第17戦ポルトガルGPが、10月29日から31日の3日間、リスボン郊外のエストリル・サーキットで開幕する。一昨年は春の開催だったが、昨年に引き続き今年は秋の開催。タイトル争いは第15戦マレーシアGPでホルヘ・ロレンソ(ヤマハ)が獲得して決着しているが、第17戦ポルトガルGP、2週連続開催となる最終戦第18戦バレンシアGPは、さまざまなプレッシャーから解放された選手たちがのびのびと本領を発揮する興味深い戦いとなる。
エストリルは、一周4.182km。約1kmの長いストレートでは最高速が300km/hを超えるが、最もスピードの落ちるヘアピンでは50km/h台と、シーズンを通じて最も速度差の大きなサーキットとして知られる。そのため、バランスのいいエンジンと車体が要求されるが、さらに、右コーナーが多いためにタイヤの左右の温度差が激しく、タイヤメーカーにとっても厳しいタイヤ作りを要求されるコースでもある。エストリルは、1972年に完成、パドックが全面改修された2000年にグランプリが初開催され、今年で11回目を迎える。
第14戦日本GPのフリー走行で転倒して左鎖骨を骨折、前戦、第16戦オーストラリアGPで復帰したダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)だったが、回復が思わしくなく予選を終えた段階で欠場を決めた。日本、マレーシア、オーストラリアと続いた3連戦。一度も決勝レースを戦うことのなかったペドロサだが、今大会は、オーストラリアGPから1週間のインターバルがあったこともあり、左鎖骨もかなり回復している。完治にはほど遠いが、まずまずのコンディションで挑めそうだ。
ペドロサは、2006年に最高峰クラスにスイッチしてから、07、08年は2位、09年3位と3年連続表彰台に立ってきた。前3連戦は、出場できなかったことでノーポイントに終わったが、依然として総合2位をキープ。エストリルで4年連続表彰台と総合2位キープを目標に全力を尽くすことになる。
前戦オーストラリアGPで、トラブルのためにリタイアしたアンドレア・ドヴィツィオーゾ(Repsol Honda Team)は、総合3位のケーシー・ストーナー(ドゥカティ)に26点、総合4位のバレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)に18点差の総合5位。残り2戦で総合3位を目標に全力を尽くすことになる。3年間戦った250cc時代は、05年2位、06年優勝、07年2位と3年連続表彰台に立った。最高峰クラスでは昨年7位だが、シーズン後半戦になって調子を上げているだけに、最も得意とするサーキットに闘志を燃やしている。
ランキング9位のランディ・デ・ピュニエ(LCR Honda MotoGP)も、総合8位のマルコ・シモンチェリ(Team San Carlo Honda Gresini)、総合10位のマルコ・メランドリ(Team San Carlo Honda Gresini)、総合11位のコーリン・エドワーズ(ヤマハ)とし烈な8位争いを繰り広げている。デ・ピュニエは、250cc時代に3回の表彰台を獲得するなどエストリルを得意としている。シーズン中盤戦に負傷した左足の状態もほぼ回復。残り2戦で総合8位獲得に気合を入れている。
シーズン中盤以降、調子を上げて、総合ポイントでも着実に順位を上げてきたシモンチェリは、予選、決勝ともに今季ベストを狙う。前戦オーストラリアGPでは予選4番手。決勝では今季ベストタイの6位。250cc時代、エストリルは最も得意としてきたサーキット。昨年の大会では優勝しているだけに、MotoGP初レースの今年は今季ベストリザルトを狙う。
チームメートのメランドリも残り2戦でベストリザルトに闘志満々。また、ケガのためにシーズン中盤の6戦に欠場、復帰してから6戦連続でポイント獲得の青山博一(Interwetten Honda MotoGP)も、今季ベストリザルトを獲得した第15戦マレーシアGPの7位以上を目標にベストを尽くす意気込みだ。
MotoGPクラス同様、第15戦マレーシアGPでトニー・エリアス(Gresini Racing Moto2)がタイトルを獲得したMoto2クラスは、フリアン・シモン(Mapfre Aspar Team)、アンドレア・イアンノーネ(Fimmco Speed Up)の総合2位争いが白熱している。日本人勢は、総合8位の高橋裕紀(Tech 3 Racing)が今季2勝目、今季3回目の表彰台に気合満点。4戦目を迎える國川浩道(Bimota-M Racing)も、左足の負傷も順調に回復、今大会は初ポイントを狙う。
ダニ・ペドロサ(MotoGP ランキング2位) 「今週のエストリルから復帰するが、オーストラリアの時より左鎖骨の状況はだいぶんよくなっていると思う。エストリルはフィリップアイランドほど体力的に厳しくはなく、かなり気持ちよく乗れると思う。オーストラリアからの約10日間に順調に回復している。先週の火曜日に病院に行って抜糸した。傷口は大丈夫だった。筋肉のリハビリをずっとしてきたので、今はだいぶん力もついた。でも金曜の朝にバイクに乗ってみるまではどの程度の違いがあるかはなんとも言えない。アラゴン同様、今回、金曜日に2回のフリー走行があるので、体調が完全ではない自分にとっては助けになる。エストリルはバンピーでいくつかのハードブレーキングポイントがある。でも左コーナーより右コーナーが多いので左鎖骨への負担は大きくないし、いい結果を残せるようにがんばりたい」
アンドレア・ドヴィツィオーゾ(MotoGP ランキング5位) 「精神的にもマシン的にもいい状態でポルトガルGPに向かうことができる。エストリルでは、いい結果が残せると思う。日本とマレーシアで2位になれたし、オーストラリアではもう少しで表彰台というところまでいった。だから今回も、それ以上のリザルトを目標にしたい。ポルトガルでは、これまでいいレースをしてきた。昨年は7位だったけれど、今年はトップ3を狙って戦いたい。レイアウトは低速コーナーが多くコース幅も狭くて、パワーをうまく使いこなすのが難しい。このサーキットの特徴をよく理解して、マシンのいいセットアップを見つけなくてはいけない。今回は金曜日にフリー走行が2回あるので、1回多い走行を十分に利用したい。シーズンの最後の2戦を楽しみにしている」
マルコ・シモンチェリ(MotoGP ランキング8位) 「フィリップアイランドのレースには、非常に満足している。でも、最終的に6位だったので、もっとがんばらなければならない。簡単ではないけれど、それ以上のリザルトを目指して、チームと一緒にがんばりたい。フィリップアイランドのあと、日本に行って風洞でのテストを行った。その後、イタリアに戻って、大好きなエストリルのことを考え始めた。昨年は優勝している。2008年は2位だった。エストリルは自分のライディングスタイルに合う場所だと思うし、マシンのセッティングが決まればいいレースができると思う」
ランディ・デ・ピュニエ(MotoGP ランキング9位) 「エストリルはとても面白いサーキットなので、レースがとても楽しみだ。今週末の天気予報はあまりよくなくて、フィリップアイランドのようになりそうだから少し心配している。でも、速く走れると思うし、トップ8でレースを終わらせられるようにベストを尽くしたい。シーズンももう終わりに近づいているのでチャンピオンシップも大詰め。この前のレースは悪くなかったけれど、もっといいポジションで終えることもできたと思うし、最後の2戦、今季ベストリザルトを狙っていきたい」
マルコ・メランドリ(MotoGP ランキング10位) 「前戦フィリップアイランドは、ウエットはよかったが、ドライになるといつもと同じくフロントの安定性のなさに苦しんだ。マシンの感覚がつかめないから、乗るのが難しい。とても厳しい状況だけれど、まだ希望は失っていない。エストリルではみんながびっくりするようなレースができたらいい。残り2戦。シーズンをいい結果で終わらせたいと願っている」
青山博一(MotoGP ランキング15位) 「3連戦最後のレースとなったオーストラリアはあまりいいレースができなかったけれど、エストリルでは、再び、前進できると思う。このサーキットは好きだけれど、マレーシアとオーストラリアは、まるで違うキャラクターのサーキットだ。エストリルはもてぎに似ているから初日からいい走りができることを願っている。マレーシアはとてもよくて、かなり自信になった。でも、オーストラリアはあまりよくなくて、自信をまた失ってしまった。MotoGPマシンでは、初めて走るコースが続くので、実際に走ってみないと何とも言えない。残り2戦。ベストを尽くしたい」
トニー・エリアス(Moto2 ランキング1位) 「フィリップアイランドは難しいレースだった。原因不明のギアボックストラブルがあり、チームは全力でがんばってくれたけれど、最後まで完ぺきには直らなかった。マシンはとてもいい感触だったし、そのトラブルがなければいい走りができたと思う。レースを終えて、とてもがっかりしたけれど、同時にいいレースができたと思うし、ラストラップはすばらしい走りができた。エストリルでは、不完全燃焼に終わったフィリップアイランドの埋め合わせをしたい。ここはMotoGPクラスで優勝したところで、思い出深いサーキット。故郷で僕の祝賀会を行ってからポルトガルに向かうが、チャンピオンにふさわしい走りをしたい」
フリアン・シモン(Moto2 ランキング2位) 「フィリップアイランドは、ウオームアップで転倒したのが決勝レースに影響して、楽ではなかった。それでもイアンノーネのすぐ後ろの4位でフィニッシュしたし、彼とあまりポイントの差は広がらなかったので、引き続き、総合2位を目標に全力を尽くす。エストリルはトリッキーなサーキットだし、今週末の天気も不安定な予報なので、難しいレースになると思う。残り2戦、ベストを尽くしてMoto2初優勝を狙いたい」
アンドレア・イアンノーネ(Moto2 ランキング3位) 「最後の2戦はとてもエキサイティングなレースになると思う。誰もがいい位置で今年を終えたいと思っているからね。今年は、ここまですばらしい結果をいくつか残してきたし、エストリルでは力をすべて出しきって4度目の優勝をしたい」
高橋裕紀(Moto2 ランキング8位) 「過去3連戦は、日本GPはまずまずのレースができたと思うけれど、マレーシアで転倒、オーストラリアはポイントを獲得できなかった。この数戦は、2年ぶりに走るサーキットが多いけれど、その影響はなくて、マシンのセットアップに課題を抱えている。問題はシーズンを通して変わっていないけれど、今回もセッティングに集中して、ベストを尽くしたい」