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2016.10.13 ロードレース世界選手権 第15戦 日本 日本GP プレビュー

日本GP プレビュー

MotoGP レポート

ロードレース世界選手権の第15戦日本GPが、10月14日(金)〜16日(日)の3日間、栃木県・ツインリンクもてぎで開催されます。ツインリンクもてぎでは、1999年に初めて日本GPが開催されました。2000年から03年までの4年間は、鈴鹿サーキットで日本GP、ツインリンクもてぎでパシフィックGPが開催されましたが、04年からはツインリンクもてぎだけの開催となり、日本GPの舞台として定着しました。

シーズン終盤戦、ヨーロッパからは遠征となり、海を越えるこの3連戦は、日本GPが秋の開催になった2010年からすっかりカレンダーに定着しました。日本GPは3年連続で今年も3連戦の初戦となり、オーストラリアGP、マレーシアGPと続きます。

14年の大会では、マルク・マルケス(Repsol Honda Team)が、2年連続のチャンピオンを日本GPで決め、Hondaとしては初めてホームグランプリでのタイトル獲得を達成。ファンも関係者も歓喜に沸く大会となりました。対照的に昨年は、ダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)が優勝したものの、その時点でタイトルの可能性が消滅するという、悔しさも残る結果に。その雪辱に闘志を燃やす今年は、おととし同様、タイトル王手で日本GPを迎えることになりました。

今大会を入れてシーズンは残り4戦。チャンピオンの可能性を残すのは上位の5選手です。総合首位のマルケス、52点差で総合2位のバレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)。総合3位に66点差のホルヘ・ロレンソ(ヤマハ)。以下、総合4位のペドロサが93点差、総合5位のマーベリック・ビニャーレス(スズキ)が99点差となっており、マルケスは今大会を終えて2位以下に76点差をつけるとチャンピオンが決まります。現状では、タイトル決定は難しいシチュエーションですが、今大会、しっかり走りきれば、タイトル獲得に大きく前進することになります。

前戦アラゴンGPでシーズン4勝目を挙げたマルケスは、タイトル獲得に向けて今大会を重要なレースと位置づけており、確実にフィニッシュする作戦です。2013年にMotoGPクラスにデビューして、これまで優勝していないのは、今年初開催となったオーストリアGPと日本GPの2つだけ。チャンスがあれば優勝を狙っていくことになりますが、タイトル獲得を最優先に、慎重に戦う意気込みです。

チームメートのペドロサは、ツインリンクもてぎを得意としています。昨年は、連覇を果たした11年、12年以来、3年ぶり3度目の日本GP制覇を達成しました。前戦アラゴンGPでは、不運のタイヤトラブルに見舞われ表彰台争いから脱落しました。その雪辱に燃える今大会は、第13戦サンマリノGP以来、2戦ぶりの優勝に挑みます。

シーズン中盤になって調子を上げているカル・クラッチロー(LCR Honda)は、今季2勝目と4度目の表彰台に挑みます。過去、ツインリンクもてぎでは、あまりいい結果を残せませんでしたが、ウエットレースになった昨年は6位でフィニッシュして苦手意識を克服。今季ここまで、ウエットでもドライでもすばらしい走りを見せているだけに、日本のファンは熱い視線を注いでいます。

また、後半戦のスタートとなった第10戦オーストリアGPのウォームアップで右手首を負傷、その影響で欠場が続いたジャック・ミラー(Estrella Galicia 0,0 Marc VDS)が、今大会から復帰します。まだ100%の状態ではありませんが、セッションをこなすごとに、少しずつペースを上げていく意気込みです。チームメートのティト・ラバトは、3戦ぶりのポイント獲得とベストリザルトを狙います。

Moto2 レポート

Moto2クラスは、チャンピオン争いが激しくなりました。14戦を終えて、総合首位のヨハン・ザルコ(Ajo Motorsport)が202点。総合2位のアレックス・リンス(Paginas Amarillas HP 40)が1点差の201点となり、日本、オーストラリア、マレーシアと続く3連戦がタイトル争いの大きな山場となります。総合3位につけるサム・ロース(Federal Oil Gresini Moto2)は首位のザルコと40点差の162点。トップの2人にはリードを広げられていますが、逆転の可能性を残しています。

昨年の大会ではザルコがポール・トゥ・ウインを達成しました。ザルコは125cc時代の11年に日本GPで初優勝を達成しています。ツインリンクもてぎは、ザルコが得意とするサーキットであり、後半戦に入って失速しているザルコが、どこまで勢いを取り戻せるのかに大きな注目が集まっています。

総合4位のトーマス・ルティ(Garage Plus Interwetten)も、14年以来、2度目の日本GP制覇に闘志を燃やしています。以下、総合5位のフランコ・モルビデリ(Estrella Galicia 0,0 Marc VDS)、総合6位の中上貴晶(IDEMITSU Honda Team Asia)、総合7位のジョナス・フォルガー(Dynavolt Intact GP)と続き、ルティからフォルガーまで21ポイント差という大接戦となっています。

その中でも、ホームグランプリを迎え、シーズン2勝目に闘志を燃やす中上が、一気にランキングを上げていく意気込みです。今年はオランダGPで初優勝を達成して、勢いが増しています。今大会は2006年の青山博一(250cc)以来となる日本人選手の日本GP制覇が期待されます。

また、今大会のワイルドカードとして、現在は全日本ロードレース選手権J-GP2クラスに参戦中の関口太郎(Team Taro Plus One)が参戦します。

Moto3 レポート

Moto3クラスは、前戦アラゴンGPでブラッド・ビンダー(KTM)がタイトルを獲得しました。ここからの4戦は、KTMとHondaによるコンストラクターの戦いに注目されます。14戦を終えてKTMは296点。Hondaは276点。逆転に向けてHonda勢は一丸となって戦うことになります。

総合2位のホルヘ・ナバロ(Estrella Galicia 0,0)は、前戦アラゴンGPで今季2勝目を挙げてモチベーションが高まっています。昨年の日本GPでは3位表彰台を獲得している相性のいいサーキットだけに、今大会はシーズン3勝目と日本GP初制覇への期待が膨らんでいます。

総合3位のエネア・バスティアニーニ(Gresini Racing Moto3)は、第14戦を終えた段階で5度の表彰台に立ってきました。今年はまだ優勝はありませんが、ハードブレーキングが連続するツインリンクもてぎは、バスティアニーニが得意とするサーキットの一つだけに、今季初優勝に向けて全力で挑みます。

バスティアニーニのチームメートで総合6位のファビオ・ディ・ジャンアントニオ(Gresini Racing Moto3)は、今年はここまで3度の表彰台に立ってきました。優勝まであと一歩に迫っており、今大会は初優勝を目指します。総合9位につけるニッコロ・アントネッリ(Ongetta-Rivacold)は昨年の日本GPウイナーで、今年は大会2連覇を狙っています。今大会のHonda勢は、優勝を狙える選手が多く、Honda勢の表彰台独占も期待されます。

ホームグランプリを迎える尾野弘樹(Honda Team Asia)は、第2戦アルゼンチンGP、第6戦イタリアGPの6位を超えるベストリザルトを狙います。ワイルドカードで出場したおととし、フル参戦して初めての日本GPとなった昨年も、スタートからいいポジションにつけたものの転倒を喫しています。今年は着実に走りきってベストリザルトを狙うことを最大の目標に、チャンスがあれば表彰台を狙っていく意気込みです。

なお、Moto3クラスのワイルドカードは、2016年の全日本ロードレース選手権J-GP3クラスの女性ライダー、岡崎静夏(UQ & Teluru Kohara RT)。日本人女性ライダーとしては21年ぶりの世界選手権参戦を果たします。

MotoGP コメント

マルク・マルケス(MotoGP 総合1位)
「この3連戦は時差もコンディションも異なり、シーズンの中でも難しい連戦となります。そのため、落ち着いて戦い、シーズン中ずっと維持してきた気持ちで取り組まなければなりません。日本GPはHondaのホームレースなので、僕たちにとっては重要なグランプリです。2014年にはタイトルを獲得したというすばらしい思い出もあります。とはいえ、このサーキットは僕たちにとっては少し難しいサーキットです。前戦アラゴンがアタックできるサーキットだとすれば、もてぎはできる限りポイントを喪失しないよう、慎重に戦うサーキットになります。守りに入ることなく、できる限りいい結果を出せるようにがんばりますが、状況に合わせて走る準備もできています」

ダニ・ペドロサ(MotoGP 総合4位)
「もてぎは大好きなサーキットの一つです。そして、ここはHondaのホームサーキットです。これまでも、いい結果を残してきました。もちろん日本のファンの前でできる限りいい結果を残したいと思っています。でも、優勝争いをするためには、マシンとタイヤを理解しなければいけないし、それにしっかり取り組まなければいけません。今、自分にとって最も大事なことはマシンとタイヤのマッチングであり、自分にとって最良のコンビネーションを見つけることです。金曜日の最初のセッションから、いいスタートを切りたいです」

カル・クラッチロー(MotoGP 総合6位)
「Hondaのライダーにとって、もてぎは特別なサーキットです。雰囲気もファンの温かさも独特です。僕にはいいマシンがあります。加速ではダニとマルクのマシンにはかないませんが、彼らが選ばなかったシャシーでうまく走れているし、エリアによっては彼らより速く走れています。シーズンの前半はいまいちでしたが、マシンにいいフィーリングを見つけてからは調子がいいです。残り4レースで彼らにチャレンジして、プライベートチームにおけるトップのポジションをキープしたいです」

ジャック・ミラー(MotoGP 総合17位)
「ケガでレースを欠場することは、いつだってつらいことです。それだけに今週のもてぎでは、うまくいくことを願っています。手首の骨折は完全に治っていなかったし、アラゴンGPに出場せず、欠場したことは正しい決断でした。もしレースをしていたらもっと悪化していたと思います。僕は十分休んだし、もてぎで仕事に戻ります。このサーキットは、ハードブレーキングが多いので、簡単ではありません。次のフィリップアイランドにつながるレースにしたいです」

ティト・ラバト(MotoGP 総合20位)
「Moto2クラス時代は、もてぎで何回かいいレースをしたことがあります。しかし、MotoGPのマシンでは、どこのサーキットでもMoto2マシンのようにはいきませんでした。強いブレーキングと加速が必要になるので、このサーキットは難しいと思います。そのため正しい方向でセットアップを進めなければなりません。大事なことはこの3連戦の最初でいいレースをすることです。そうすればオーストラリアとマレーシアでもいい勢いをキープできると思います。この3連戦はシーズンの中でも難しい時間ですが、レースが大好きなので、3連戦というのは自分にとってうれしいことです」

Moto2 コメント

ヨハン・ザルコ(Moto2 総合1位)
「ここ数戦、思うようにポイントを獲得できなかったのはとても残念ですが、まだ首位をキープしているということで、ポジティブに考えています。これはとても大事なことです。この時期はシーズンの中でも好きな移動になります。確かに大変ですが、この3連戦に求められるものは多く、重要な戦いになります。もてぎはいつも、自分にとってはとても特別なところです。2011年に初優勝を達成し、昨年は優勝してMoto2クラスの世界チャンピオンを決めました。ここ以上にいい思い出があるところはないと思います。今週末もいい結果が出せることを願っています」

アレックス・リンス(Moto2 総合2位)
「ザルコと1点差になり、ゼロからスタートする気分です。3週間の3レースはチャンピオンシップで最も重要な時期になります。そして、最良の結果が出せるようにみんながプレッシャーを感じているはずです。この3連戦でタイトルがほぼ決まるかもしれません。もてぎでも、ほかのサーキットでも、いい結果が出せると思います。あとは落ち着いて、集中し、一生懸命レースするだけです」

サム・ロース(Moto2 総合3位)
「アラゴンではとても力強いレースができました。ポール・トゥ・ウインを達成しましたし、自信を持ってもてぎへ向かうことができます。気分はいいです。日本でも優勝争いができると思います。3連戦はいいスタートを切ることが大事になってきます。タイトル争いはまだ終わっていません。最後までプッシュし続けます。もてぎでいい結果を出すことができれば、フィリップアイランドやセパンでは、さらに自信を持つことができます。その2つのサーキットは相性がいいサーキットなので、全力を尽くします」

中上貴晶(Moto2 総合6位)
「今年はオランダGPで初優勝を達成し、表彰台に何度も立つことができました。今年は調子を上げている状態で母国グランプリを迎えることになり、チームもファンも優勝を期待してくれていると思います。自分も優勝しか考えていません。日本GPは、一年に一回の特別なグランプリ。地元ファンの声援を力にしたいし、初日からトップを狙って戦っていきたいです。昨年は雨のレースになり、表彰台争いをしていて転んでしまいました。今年は最後までしっかり走りきって、ファンの方々が喜んでくれるレースにしたいです。今は乗れている状態なので、いいレースができると信じています」

Moto3 コメント

ホルヘ・ナバロ(Moto3 総合2位)
「もてぎはあまり得意なサーキットではないのですが、昨年は、ドライでもウエットでもいい走りができて、レースでは3位表彰台を獲得しました。ウエットでは初めての表彰台となり、いい思い出になっています。今週末に向けてモチベーションはとても上がっています。ここ2週間は家で休み、この3連戦に向けて準備を整えていました。この3連戦の目標は、レースを楽しみ、なるべく多くのポイントを獲得して表彰台に上がることです。そして、チームをできる限り喜ばせたいです」

エネア・バスティアニーニ(Moto3 総合3位)
「もてぎはハードブレーキングと低速からの加速がたくさんあって、僕のライディングスタイルに合っています。昨年は雨の決勝レースになり、ベストを尽くすことができませんでしたが、それでもかなりいい結果を出すことができました。今年の目標は上位を維持することです。アラゴンのすばらしいパフォーマンスをここでも確認したいです。そして今シーズンの初優勝を目標に全力で挑みます」

ファビオ・ディ・ジャンアントニオ(Moto3 総合6位)
「3連戦という長い遠征に向けてトレーニングをこなしてきました。この3連戦は見るのも走るのも初めてのサーキットばかり。でも、トップ10を維持できるようにがんばりたいです。チャンピオンシップが始まってから同じことを言ってきましたが、すべてのレースでトップ10に入ることができれば、ルーキーとしてはとてもいい結果だと思います。早くコースを攻略できることを願っています」

尾野弘樹(Moto3 総合23位)
「日本GPは、自分にとって特別なレースです。いつもプレッシャーを感じすぎてしまうのか、ついつい限界を超えてしまい、それが転倒につながっていました。昨年も、ワイルドカードで出場したおととしも転んでしまいました。今年はその反省を生かし、日本GPだということを意識しすぎないようにしっかり完走したいです。目標はシングルフィニッシュ。トップグループが見える位置につけて、チャンスがあれば、まだ果たせていない表彰台への初登壇を狙いたいです」