日本GPは表彰台に立てずに残念なレースでしたが、自分の力をしっかりと出せたと思うし、悔いはありません。一昨年の日本GPは、表彰台争いをしていて転倒リタイアしてしまい本当に悔しいレースでした。今年はルティとザルコの優勝争いには加われませんでしたが、モルビデリとの3番手争いのバトルは、これまでの中で一番の戦いだったと思います。フィリップアイランドは好きなサーキットです。ここからの残り3戦、すべてのレースで優勝を狙っていきます」

Moto3 コメント

エネア・バスティアニーニ(Moto3 総合2位)
「日本でようやく優勝することができました。これでリラックスしてオーストラリアに向かうことができます。戦う準備もできています。フィリップアイランドは大好きですが、風が強く、難しい走りが要求されます。今年はいい天気になることを願っています。そして、いつものように最初のフリープラクティスセッションから速く走れるようにがんばります。目標は最低でも表彰台に上ることですが、もちろんチャンスがあればもてぎのように優勝したいです」

ホルヘ・ナバロ(Moto3 総合3位)
「日本では思ったようにはいきませんでした。しかし、昨年のオーストラリアGPでは優勝争いに加わって4位だったので、とても楽しみにしています。今シーズンはまだ体調が100%ではありません。レースが続いているためになかなか回復しませんが、このサーキットはとても好きです。高速コーナーはHondaとの相性もいいです。体調は完全ではありませんが、モチベーションは上っています。ベストを尽くしたいと思います」

ファビオ・ディ・ジャンアントニオ(Moto3 総合6位)
「フィリップアイランドが楽しみです。美しいサーキットだとみんなが話しています。これまでは、プレイステーションのバーチャルの世界でしか訪れたことがないのですが、ようやく実際に走ることができます。フィリップアイランドは、非常に高速でテクニカルなサーキットなので、きっと気に入ると思います。もてぎではチャンピオンシップにおいて貴重なポイントを獲得できました。接戦となっているルーキー・オブ・ザ・イヤーの獲得に向けて全力を尽くします。あと3レースあります。まだ可能性は十分にあるのでがんばります」

尾野弘樹(Moto3 総合23位)
「日本GPは、これまでの中で一番いい走りができました。予選も決勝も自分の力を出し切れたと思うし、その点では満足しています。結果は本当に残念ですが、その悔しさを残り3戦にぶつけたいです。フィリップアイランドは、昨年、日本GPのケガで走れなかったので初めて走ることになります。すばらしいサーキットだと聞いているのですごく楽しみにしています」