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第4戦フランスGPが、5月17日(金)から19日(日)までの3日間、パリの南西約200kmに位置するル・マン・サーキットで開催されます。フランスGPは、1951年に第1回大会が行われ、今年で50回目を迎えます。ル・マンでは、1969年に初めてフランスGPが開催されました。その後、ル・マンを含めて、ポールリカール、クレルモン・フェラン、マニクールなど、いくつかのサーキットでグランプリは開催されてきましたが、2000年からは、ル・マンがフランスGPの舞台として定着しました。今年で14年連続、通算26度目の大会となります。
ル・マンは、自動車の24時間耐久レースの舞台として知られています。このレースでは、一部に一般道路を利用するサルテ・サーキットが使われます。グランプリや2輪の24時間耐久レースは、ブガッティ・サーキットで行われます。ブガッティは、全体的にストレートが短く、典型的なストップ&ゴーのレイアウト。パッシングポイントが少なく、バックストレートのシケインが勝負どころとなります。そのため、グリッドが非常に重要となり、予選では厳しいアタック合戦が繰り広げられることになります。
また、この時期のル・マンは雨が多く、2007年から09年までは、不安定な天候のレースとなり、レース中にマシンを乗り換えることができる“フラッグ・トゥ・フラッグ”ルールが適用されました。2010年は快晴の中で行われましたが、11年、12年の決勝は、ウエットコンディションでレースが始まり、レース終盤にかけてライン上が乾いていく難しいコンディションとなりました。今年も3日間ともに不安定な天候が予想されています。
一昨年の大会は、2012年シーズンを最後に引退したケーシー・ストーナー(Repsol Honda Team)が優勝。昨年の大会もストーナーが3位で表彰台に立ちました。
今年は、ルーキーのマルク・マルケス(Repsol Honda Team)が、総合首位でフランスGPを迎えます。マルケスは、開幕戦カタールGPで3位、第2戦アメリカズGPで初優勝を達成、第3戦スペインGPで2位表彰台に立ち、次々に最年少記録を更新しています。今大会はMotoGPマシンを初めて走らせるサーキット。「ここからのレースはゼロからのスタート」と気持ちを引き締めています。
前戦スペインGPで今季初優勝を達成し、マルケスに続く総合2位に浮上したダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)は、得意のコースで2連勝を狙います。これまでル・マンでは、2003年の125ccクラス、04年、05年の250ccクラスで優勝しています。最高峰クラスでは、まだ優勝はありませんが、今年は3クラス制覇の期待が膨らんでいます。ペドロサは前戦スペインGPで、MotoGPクラスの通算優勝回数を23としました。
開幕戦から6位、8位、6位と、なかなか表彰台に届かないアルバロ・バウティスタ(GO & FUN Honda Gresini)は、今大会は大きなステップを刻む意気込みです。昨年の大会は不安定な天候に苦戦して10位と悔しいレースに終わっています。今年は、その雪辱と今季ベストリザルトを狙います。
3戦を終えて総合11位と苦戦しているステファン・ブラドル(LCR Honda MotoGP)も、今季ベストリザルトに気合を入れています。今年は開幕戦カタールGPと第3戦スペインGPで転倒リタイア。完走したのは第2戦アメリカズGPの5位だけと、厳しいレースが続いています。今大会は今季2度目の完走とベストリザルトを狙います。
CRTマシンで出場のブライアン・スターリング(GO & FUN Honda Gresini)は、前戦スペインGPで16位。ポイント獲得まであと一歩に迫りました。今大会はMotoGPでの初ポイント獲得を目指します。
激戦が続くMoto2クラスは、3戦を終えてエステべ・ラバト(Tuenti HP 40)が52点で総合首位に立っています。2位には、1点差でスコット・レディング(Marc VDS Racing Team)。ラバトから11点差でポル・エスパルガロ(Tuenti HP 40)が3位。以下、4位にニコラス・テロール(Mapfre Aspar Team Moto2)、5位にドミニク・エージャーター(Technomag carXpert)、6位に中上貴晶(Italtrans Racing Team)、7位にミカ・カリオ(Marc VDS Racing Team)と僅差で続きます。パッシングポイントが少ないル・マンだけに、今大会は、予選、決勝ともに大接戦が予想されます。前戦スペインGPでニューシャシーを投入したIDEMITSU Honda Team Asiaの高橋裕紀は、ル・マンは2006年にGP初優勝を達成したサーキット、2年前の大会でも表彰台に立っているだけに、今大会の走りが注目されます。
Moto3クラスも大接戦が予想されます。今季、好調な走りをみせるブラッド・バインダー(Ambrogio Racing)は、開幕戦から着実にリザルトを上げてきました。開幕戦カタールGPで12位、第2戦アメリカズGPで9位、前戦スペインGPで4位。今大会は初表彰台が期待されます。前戦スペインGPで10位に入り、3戦を終えて総合11位のアレクシ・マスボー(Ongetta-Rivacold)はホームGPに闘志満々。ルーキーの渡辺陽向(TASCA RACING)も初ポイント獲得を目標に挑みます。
マルク・マルケス(MotoGP ランキング1位)「ル・マンではMotoGPマシンのテスト走行をしていませんので、またゼロからのスタートになりますが、ベストを尽くしたいです。正しいセットアップを見つけるために、ドライの路面でマシンを準備したいので、雨が降らないことを願っています。ここまでの結果にはとても満足していますが、MotoGPマシンでは初めてのサーキットがこの先も続くので、引き続き、地に足をつけてがんばります。シーズン序盤での成功のほとんどは、Hondaとチームのサポートのおかげです」
ダニ・ペドロサ(MotoGP ランキング2位)「ヘレスのレースウイークのあとの月曜日は、実りあるテストを行うことができました。ル・マンでは過去にいい結果を残したことがあるので楽しみです。楽しいサーキットですので、マシンがうまく機能することを願っています。ル・マンは天気が変わりやすく、プラクティスの使い方が難しくなったり、複雑になったりします。しかし、マシンは再び快適になってきましたし、チームともうまく仕事をしています。これまでのすべての経験を生かして、集中力を切らさずにがんばります」
アルバロ・バウティスタ(MotoGP ランキング6位)「ヘレスのレースウイークと、そのあとのテストを終え、モチベーションは上がっています。スペインGPの決勝で課題になったリアグリップをよくするために、一生懸命がんばりました。テストではいくつか解決策を見つけることができました。今は、正しい方向へ向かっていると思います。HRCやショーワといい仕事ができていますし、ル・マンには気持ちを新たに向かうことができます。ル・マンでは過去にそれほどいい結果を出したことはありません。そして天気に左右されるところです。昨年はドライコンディションでは悪くなかったのですが、決勝レースはウエットとなり、バイザーが曇って苦戦しました。目標はトップ5で戦うことです。前進しているので自信はあります。ここはストップ&ゴーのサーキットで、切り返しが多くあります。かなり低速で、テクニカルなサーキットなので、いい走りができるはずです。しかし、ロングストレートがないので休む場所がなく、体力が必要となります」
ステファン・ブラドル(MotoGP ランキング11位)「3戦を終えて、2度も完走することができませんでした。ヘレスのテストでフロントエンドの問題を一部解決できました。ル・マンは好きなサーキットです。最高峰クラスにデビューした昨年は、5位でフィニッシュしました。そのため、今回はトップグループに戻りたい気持ちも強く、モチベーションも高くなっています。しかし、コーナー進入とライディングスタイルに影響するセットアップに、今回も取り組まなければなりません。ル・マンでいいベースのセットアップからスタートできるようにと、ヘレスではテストに集中しました。その成果を生かし、セッションを通してパッケージを調整していきたいです」
ブライアン・スターリング(MotoGP ノーポイント)「ヘレスの結果は、今でもとてもうれしく思っています。この先のレースで、もっとがんばる気持ちになることができました。周回を重ねるごとに、MotoGPクラスに慣れてきました。そしてさらに自信を持ってプッシュできるようになってきました。早くル・マンに行って走りたいです。初めて走るサーキットですが、とても楽しみです。この先の7つのサーキットのうち、走ったことがあるのは1カ所しかありません。そのため、セットアップに早く取り組めるようにするためにも、集中して一生懸命学び、すぐに慣れなければなりません。前回進展がありましたので、引き続き、この調子でがんばります。ポイントを獲得するという目標を達成できる日は近いと思います」
エステベ・ラバト(Moto2 ランキング1位)「チャンピオンシップをリードして大会を迎えるのは初めてなので、今の時点では、なにを期待したらいいのか分かりません。ル・マンはとても難しいサーキットで、ハードブレーキングポイントはあまりありません。また、天候も変わりやすいです。自信はありますが、Moto2クラスは接戦なので、常にがんばらなければなりません」
スコット・レディング(Moto2 ランキング2位)「力強いシーズンのスタートとなりました。ここまでの3戦で、トップとの差はわずか1ポイントです。しかし、まだシーズン序盤なので、総合順位は、ランキング上のものに過ぎません。重要なことは、これまでと同じような気持ちでル・マンへ向かうことです。そして、フリー走行と予選ではしっかり仕事をして、日曜日にはいい結果を出すことです。これまではこの方法でうまくいきましたので、きっと今回もうまくいくと思います」
ポル・エスパルガロ(Moto2 ランキング3位)「ル・マンは好きです。昨年はドライでかなり速く走ることができました。しかし、今年はここまでのところ、あまりうまくいっていませんので、なにを期待したらいいのかよく分かりません。100%でプッシュするのは確かです。これまでの数戦での問題を忘れてベストを尽くします」
中上貴晶(Moto2 ランキング6位)「第2戦アメリカズGPは、トラブルでリタイアしましたが、スペインGPで再び表彰台争いができました。予選では3戦連続フロントロー獲得です。決勝は、表彰台を狙える状態にマシンが仕上がっていませんでしたが、エスパルガロと3位争いをすることができました。ル・マンは、125ccクラス時代にベストリザルトを残したコースで、苦手意識はありません。昨年の大会は転倒リタイアでしたが、いいレースができたと思っています。今年は2回目の表彰台、Moto2初優勝を狙って全力で挑みたいと思います」
高橋裕紀(Moto2 ノーポイント)「前回のスペインGPは、ニューフレームで走ることができました。結果も期待していたのですが、残念ながらポイントを獲得することができませんでした。コンディションが難しかったこと、ベースのセッティングがないことが、セットアップを難しくしました。しかし、スペインで得たデータは、フランスで生かせると思いますし、シャシーは間違いなくいいので、今度は結果につなげたいと思っています。ル・マンは、250ccクラスで初優勝したサーキット。Moto2でも2年前にモリワキで表彰台に立っていますので、いいレースをしたいと思っています」
ブラッド・バインダー(Moto3 ランキング6位)「ル・マンはSUTER Hondaと相性がいいので、とてもうまくいくと思います。トップスピードではKTMが少し上ですが、ル・マンにはそれほど長いストレートがありません。コーナーではアドバンテージが利用できると思います」
アレクシ・マスボー(Moto3 ランキング11位)「フランスGPは、家族や友人、スポンサー、そして僕のファンも来てくれますので、重要な週末になります。皆の前でいい結果を出したいです。2003年に初めて経験したフランスGP以外は、ホームレースというプレッシャーが影響したことはありませんでした。しかしホームグランプリは、すべてを完ぺきにしたいので、いつも緊張します。ル・マンはブレーキングと加速がハードでMoto3クラスとは相性がいいです。一番難しいのは天気です」
ダニー・ウェッブ(Moto3 ランキング14位)「ル・マンへ行くのがとても楽しみです。ヘレスでは、ポイントは獲得できましたが、あまりいい結果は出せませんでした。しかしもう終わったことですので、今はル・マンへ向けて気持ちを切り替えました。このサーキットはHondaと相性がいいので、いい結果が出せると思います」
渡辺陽向(Moto3 ノーポイント)「ここから先の大会は、初めて走るサーキットが続きます。今まで以上に厳しいレースになりますが、しっかりコースを攻略して、いい成績を残せるようにしたいと思います。前戦スペインGPは、レースウイークの中では、決勝が一番納得できない走りでした。今大会は、決勝で一番いい走りができるようにがんばります」