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2016.05.19 ロードレース世界選手権 第6戦 イタリア イタリアGP プレビュー

イタリアGP プレビュー

会場:ムジェロ・サーキット  全長:5.2km
決勝:[MotoGP]23Laps  [Moto2]21Laps  [Moto3]20Laps
MotoGP レポート

第6戦イタリアGPが、5月20日(金)〜22日(日)までの3日間、フィレンツェ近郊のムジェロ・サーキットで開催されます。イタリアGPは、5月もしくは6月の大会として定着していますが、今年は5月中旬に開催されることになりました。

ムジェロで初めてグランプリが開催されたのは1976年。以降、イモラ、モンツァなど、複数のサーキットでイタリアGPが開催されてきましたが、1991年にサーキットの全面改修を実施してからは、ムジェロがイタリアGPの舞台として定着しました。

91年はサンマリノGP、92年はイタリアGP、そして93年は再びサンマリノGPとして開催され、94年以降はイタリアGPの舞台となり、今年で23年連続の開催となり、91年〜93年の大会を加えると、26年連続となります。

Hondaは、93年のサンマリノGP以来、ムジェロでは13勝を挙げています。93年から98年までミック・ドゥーハンが6年連続優勝(イタリアGPとしては5年連続)。以降、アレックス・クリビーレ、ロリス・カピロッシ、アレックス・バロス、バレンティーノ・ロッシがHondaで優勝。そして、Repsol Honda Teamとしてはダニ・ペドロサが10年、マルク・マルケスが14年に優勝しています。

ムジェロは、一周5.245kmのハイスピードコースで、グランプリが開催されるサーキットでは、オーストラリアのフィリップアイランドに次いでアベレージスピードの高いコースです。下り勾配の最終コーナーから約1.1kmのロングストレートで繰り広げられる超高速バトルが最大の見どころで、見ている観客を興奮させます。ムジェロは全体的にパッシングポイントが多く、目まぐるしくポジションを入れ替える競り合いになることがしばしばで、選手からも観客からも評価の高いサーキットになっています。

5戦を終えて2勝と3位2回のマルケスは、開幕から4戦連続で表彰台に立ちましたが、前戦フランスGPでは3番手争いをしているレース中盤に転倒を喫しました。しかし、マシンを起こし、再スタートを切ったマルケスは、13位でチェッカーを受け、貴重な3ポイントを獲得しました。

MotoGPクラスにデビューした2013年に史上最年少記録でタイトルを獲得。14年にはシーズン最多優勝記録の13勝を挙げてタイトルを獲得しています。昨年はマシンのセットアップが思うように進まず、総合3位とタイトルを逃しました。その理由の一つには、勝つか転倒かというアグレッシブなレース運びがありました。その苦い経験を生かし、今年はすべてのレースで完走する意気込みです。

マルケスは、125cc時代の10年にムジェロでグランプリ初優勝を達成しています。Moto2クラスでは11年、MotoGPクラスでは14年に優勝しています。ムジェロはコーナリングスピードが要求されるコース。マシンのセットアップが重要になるサーキットだけに、初日からセットアップに全力で挑み、2年ぶりの大会制覇と今季3勝目を狙います。

チームメートのペドロサは、開幕前にHondaと17年、18年の2年契約を交わしました。この契約更改でシーズンの戦いに集中することになるペドロサは、今季2度目の表彰台と今季初優勝を目指します。

ペドロサは、250cc時代の2005年に優勝、MotoGPクラスでは、07年に2位、08年に3位、10年の大会ではポール・トゥ・ウインを達成。12年と13年は2位とコンスタントに表彰台に立ってきました。昨年の大会は、シーズン序盤に右腕の手術を受け、復帰2戦目となりましたが4位でフィニッシュしています。今年はマシンのセットアップがなかなか進まず苦戦していますが、得意のサーキットで2年ぶりの表彰台と最高峰クラスで2度目の大会制覇を目指します。

5戦を終えて転倒リタイアが3度、ノーポイントのレースが1度と苦戦が続いているカル・クラッチロー(LCR Honda)は、得意のサーキットに気合を入れています。13年の大会では3位表彰台に立ちました。14年と、LCR・Hondaに移籍した15年は転倒リタイアに終わっていますが、今年はこの大会をターニングポイントにする意気込みです。今年はフリー走行、予選と好調な走りをみせることも多いのですが、なかなか結果につなげられない苦しいレースが続いています。今大会は、悪い流れに終止符を打とうと気合が入っています。

一昨年のMoto2チャンピオンでMotoGPルーキーのティト・ラバト(Estrella Galicia 0,0 Marc VDS)は、序盤の3戦ではポイントを獲得する好調なスタートを切りましたが、ヨーロッパラウンドに入ってからは、スペインGPで18位、フランスGPは転倒リタイアと厳しい結果に終わっています。ムジェロは、Moto2時代の14年と15年に優勝している相性のいいサーキット。今大会は今季ベストリザルトを狙います。

チームメートのジャック・ミラーは、第3戦アメリカズGPで痛めた右足も回復して万全の状態で挑むことになります。今年は開幕戦カタールGPでポイントを獲得するも、それ以降はノーポイントのレースが続いているだけに、今大会は悪い流れをストップさせる意気込みです。

Moto2 レポート

Moto2クラスは、これまでのコース上の戦いと同様に、接戦が続いています。5戦を終えて2勝、3度の表彰台に立つアレックス・リンス(paginas Amarillas HP 40)が総合トップ(87点)。1勝で3度の表彰台に立つサム・ロース(Federal Oil Gresini Moto2)が総合2位(82点)、トーマス・ルティ(Garage Plus Interwetten)が1勝2度の表彰台で総合3位(69点)と続きます。どの大会も、予選、決勝と大接戦が続いているだけにミスは許されません。

昨年のイタリアGPの予選は、ポールポジション(PP)から1秒差以内に14台という厳しい戦いになりました。今年は昨年以上の混戦が予想されるだけに、フリー走行、予選、決勝と熱い走りがみられそうです。

総合首位に立つリンスは、Moto2クラスのルーキーだった昨年の大会は11位でしたが、今年は優勝争いに加わることが予想されます。総合2位につけるロースも、昨年はPPを獲得するも決勝は4位に終わっています。総合3位のルティはムジェロを得意とする選手。ランキング上位の選手たちのバトルに大きな注目が集まりそうです。

総合4位につけるディフェンディングチャンピオンのヨハン・ザルコ(Ajo Motorsport)は、ホームレースとなった前戦フランスGPは転倒再スタートを切って24位と悔しい結果に終わりました。昨年の大会では2位。今年はフランスGPの雪辱に挑みます。総合5位のジョナス・フォルガー(Dynavolt Intact GP)もフランスGPは転倒リタイアに終わっているだけに今大会は必勝態勢で挑みます。総合11位につける中上貴晶(IDEMITSU Honda Team Asia)は、レースを行うごとに調子を上げています。前戦フランスGPは今季ベストの5位。今大会は今季初表彰台、初優勝を目指します。

Moto3 レポート

Moto3クラスは、今季、過去最高の接戦が続いています。前戦フランスGPの予選では、トップから1秒差以内に23台という厳しい戦いとなりました。その戦いを制して今季初PPを獲得したニッコロ・アントネッリ(Ongetta-Rivacold)が、ホームレースに闘志をかきたてています。フランスGPでは、PPを獲得するも決勝は大接戦の中で8位。今大会は地元ファンの声援の中で開幕戦カタールGP以来の優勝を目指します。

Honda勢トップにつけるホルヘ・ナバロ(Estrella Galicia 0,0)は、5戦を終えて2位を2回、3位を1回と3度の表彰台に立って総合2位。今大会は初優勝を目指します。前戦フランスGPでは、壮絶な優勝争いの中で3位でしたが、ムジェロは大好きなサーキットの一つと自信をみせるだけに、念願の初優勝に期待が寄せられます。

総合7位のヤコブ・コーンフェール(Drive M7 SIC Racing Team)は第4戦スペインGPの5位をしのぐ今季ベストリザルト獲得に闘志。第2戦アルゼンチンGPで初優勝を達成して総合9位のカイルール・イダム・パウィ(Honda Team Asia)は2度目の表彰台を目指します。総合10位のエネア・バスティアニーニ(Gresini Racing Moto3)は、右腕の負傷のため前戦フランスGPを欠場、ホームレースで2戦ぶりの復帰を果たします。

前戦を4位でフィニッシュしたアーロン・カネット(Estrella Galicia 0,0)は、初表彰台を目指します。総合19位の尾野弘樹(Honda Team Asia)は、昨年の大会で予選2番手につけましたが、決勝は11位と悔しい結果に終わっています。今年は2年連続フロントローと、決勝では第2戦アルゼンチンGPの6位以上のリザルトを目指します。

MotoGP コメント

マルク・マルケス(MotoGP 総合2位)
「ここからの2戦が楽しみです。ムジェロとモンメロに集中しなければなりません。どちらもヘレスやル・マンとは全く違います。コーナリングスピードが要求されるサーキットです。2年前なら、難しいサーキットと答えたかもしれませんが、そのころに比べれば、今は相性がいいかもしれません。やらなければならないことはありますが、課題となっている加速を改善できれば最高のマシンの一つになると信じています。現行のルールではエンジンのアップデートに取り組むことができないので簡単なことではありませんが、Hondaは一生懸命取り組んでくれています。彼らを信じているので、ポジティブな気持ち大会を迎えます。ムジェロの目標は表彰台に立つことです。どんな戦いができるか分かりませんが、現状で最大限の力を発揮したいです」

ダニ・ペドロサ(MotoGP 総合4位)
「Hondaと新しい契約を結ぶことができました。Hondaと引き続き仕事をできることが決まり、イタリアGPを迎えることができたのでとてもうれしいです。将来のことが決まったので、これからはコース上の仕事に完全に集中することができます。ムジェロは高速サーキットです。流れるようなレイアウトでロングコーナーがたくさんあります。そのため、いいセットアップとグリップをみつけることがとても重要です。今年は5戦を終えて、レースのペースはプラクティスよりもよくなっています。ル・マンでは特にレース終盤がよかったので、金曜日から力強くスタートして、レースウイークを通して前進したいです。土曜日の予選ではいいグリッドポジションを獲得したいです。そして、レース序盤に混戦につかまらないようにしたいと思います」

ティト・ラバト(MotoGP 総合17位)
「ル・マンは残念な結果に終わりました。しかし、多くのことを学びました。転倒するまで、ほかのライダーたちととてもいいバトルができていましたし、彼らをパスできたのは初めてのことでした。ポジティブな気分でムジェロに向かいます。世界で最も速く、最も美しいサーキットの一つであるムジェロでMotoGPマシンを走らせるのがとても楽しみです。とても好きなサーキットで過去にいい成績を残してきましたが、MotoGPマシンでは全く違う挑戦になります。信じられないスピードでストレートを走り、1コーナーでブレーキングをするときの僕の顔を見るのが楽しみだとジャック(ミラー)が言っていますが、ムジェロのスピードは大好きです。すばらしい雰囲気で特別なサーキットなので、戦闘的な走りをしてポイント圏内に入ることができることを願っています」

カル・クラッチロー(MotoGP 総合20位)
「ムジェロは僕にとって特別なレースです。とても楽しみにしています。イタリアにはたくさんのファンがいるので楽しみです。サーキットからそれほど遠くないところに家があるので、第2のホームレースと言ってもいいです。大好きなレイアウトで、過去に何度かいい結果を残したことがあります。MotoGPライダーだけではなく、どんなライダーも走っていて楽しいサーキットだと思います。ポジティブな気持ちでレースウイークに挑みます。いい週末になることを願っています」

ジャック・ミラー(MotoGP 総合22位)
「ル・マンは思っていたような結果を残せませんでした。しかし、レースペースはとてもいい感触がありました。もう少し全体的にスピードを上げる必要はありますが、ムジェロは僕たちのバッケージとは相性がいいと思います。目標は完走すること。レースウイークを通してなるべく強くなることです。ムジェロは最高です。ストレートのトップスピードは、怖いけれど感動的です。6速の最高速を初めて体験するティト(ラバト)の顔を見るのが楽しみです。そのあとは1コーナーへ向けてブレーキをかけなければなりません。僕たちのスピードに見合う結果を出すのが楽しみです」

Moto2 コメント

アレックス・リンス(Moto2 総合1位)
「ムジェロは、ほかのサーキットとは全くキャラクターが異なる独特なサーキットです。いくつかの高速コーナーでは、とてもテクニックを要求されるし、セットアップがとても重要になります。そのためにも初日からセットアップに集中して、攻められるようなマシンにしたいです。フランスで2勝目を達成しました。さらに優勝を目指してがんばります」

サム・ロース(Moto2 総合2位)
「先週のミサノでいいテストができたので、今週のムジェロはいいレースをする自信があります。昨年の大会は4位。ポールポジションを獲得しましたが、表彰台に立つことができませんでした。しかし、今年は優勝争いに加われると思います。ムジェロはみんなが好きなサーキットです。大会の雰囲気も最高です。開幕が待ちきれません」

トーマス・ルティ(Moto2 総合3位)
「フランスGPでは今季初ポールポジションを獲得して3位でフィニッシュしました。開幕戦カタールGP以来の表彰台に立てて、とてもよかったです。ル・マンではレースウイークを通じていい走りができました。今週のムジェロも、いいレースができると信じています。ムジェロは高速コーナーがあって、好きなサーキットです。昨年はレースをリードしながら、プッシュしすぎて転倒してしまいました。今年は同じミスをしないようにしたいと思います」

中上貴晶(Moto2 11位)
「今回のイタリアGPは、自分を応援してくれている多くの関係者が訪れる予定です。さらに、スポンサードしていただいているイタルトランスの地元でもあり、いいレースをしたいと思っています。前戦フランスGPは今季ベストリザルトでした。イタリアGPは、グランプリに参戦するようになって初めてレース中にトップを走ったサーキットです。思い出深いサーキットでもあるので、今回は表彰台に登れるように、初日から全力で取り組んでいきます」

Moto3 コメント

ホルヘ・ナバロ(Moto3 2位)
「昨年の大会は、とてもハッピーでした。予選18番手から追い上げのレースをして7位でフィニッシュしました。ムジェロは、高速コーナーが続き、流れるような走りが続きます。ほかのサーキットに比べても、ムジェロは自分のライディングとすごく相性のいいサーキットだと思うので楽しみです。今週もいつも通り全力で挑みます。決勝では、優勝を目標に、いいレースをしたいです」

ニッコロ・アントネッリ(Moto3 総合5位)
「ムジェロは、テクニカルかつ高速なサーキットです。スピードが要求されるのでセットアップがとても重要になります。初日から全力で働かなくてはいけません。前戦フランスGPではポールポジションを獲得しましたが、決勝は厳しい戦いになりました。今大会は金曜日から速く走れるように全力で挑みます」

ヤコブ・コーンフェール(Moto3 総合7位)
「ムジェロは高速コーナーが続きます。Hondaとの相性はいいと思うので、いいレースができると思います。今年はレースをこなすごとにいい状態になっています。フランスGPでは予選11番手から大接戦の中で9位でフィニッシュしました。今大会はベストリザルトを目標に挑みます」

尾野弘樹(Moto3 総合19位)
「ここ2戦の決勝では転倒リタイアが続いているので、今回はまず完走を目標にしたいと思います。昨年は予選で2番手を獲得したサーキットなので、今年も予選では同じ結果を再現できるようにし、決勝では、その走りを結果につなげたいです。シーズンも中盤戦に入ってきました。一戦一戦、しっかり結果を残していきたいです」