ドイツGPから2週連続となる第9戦アメリカGPが、23日〜25日の3日間、カリフォルニア州のラグナセカ・レースウェイで開催される。アメリカGPは、1964年にデイトナで初めて開催されて65年までの2年間開催された。その後、88年にラグナセカに舞台を移し、2度目の中断を経た2005年に復活して今年で6年連続、ラグナセカでは通算12回目、アメリカGPとしては通算14回目を迎える。
ラグナセカは、一周3.610kmとシーズンを通じて最も短いサーキットだが、アップダウンに富んだハイスピードコースで、選手たちの評判はいい。コース前半は上りセクションが続く。最も高いポイントが世界的に有名なコーナーの1つ「コークスクリュー」で、ここからフィニッシュラインまで一気に駆け下りる。パッシングポイントは何個所もあるが、コークスクリューを駆け下り、大きなS字コーナーを終えての最終コーナーが最大の勝負どころ。ラグナセカの名勝負は、過去、ここでたくさん生まれている。
05年にGPが復活してから、Hondaは、05年、06年にニッキー・ヘイデン(現在ドゥカティ)が優勝。昨年はダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)が優勝と5年間で3回の優勝を果たしている。アメリカGP2連覇を狙うペドロサは、最高峰クラスにデビューした06年に2位、07年は5位、08年はケガのために欠場しているが、デビューから大好きなサーキットの1つで、昨年は快速ラップを刻んで見事、アメリカGP初制覇を成し遂げた。先週のドイツGPでは今季2勝目を達成して上り調子。最高の状態でラグナセカを迎えるだけに、アメリカGP2連覇の期待が膨らむ。
ドイツGPで優勝争いに加われず5位に終わったアンドレア・ドヴィツィオーゾ(Repsol Honda Team)が、得意のラグナセカでその雪辱に闘志を燃やしている。最高峰クラスにデビューを飾った08年は4位。昨年はピットレーンの出口に設置されているポールにクラッチレバーをぶつけ、その影響でエンジンブレーキの制御に影響して転倒している。最終的に2位となったロッシと転倒時点で4位争いを繰り広げていただけに、今年はその雪辱に気合を入れている。ラグナセカは、ハードブレーキングを必要とするコーナーが多く、ブレーキングを得意とするドヴィツィオーゾが、4戦ぶり今季5回目の表彰台と今季初優勝を狙う。
シーズン中盤に入って、確実に調子を上げているマルコ・シモンチェリ(Team San Carlo Honda Gresini)。今大会はMotoGPクラスにデビューして初めて走行経験がないサーキットでのレースとなる。しかし、初めてのサーキットへの順応性が高いことで実績のあるシモンチェリだけに、ラグナセカのデビューレースでどんな走りを見せるのか、注目が集まっている。前戦ドイツGPでは、ドヴィツィオーゾとヘイデンとし烈な5位争いを繰り広げて、自己ベストの6位でフィニッシュ。第7戦カタルニアGPで、ニューシャシーにチェンジ、今大会は新しい電子制御が投入されるなど、リザルトの向上に合わせてRC212Vのアップデートが進むだけに、初経験のラグナセカとはいえ、今季ベストリザルトの更新に期待が膨らむ。
第6戦オランダGPで左肩を負傷、依然として完治しないマルコ・メランドリ(Team San Carlo Honda Gresini)だが、得意とするラグナセカに闘志を燃やしている。前戦ドイツGPでは、ケガが思ったように回復しておらず、左回りのサーキットだったために左肩への負担が大きく、厳しいレースを強いられた。ラグナセカも左回りで、ザクセンリンク同様、フィジカル面で厳しいレースになることが予想される。しかし、06年、07年とHonda時代に2度表彰台に立っているサーキットだけに、3年ぶりにHondaに乗り換えた今年は気合満点。同GP3回目の表彰台に挑む。
前戦ドイツGPで転倒、後続車に左足をひかれて骨折したランディ・デ・ピュニエ(LCR Honda MotoGP)は今大会を欠場。代役としてニッキー・ヘイデンの弟、ロジャー・リー・ヘイデンが出場する。ヘイデンは07年にカワサキからワイルドカードで出場し、10位に入っている。MotoGPマシンに乗るのはそれ以来となるが、ラグナセカを得意とするだけに、どんな走りをするか大きな注目が集まっている。
第5戦イギリスGPで転倒負傷した青山博一(Interwetten Honda MotoGP)の代役として、秋吉耕佑からバトンを受け継ぐ形で2戦目を迎えるアレックス・デ・アンジェリスは、ラグナセカ3戦目。前戦ドイツGPでは、2010年型RC212Vでぶっつけ本番の出場となり、ロリス・カピロッシ(スズキ)とバトルして12位でフィニッシュ。今大会はマシンにも多少慣れて、トップ10フィニッシュも期待される。
ダニ・ペドロサ(MotoGP ランキング2位) 「先週のドイツGPは本当にすばらしいレースになった。そして今週のラグナセカは昨年勝っているサーキットなので、そういう意味でも、最高の形でアメリカGPを迎えることができた。ドイツGPは接戦のレースで勝つことができた。ラグナセカも接戦になるサーキットなので、ドイツのようなレースができればいいと願っている。マシンの状態はとてもよくて、ドイツGPは初日からいい走りができた。ラグナセカも初日からセットアップを進めたい。ロレンソ(ヤマハ)はミスのないレースをしている。ストーナー(ドゥカティ)も本来の調子に戻ってきた。そしてバレンティーノ(ロッシ、ヤマハ)も復帰していいレースをした。ライバルたちに勝つためにも、今週も全力を尽くさなければならない。今年はシーズン序盤に苦戦するレースが多かったけれど、いま、優勝争いができる状態に仕上がった。3勝目を狙いたい」
アンドレア・ドヴィツィオーゾ(MotoGP ランキング3位) 「ドイツGPは残念な結果だったので、間を置かずこうしてラグナセカでレースができることがうれしい。ラグナセカは独特なサーキット。ヨーロッパのサーキットとはかなり違うけれど、とても面白い。ファンも熱狂的ですばらしい。毎年カリフォルニアに行くのを楽しみにしている。昨年はいいレースをしたけれど、ピットロードの出口でプラスチックのポールにクラッチレバーをあてて、それでエンジンブレーキの調子が悪くなって転倒してリタイアに終わった。それまではバレンティーノといいバトルができていただけに残念なレースだった。昨年、ダニがここで勝ち、前回のドイツGPでもダニが勝っている。すごく刺激になっているし、自分もいいリザルトを残して夏休みに入りたい」
ランディ・デ・ピュニエ(MotoGP ランキング7位) 「レースは常に転倒するリスクはあるけれど、今回はまったく転倒することを考えてもいなかった。転んだあと足をひかれたとき、大変なことになったなと自分でもわかった。しかし、そのあとの手術はうまくいったし、いまは順調に回復しているので体調もいい。復帰までに6週間必要だと言われたが、8月のブルノに復帰するために全力を尽くしたい。コスタ医師や治療にあたってくれた医師たちに感謝したい」
ロジャー・リー・ヘイデン(MotoGP 今季初出場) 「まず、ランディが1日も早く回復することを願っている。ケガをしたライダーが、代役ライダーが走るのを見るのは決して愉快なことではないと思うが、LCR Hondaがランディの代役として自分を指名してくれたことをうれしく思う。ラグナセカは大好きなサーキットなので、チームのために、そしてアメリカのファンのためにいいレースをしたい」
マルコ・シモンチェリ(MotoGP ランキング9位) 「ドイツGPはいい走りができたし楽しいレースだった。今週のラグナセカは初めて経験するサーキットで、ゲームでしか経験したことがないけれど、どんなサーキットなのか、本当に楽しみにしている。とにかく、初日からたくさんのラップを刻んでコースに慣れたい。初めてのサーキットに慣れるのは早いほうだと思うし、今回から使う新しい電子制御をうまくセットアップしたい。この数戦、着実によくなっているし、前回のドイツはそれを結果につなげることができた。この調子を今週も継続したい」
マルコ・メランドリ(MotoGP ランキング10位) 「ラグナセカはとても難しいサーキットだが、自分の中では、世界で最もすばらしいサーキットの1つだと思っている。先週のザクセンリンクは、身体の状態もよくなっていて、いいレースができると思っていたのだが、実際は、その反対で厳しいレースになってしまった。正直、ラグナセカのレースのころには完全な状態になっていると思っていたし、ドイツのあと、あまりよくなっていなくてがっかりしてしまった。ラグナセカはドイツほど左コーナーが多くないので、いい走りができることを願っている。ラグナセカは大好きなサーキットなので、ザクセンリンクの雪辱を果たしたい」
アレックス・デ・アンジェリス(MotoGP ランキング18位) 「ラグナセカは簡単なコースではないけれど、今年のRVC212Vでレースをするのはこれで2週連続2戦目になるので、先週のドイツよりはいいレースができるはずだ。今回はラグナセカを初めて走るライダーも多い。自分にはマシンに慣れていないというハンディキャップはあるけれど、コースを知っているという点では自分の方が少し有利かもしれない。とにかく、金曜日のフリー走行でいいスタートを切りたい」