日本GP、マレーシアGPから続く3週連続開催となる第16戦オーストラリアGPが、10月15日から17日までの3日間、メルボルン近郊のフィリップアイランド・サーキットで開催される。今年で22回目を迎えるオーストラリアGPは、1989年、フィリップアイランドで始まり、その後、シドニー郊外のイースタンクリークへと舞台を移した。その後、1997年から再びフィリップアイランドで行われるようになり、今年で14年連続(通算16回目)となる。
フィリップアイランドは、野生動物の宝庫として知られ、連日、大勢の観光客が訪れる。体長30cmほどのリトル・ペンギンの保護区やコアラ保護センターなどがあり、メルボルン近郊の観光スポットとして高い人気を誇る。
東西約15km、南北約5kmの小さな“フィリップ島”は海に囲まれている。天候が変わりやすく、風が強いことでも知られ、気象の変化が選手たちを悩ませることになる。島内に位置するサーキットは一周4.448km。高速コーナーが続くハイスピードコースながら、エンジンの性能差が出にくいレイアウトで、毎年、大接戦が繰り広げられる。
フィリップアイランドで開催された過去15回の大会では、オーストラリア出身のワイン・ガードナー、ミック・ドゥーハンなど、これまで歴代6人のHondaライダーが通算9勝を挙げている。過去3年は、オーストラリア出身のケーシー・ストーナー(ドゥカティ)が連続優勝を達成。Hondaにとっては、4年ぶりのオーストラリアGP優勝を狙う大会となる。
この3連戦、最初の大会となった日本GPのフリー走行で転倒して左鎖骨を骨折、日本GPとマレーシアGPを欠場したダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)が、今大会から復帰する。スペイン・バルセロナの病院で手術を行ったペドロサは、手術も成功し、リハビリも順調に進んだ。今大会は、どこまで体調が回復しているのか、実際に走ってみなければわからない未知数の部分も多いが、残り3戦で総合2位をキープするために全力を尽くすことになる。
ペドロサが欠場した2戦、Repsol Honda Teamのエースとして孤軍奮闘、2レース連続フロントローから2レース連続表彰台と調子を上げているアンドレア・ドヴィツィオーゾは、今大会、優勝を狙っている。日本GPでは最高峰クラス初のPPを獲得。マレーシアGPでは予選3番手と2戦連続でPP争いに加わった。そして、日本GPではストーナー、マレーシアGPではバレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)と、し烈な優勝争い。ともに優勝は果たせずも、安定した速さを発揮した。今大会は優勝候補の筆頭に浮上している。
総合ポイントでもロッシが181点、ストーナーが180点、ドヴィツィオーゾが179点と大接戦となっており、総合3位を目標にするドヴィツィオーゾの戦いに大きな注目が集まっている。
以下、Honda勢は、ランディ・デ・ピュニエ(LCR Honda MotoGP)が94点で総合8位、マルコ・シモンチェリ(Team San Carlo Honda Gresini)が92点で総合9位、マルコ・メランドリ(Team San Carlo Honda Gresini)が86点で総合10位、以下、コーリン・エドワーズ(ヤマハ)、ヘクトル・バルベラ(ドゥカティ)、アルバロ・バウティスタ(スズキ)が僅差で続く、厳しい戦いとなっている。
現在、トップ10につけるHonda勢の3選手は、ともに、フィリップアイランドを得意とする選手たちばかり。3選手ともに後半戦になって調子を上げているだけに、今大会の快走に期待される。また、前戦マレーシアGPで今季ベストリザルトの7位でフィニッシュした青山博一(Interwetten Honda MotoGP)も、250cc時代、フィリップアイランドでは好成績を残してきた。前戦マレーシアGPでは、Honda勢すべてがトップ10フィニッシュを果たしているが、今大会は、復帰のペドロサを含め、6選手の活躍に期待が膨らむ。
Moto2クラスは、MotoGPクラスとともに、前戦マレーシアGPでタイトルが決まった。しかし、ここからの3戦、MotoGPクラス同様、厳しいランキング争いが待ち受けている。総合2位を争う、フリアン・シモン(Mapfre Aspar Team)と総合3位のアンドレア・イアンノーネ(Fimmco Speed up)を始め、トップ10争いをする選手たちが、一戦ごとに大きく順位を入れ替えることも予想される。ここまで大接戦を繰り広げてきたMoto2クラス。フィリップアイランドの戦いは、今季最高のバトルになる可能性が高い。
ダニ・ペドロサ(MotoGP ランキング2位) 「マレーシアGPを欠場するという決断は、とても難しかった。でもそれから1週間がたって、かなり自分のコンディションがよくなっているし、欠場は正しい判断だったと思う。いま、オーストラリアに行って、バイクに乗ってみて、どのくらい走れるのか楽しみだ。フィリップアイランドには、水曜日に着く予定なので、長距離移動の疲れを取るため少し休みたい。フィリップアイランドはハイスピードコースでバイクと格闘しなければならないし、気候も変わりやすいので大変だ。でも、日本で転倒するまでのハイレベルなパフォーマンスにすぐ戻れると信じている。手術のあと、リハビリをすぐに始めた。手術は非常にうまくいって、プレートもきちんと固定された。一番の問題は手術をした鎖骨よりも、首と肩全体の動きだった。マッサージを受け、理学療法士とともに身体を調整したし、これをオーストラリアでも続けたい。チャンピオンシップはすでに決定したが、ランキング2位を守らなくてはいけないという目標がある。それを果たすために全力を尽くし、ウインターテストにいい形で入っていきたい」
アンドレア・ドヴィツィオーゾ(MotoGP ランキング5位) 「2つの全く異なるレイアウトのサーキットとコンディションの中で、日本、マレーシアと2戦連続で表彰台に立ち、とてもいい状態でオーストラリアへ向かう。とても大きな一歩を踏み出せたと感じているし、マシンの状態もとてもよくて、今度は優勝を目指して戦いたい。マレーシアでは、ロッシとほんの0.2秒差でフィニッシュした。このレベルを保たなければいけない。過去2戦、優勝したライダーは違うけれど、僕は連続2位。だからフィリップアイランドでもいいレースをする自信がある。フィリップアイランドは、アベレージが高くテクニカルなコース。ランキング3位で終えることを目標にしているし、残りのレースでいい結果を残す必要がある。フィリップアイランドはとても興奮する。海に囲まれていて雰囲気もよく、本当に熱狂的なファンも多い。ただし、いつも天気が不安定。とても変わりやすく、すごく寒くなることがある。でも寒いコンディションは大きな問題じゃないので、オーストラリアGPがすごく楽しみだ」
ランディ・デ・ピュニエ(MotoGP ランキング8位) 「マレーシアが終わって、クルーと話し合った結果、問題はフロントエンドにあるという結論に至った。セパンではハードコンパウンドを使わなければいけなかったのだけれど、それがグリップに影響して、自分の思い通りにコーナーに入れなかった。800ccのMotoGPマシンは、コーナーのエントリーが最も重要になる。今回に向けて何をしなければならないかは分かっている。大好きなフィリップアイランドで金曜日にそれを試すのが待ち遠しい」
マルコ・シモンチェリ(MotoGP ランキング9位) 「セパンのリザルトは残念だったが、セパンでは、たくさんのことを学んだ。そして、大きく前進できたような気がするから、オーストラリアに行くのが楽しみだし、とても待ち遠しい。セパンはこれまでも自分にとっては楽なサーキットではなかったし、ウインターテストは本当にうまく走れなかった。でもそれをなんとか乗り越えたので、いつものように走れるはずだ。フィリップアイランドは大好きなサーキット。自信があるし、いいレースができると思う。まだしなければいけないことはたくさんあるから、完ぺきとは言えないけれど、セパンではいくつか重要な収穫があった」
マルコ・メランドリ(MotoGP ランキング10位) 「レース序盤のミスがなければ、マレーシアGPは今季ベストレースだった。スタートして数周は、フロントの問題がミスを誘発して、それでちょっと遅れてしまった。しかし、ライバルたちよりずっと安定したペースを刻めた。次のフィリップアイランドは大好きなサーキット。セパンのミスを埋め合わせるチャンスだし、自信もある。今シーズンはいいリザルトを残し、いい思い出を作ってシーズンを終えたい。セパンが終わった今、それができる確信がある。チームのみんなとがんばって、いいレースになることを望んでいる」
青山博一(MotoGP ランキング15位) 「フィリップアイランドは特別なサーキットで、天候も不安定だ。この季節、セパンに比べて20℃も気温が下がるので、それにすべてを合わせていかなければならない。サーキットの特徴、天候、なにもかもがセパンと違うし、難しい。しかし、セパンはいいレースができたし、今回もいいリズムでスタートできれば、いいレースができると思う。セパンのデータを分析して、次のレースのために、何ができるか、何をしなければいけないか、考えたい」
トニー・エリアス(Moto2 ランキング1位) 「セパンは楽な週末ではなかった。僕がワールドチャンピオンになると、みんなが言っていたけれど、すごく緊張したし、そういうことを聞かないようにしていた。しかし、ついに僕たちは目標を達成したし、いろんなことから解放された。夢が現実となって、日曜日は長い夜となった。たくさんのインタビューを受け、みんなとタイトル獲得の喜びを分かち合った。みんなのために、ワールドチャンピオンになりたかった。そして自分のチームと自分の家族とともに、これを祝うことができた。本当にすばらしい時間だった。もう自分たちとはともにいない人々、そして自分のすぐ近くにいる人々を想って泣いた。オーストラリアへはだいぶんリラックスして行ける。大好きなサーキットなのでチャンピオンにふさわしい走りをしたい」
フリアン・シモン(Moto2 ランキング2位) 「セパンでは運が味方をしてくれなかったけれど、気を取り直して、前向きに考えなければいけない。オーストラリアに向けて自信を取り戻さなくてはいけない。フィリップアイランドは大好きなサーキットの1つ。日曜日に優勝できるように金曜日からすべての力を出していきたいし、これが自分の一番の目標になる。セパンではチャンスを逃した。とにかく勝つために全力を尽くした。うまくいかなかったが、幸いチャンピオンシップではまだ2位なので、依然として今回も重要なレースになる。昨年、125ccでタイトルを獲得して以来のフィリップアイランドとなる。それもあって今シーズン最初の優勝ができるようにがんばりたい」
高橋裕紀(Moto2 ランキング8位) 「後半戦のスタートとなったチェコで表彰台に立って以来、なかなかいいレースができていない。特にこの数戦は、マシンが決まらず苦戦が続いている。前戦のマレーシアもブレーキに課題を抱えていた。決勝に向けてなんとか普通に戻したのだが、ペースが上がってしまうとリズムが崩れてしまい、転んでしまった。今回も変わらずマシンは厳しい状態が続いているが、なんとか完走してポイントを獲得したい。できることなら、表彰台を狙いたい」