今年で3回目を迎えるインディアナポリスGPが、8月27日から29日の3日間、インディアナポリス・モータースピードウェイで開催される。644mのメインストレートは、4輪レースで世界最大規模のイベントとして名高い“インディ500”で使用されるオーバルコースを利用。1コーナーでオーバルを外れ、新設されたインフィールドを周回する。MotoGPを開催するために造られた左回りの一周4.216kmのサーキットは、左コーナー10、右コーナー6のテクニカルコース。ラグナセカにインディアナポリスが加わり、米国で年2戦が開催されるようになって3年目のシーズン。インディアナポリスはインディ500で有名だが、インディアナポリスGPもすっかり定着した。
前戦チェコGPで今季3回目のPPを獲得。今季3勝目の期待の中で惜しくも2位に終わったダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)は、今大会はその雪辱に闘志満々。インディアナポリスでは昨年、初日から好調な走りを披露して予選でPPを獲得した。決勝でも好スタートからレースの主導権を握ってトップを快走、インディアナポリス初優勝の期待が膨らんだが、序盤に最終コーナーで痛恨の転倒、再スタートを切って10位でチェッカーを受けるという悔しいレースだった。初開催となった一昨年は、ハリケーンの直撃を受ける大荒れのレースとなり8位。これまでインディアナポリスでは表彰台に立っていないだけに、3年目の今年は、2年連続PPと初制覇に気合を入れている。
チームメートのアンドレア・ドヴィツィオーゾ(Repsol Honda Team)も、3年目となるインディアナポリスGPで、今季5回目の表彰台と今季初優勝に闘志を燃やす。ハリケーン直撃となった一昨年の大会では、レース序盤にトップを走るなどすばらしい走りを見せて5位。昨年の大会も表彰台にあと一歩と迫る4位でフィニッシュしている。前戦チェコGPでは、予選6番手から好走を見せたが痛恨の転倒リタイア。シーズン中盤戦に入って、フリー、予選の走りを結果につなげられていないだけに、そのフラストレーションを一気に発散する意気込みだ。
第6戦オランダGPで左肩を脱きゅうしてシーズン中盤戦に厳しい戦いを強いられたマルコ・メランドリ(Team San Carlo Honda Gresini)だが、前戦チェコGPでは8位と復活の兆しを見せた。決勝レース後の事後テストでは、今年の課題になっているフロントのセッティングで前進、肩の状態もよくなっているだけに、今大会は今季ベストリザルトをターゲットに全力を尽くす意気込みだ。
シーズン中盤戦に入って、転倒が続いているマルコ・シモンチェリ(Team San Carlo Honda Gresini)も、得意のインディアナポリスで今季ベストリザルトを狙っている。ラグナセカ、チェコと、フリーと予選で転倒が続いているのは、攻めの走りができてきた証明でもある。この数戦は、シーズン中盤戦に入って投入されたニュースペックの車体と電気系のセットアップに集中している。今大会は6位以内を目標にしている。昨年の大会では250ccで優勝している相性のいいサーキット。ここから後半戦の走りに注目したい。
第8戦ドイツGPで左足けい骨を骨折、アメリカGPを欠場したランディ・デ・ピュニエ(LCR Honda MotoGP)は、前戦チェコGPで復帰、完全な状態にはほど遠いながら10位と熱走を見せた。アメリカGPの欠場などでランキングは8位にダウンしているが、今大会は8位以内でのフィニッシュを目標に挑む。インディアナポリスは左コーナーが多く、左足が完全ではないデ・ピュニエには厳しい条件となるが、チェコGPからの今大会までの10日間で、足の状態もかなり回復しているだけに、目標達成に闘志を燃やしている。
第5戦イギリスGPのウオームアップで転倒、負傷欠場していた青山博一(Interwetten Honda MotoGP)が、6戦ぶりに復帰を果たす。前戦チェコGP終了後の合同テストに参加、順調に周回を重ねられたことから、今大会での復帰を決めた。今週初めの医師の検診で正式に出場許可も下りて、水曜日にインディアナポリス入りする。まだ完全な状態ではないために、徐々にペースを上げていくことになるが、チェコGP後の合同テストでトライした、新しい電子制御に手応えを感じているだけに、ここから後半戦の走りに大きな注目が集まっている。
Moto2クラスは、9戦を終えて4勝を挙げているトニー・エリアス(Gresini Racing Moto2)が、2位以下に大量リードを築き、タイトル獲得に大きく先行している。MotoGPクラス時代も、インディアナポリスは得意としていただけに、今大会は3連勝と今季5勝目を狙う。エリアスを追う2位以下は大接戦。エリアスの連勝を阻止しようとライバルたちも闘志満々で、今大会も厳しい戦いが予想される。
今季2勝を挙げて総合2位のアンドレア・イアンノーネ(Fimmco Speed up)は、ドイツGP、チェコGPと2戦連続でエリアスに先行を許し、その差を55点に広げられているだけに、その差を縮めるためにも今大会は今季3勝目に挑む。総合3位のトーマス・ルティ(Interwetten Moriwaki Moto2)は、過去2戦低迷しているだけに、巻き返しに気合満点。以下、フリアン・シモン(Mapfre Aspar Team)、富沢祥也(Technomag-CIP)、ジュール・クルーゼル(Forward Racing)、シモーネ・コルシ(JIR Moto2)、前戦チェコGPで今季2回目の表彰台に立って総合8位にポジションを上げてきた高橋裕紀(Tech 3 Racing)までがポイント争いで大接戦。前半戦のリードを守りたい総合首位のエリアスと、追い上げるセカンドグループのし烈な戦いが大きな注目を集めそうだ。また、今大会、手島雄介が「JIR Moto2」から引き続き代役として出場する。
ダニ・ペドロサ(MotoGP ランキング2位)「昨年のインディアナポリスGPは、初日からいいフィーリングで走ることができたし、ポールポジションも獲得できた。何もかもが順調だったのだが、唯一の失敗は、決勝レースで勝てなかったことだ。今年はいい状態を継続していいリザルトを残したい。前回のチェコGPは、金曜日、土曜日と順調だったが、コンディションが変わりやすく、決勝で勝てなかった。今回も金曜日のプラクティスがとても重要になる。昨年の大会で我々はとてもいいベースのセッティングを持っていたので、方向性も分かっているし、きっちりとセッティングを進めたい。チェコGPでは勝てると思っていたし、その雪辱を果たすのが今回の目標になる。インディアナポリスはブルノとはまるで違う特徴を持つサーキットだが、すばらしいファンの声援の中でレースを戦えるのがうれしい。今週のレースを、とても楽しみにしている」
アンドレア・ドヴィツィオーゾ(MotoGP ランキング4位)「アメリカで開催されるレースはいつも楽しみにしているが、それは今回も同じで、インディアナポリスで走る日が待ちきれない。インディアナポリスはアメリカらしいサーキットで、特にグランドスタンドには圧倒される。MotoGPクラスのコースとしては、特別面白いとは思わないが、サーキットのムードは独特なものがある。インディアナポリスはオーバルとインフィールドで路面状況がいくつか異なるところがあって、セッティングを合わせていくのが難しい。その路面に対応できるバランスを見つけなくてはいけない。前回のブルノは、決勝レースの結果をのぞけば、成果のあるレースだった。マシンの状態もよく、決勝に向けてアベレージもよかった。昨年の大会は4位だったけれど、トップグループに比べてペースは遅く、内容もよくなかった。昨年のダニはすばらしく速かった。昨年のダニのようなペースで走れればいい結果を残せるはずだ」
ランディ・デ・ピュニエ(MotoGP ランキング8位)「インディアナポリスは左コーナーが多く、ドイツGPで負傷した左足がまだ完全に治っていないので、厳しいレースを強いられることになりそうだ。インディアナポリスは、正直、あまり好きなサーキットではない。パートによって舗装が異なるし、グリップのレベルも違う。個人的な意見としては、安全性も十分とはいえない。しかし、今回もトップ8を目標に全力を尽くしたい。チェコGPが終わってから10日間、リハビリとトレーニングで左足を強化してきた。足の状態はまだ100%ではないが、チェコよりはかなりよくなっている」
マルコ・シモンチェリ(MotoGP ランキング11位)「前回のブルノの結果にはとてもがっかりしたが、レース序盤はいい走りができた。この点では大きな自信になったし、次につながる走りができたと思う。月曜日の事後テストでは、電子制御のセットアップに取り組んで、大きなステップを刻むことができた。新しい電気のシステムを理解するためには有意義な一日だった。いまのマシンは、まだまだやることがたくさんあって、車体のセットアップにも取り組まなくてはいけない。インディアナポリスでは昨年、250ccクラスで優勝しているし、今年はトップ6でフィニッシュすることを目標にがんばりたい」
青山博一(MotoGP ランキング17位)「6月の第5戦イギリスGP以来、6戦ぶりに復帰することになり、本当にうれしい。前戦チェコGP後の月曜日のテストで約2カ月ぶりにRC212Vに乗った。どのくらい乗れるのかすごく心配だったけれど、思ったよりも順調にタイムを出すことができて、大きな自信になった。テストを終えてからもバルセロナに戻ってトレーニングとリハビリを続けてきた。今週の月曜日に背中の再検査を行い、異常がないことが確認できた。まだまだ体調を確認しながら復帰することになるが、6戦ぶりのレースが待ち遠しい。インディアナポリスは昨年、250ccで2位表彰台に立っている。今年は復帰戦になるが、みんなが喜んでくれるようなレースにしたい」
トニー・エリアス(Moto2 ランキング1位)「前戦チェコGPの優勝は、自分のキャリアの中でも最高のレースの1つになった。チームにとっても100戦目の表彰台だったし、その記念すべきレースで勝てたこともうれしかった。9戦を終えて、チャンピオンシップでリードしているし、すばらしい仕事をしてくれているチームには感謝している。インディアナポリスは好きなサーキット。今回も優勝を目標に戦うが、チャンピオンシップを念頭に置いてしっかりとチェッカーを受けたい」
アンドレア・イアンノーネ(Moto2 ランキング2位)「この数戦、レース終盤にペースを落としているので、タイヤのパフォーマンスをキープするセットアップに取り組まなければならない。前戦ブルノでは、その成果が出たと思うのだが、まだ十分ではなくて優勝できなかった。インディアナポリスでは、優勝を狙っていきたい」
富沢祥也(Moto2 ランキング5位)「チェコGPは、本当に悔しいレースだった。予選までは完ぺきだったし、決勝レースも、最低でも表彰台には立てると思っていた。しかし電気系のトラブルでエンジンがちゃんと回らず、順位を落としてしまった。残念な結果に終わったが、走りは依然として悪くないので、あとは結果を残すだけ。昨年は初日の走行で転倒してフレームを曲げてしまい、決勝レースに出られなかった。そういう点ではインディアナポリスを走るのがほとんど初めてといってもいいので、遅れを取り戻せるようにしたい。すごく楽しみにしている」
高橋裕紀(Moto2 ランキング8位)「250ccに乗っていた一昨年の大会は悪天候で決勝がキャンセルになり、MotoGPクラスにスイッチした昨年は出場できなかった。2年ぶりのインディアナポリスとなるが、一昨年の250ccの印象は悪くなかったので、すごく楽しみにしている。前回のレースは、中盤から追い上げて2位表彰台に立つことができた。混戦の中で思い通りに走れないというウイークポイントは相変わらずだが、単独になればこうして優勝を狙える状態になっている。インディアナポリスでも優勝を目標にがんばりたい」