スペインで今季3回目。初開催となるアラゴンGPが、9月17日から19日の3日間にわたって繰り広げられる。アラゴンGPは、キャンセルされたハンガリーGPの代替として開催されるもので、125cc、Moto2クラスはシーズン中に合同テストが行われているが、MotoGPクラスは、今大会が初走行となる。そのため、今大会は金曜日のフリー走行が午前、午後の2回となり、通常よりセッションが1回多くなっている。
モーターランド・アラゴンは、バルセロナの南西200kmに位置し、他のサーキットに比べてもエキサイティングなコースレイアウトとなっている。このサーキットは、セパンやイスタンブール、上海、バーレーンなどのサーキットを手がけているデザイナーたちがデザイン。反時計回りでアップダウンに富み、一周5.077km。バリエーションに富んだ16のコーナーがある。Hondaライダーたちは、市販車CBR1000RRでコースの下見を行っており、おおむね好評。開幕を待ちきれない様子だった。
インディアナポリスGP、サンマリノGPと2連勝を達成。今季4勝を挙げている総合2位のダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)は、シーズン3回目のホームGPで連勝記録と通算勝利数を伸ばす意気込み。この2連勝で総合首位のホルヘ・ロレンソ(ヤマハ)とのポイント差も着実に縮めている。依然としてその差は大きいが、今大会ではさらにプレッシャーをかけていく意気込み。総合3位のアンドレア・ドヴィツィオーゾ(Repsol Honda Team)も、第5戦イギリスGPで2位表彰台に立って以来、7戦表彰台から遠ざかっているだけに気合満点。Repsol Honda Teamの両選手の活躍に大きな注目が集まっている。
第8戦ドイツGPの決勝中に左足を負傷したランディ・デ・ピュニエ(LCR Honda MotoGP)は、第10戦チェコGPに復帰して10位と、驚異的な走りを見せた。しかし、インディアナポリスGP、サンマリノGPは、完全に回復していない左足に厳しいレースとなり、連続13位にとどまったが、今大会は再びトップ10を狙う意気込みだ。
前戦サンマリノGPで10位に終わったマルコ・メランドリ(Team San Carlo Honda Gresini)。好走しながら転倒、再スタートで14位に終わったマルコ・シモンチェリ(Team San Carlo Honda Gresini)も、今大会からの復活を狙っている。メランドリは、前戦サンマリノGPのMoto2クラスで亡くなった富沢祥也選手の事故に大きな衝撃を受けた。シモンチェリも、富沢選手の事故にコメントできない状態だったが、今大会は、その悲しみを乗り越え、ベストを尽くす意気込みだ。
ケガから復帰3戦目を迎える青山博一(Interwetten Honda MotoGP)も、インディアナポリスGP、サンマリノGPの2連戦から1週間のインターバルで、さらに体調が回復。今大会はルーキーにとってハンディキャップの少ない初開催のコース。前戦サンマリノGPの事故で亡くなった富沢選手を追悼する意味でも、今季ベストを狙う意気込みだ。
富沢選手を事故で失ったMoto2クラスの選手たちは、大きな悲しみの中で迎える大会となるが、総合首位のトニー・エリアス(Gresini Racing Moto2)は、今大会では5連勝を目標に、故富沢選手に優勝を捧げる意気込み。ライバルであり、仲のいい後輩を亡くした高橋裕紀(Tech 3 Racing)は、「祥也に恥ずかしくないレースをする」と今季2勝目を狙う意気込みだ。
ダニ・ペドロサ(MotoGP ランキング2位) 「アラゴンでRC212Vで走らせるのを楽しみにしている。7月にストリートバイクのCBR1000RRで数周走ったが、コースのレイアウトをとても楽しめた。このサーキットは大好き。これまで走ってきたサーキットと全然違うので、今週末はとても楽しみだ。このサーキットは高速と低速コーナーが組み合わされているテクニカルコース。しかし、最後のストレートとフィニッシュラインには驚かされた。また、いくつかのブラインドコーナーがあって難しい。施設はすばらしい。ファンにとっても、とても面白くて楽しめるところだと思う。スペインでのレースは毎回とてもうれしいし、信じられないくらい盛り上がる。またスペイン人のファンに会えるのが楽しみだ。僕はここ数戦のチームの努力のおかげでいい結果を出してきたので、いいムードで入れるのもうれしい。シーズン後半になって予選がよくなった。僕たちのマシンはどんなサーキットでもよく走れるようになってきているし、アラゴンでもいい走りができることを願っている。今回のグランプリが本当に楽しみだ」
アンドレア・ドヴィツィオーゾ(MotoGP ランキング3位) 「新しいトラックでの挑戦はいつも楽しい。だれも知識がなくて、みんなゼロからスタートできるからね。だから今週末のレースは特に楽しみだ。先週、CBR1000RRで数周走ることができたけれど、とても面白かった。基本的なコースのレイアウトを学べたし、金曜日にRC212Vのマシンのセットアップをどう始めたらいいかのアイデアも見つかった。ストリートバイクでコースを走るのは初めてだったけれど、楽しかった。アラゴンのサーキットはとてもいい。高低差があり、たくさんのブレーキングポイントがあって切り返しも多い。そのためテクニックが必要になるし、オーバーテイクできるポイントもたくさんあると思う。だから、とてもいいレースになると思う。僕たちにとっては、早くこのサーキットに対してのアイデアを見つけることが大事で、RC212Vのセットアップでいいスタートを切られるようにしたい。アラゴンではいい結果を残せると思う。ミサノやその前のレースでは、速さはあったけれど結果につなげられなかった。今回はレース終盤でもきっちり速さを出して、いい結果につながるようにしたい。それが今週末の目標だ」
ランディ・デ・ピュニエ(MotoGP ランキング8位) 「今回のレースがとても楽しみだ。6月に数周走ったときは楽しかったからね。恐らく、MotoGPのマシンとチームにとっては、面白く感じるサーキットだと思う。サーキットには高速、低速コーナーがあって、とてもテクニカルで、僕のライディングスタイルに合っていると思う。正直、ミサノのレースは、とても疲れた。ケガの回復がすごく早くて、思っている以上に無理をしていたのかもしれない。今は集中して、もう少しレベルを上げていかないといけないと思う。予選に向けて、きっちりセットアップをしていくために最善の努力をしていかなければならない。そしてシーズンを通じて、プライベートチームの中でベストの結果を残せるようにしたい」
マルコ・メランドリ(MotoGP ランキング9位) 「早くサーキットに戻って、ミサノでのとても悲しい出来事を忘れたい。ミサノでは開幕前日の故加藤大治郎のイベントでロリス・カピロッシ(スズキ)に失礼な発言をした。そのことを謝罪したい。そして日曜日のMoto2のレースでは、富沢にとって最悪な事故が起こった。そこは僕が2007年にひどい転倒をしたコーナーだったし、僕は当時、そこの人工芝について危ないと意見した場所で、だれも僕の意見に耳を貸さなかったところだったから、余計に憤りを感じた。木曜日のセーフティ・コミッションでこのことについて再び意見するつもりでいる。ミサノでは、Moto2のレースであんな事故があり、レースに対する楽しみが失せてしまった。でもアラゴンではフリー、予選とすべてのセッションで全力を出したい。そしてシルバーストーンの転倒前に見つけたフィーリングを取り戻したい。奇跡を期待してはいないけれど、一生懸命努力していいレースをしたい」
マルコ・シモンチェリ(MotoGP ランキング11位) 「ミサノのレース直後に、富沢が巻き込まれた悲惨な事故のことを聞いた。僕はとてもショックを受けたし、とても残念だった。僕自身のレースを振り返ることもできなかった。ようやく自分のレースを振り返ることができるようになったときには、とにかく、自分のミスにがっかりしていた。いい走りをしていたから、すごくもったいなかった。僕はトップ5のすぐ後ろにいて、エドワーズ(ヤマハ)にアドバンテージを築いていたからね。いい結果を残せるはずだったのに、愚かなミスで台無しにしてしまった。もったいなかったし、アラゴンで埋め合わせをしたい。アラゴンではいつもより1回多くプラクティスがあるから、ミサノでよかったベースセッティングから始めたい。ほかのライダーたちがアラゴンで数周走ったのも知っているし、ロッシ(ヤマハ)は、高速コーナーや高低差があって、いいサーキットだって教えてくれた。だから僕に合うだろうし、いいレースができる自信がある」
青山博一(MotoGP ランキング17位) 「新しいサーキットでのレースを楽しみにしている。新しいサーキットだから、僕たちルーキーと経験あるMotoGPライダーたちの差がそれほど大きくないと思うからね。この状況なら、これまで遅れていた部分を少しでも埋め合わせることができると思う。体調はだいぶんよくなっている。まだ100%じゃないけれど確実に回復しているのがわかるし、ミサノでも、すでにインディアナポリスとの大きな違いが感じられた。この調子で続けていけたらと思う。また、今回はセッションが4回あるのでとても面白いし、僕みたいなルーキーには走る時間が多いというのは、それだけでプラスになる。4回のセッションを終えてどう感じるかだが、走行時間がいつもよりあるのはアドバンテージだと思う」
トニー・エリアス(Moto2 ランキング1位) 「体調はまだ完ぺきじゃないけれど、ミサノではすばらしいレースができた。実際はものすごく大変だったけれど、いい結果を残すことができた。土曜日にポールポジションを獲得して、日曜日に優勝したことも、サーキットからほんの数キロのところにあるチームに、いいプレゼントになったと思う。またチャンピオンシップ争いで追い風にもなった。僕たちにとっては最高の日だったが、そんな偉業達成も、富沢祥也が亡くなったことで意味をなさなくなった。我々のスポーツにとっては非常に悲しい出来事で、彼の冥福を祈るとともに、家族に対して、お悔やみを申し上げたい。今大会は、富沢祥也の48番をスペインのファンとともに心に抱いて戦い、優勝して勝利を彼に捧げたい」
フリアン・シモン(Moto2 ランキング2位) 「ミサノで2位表彰台に立ったあとなので、アラゴンに向けてモチベーションがとても上がっている。チャンピオンシップも2位に上がったので、このいい流れに乗っていきたい。7月にここで行ったテストではいいフィーリングだったし、ラップタイムもよかった。とても楽しめた場所だったので、また戻るのがとても楽しみだ。テストではいいセッティングを見つけたので、金曜日からいいスタートを切りたい。ホームレースなのですばらしい週末にしたい」
トーマス・ルティ(Moto2 ランキング3位) 「アラゴンでは全員がテストしているので、すべてのライダーが同じ条件。テストのデータもあるし、それがアドバンテージになると思う。ミサノのようなレースを今回もしたい。ベースのセッティングをあまり変えず、ミサノの延長戦上でやっていきたい。今回はトップグループにくっついていくのを目標に、全力を尽くしたい」
高橋裕紀(Moto2 ランキング9位) 「ミサノのレースは、本当に悲しく、つらかった。アラゴンに向かう前に祥也の通夜に出たが、まだ信じられない気持ちだし、気持ちの整理がつかない。しかし、前に向かって進むしかないし、祥也に笑われないようにしっかりとレースを戦いたい。インディアナポリス、ミサノとひどい結果だったので、今回は3戦ぶりの表彰台を目標にベストを尽くしたい」