第5戦イギリスGPが、18日から20日の3日間、ノーザンプトン近郊のシルバーストーン・サーキットで開催される。シルバーストーンで開催されるのは、1986年以来、24年ぶり。23年間続いたドニントンパークのイギリスGPの歴史は、ひとまず区切りがつくことになった。
イギリスGPは、1949年から1976年までは、「Tourist Trophy」としてマン島の公道コースで開催された。マン島はHondaが世界に初挑戦した舞台。最高峰クラスでは、1966年、67年にマイク・ヘイルウッドが優勝しているが、その後、マシンの進化などスピードが上がりすぎたため、グランプリの舞台は1977年から1986年までの10年間、シルバーストーンに移った。
ロンドンの北、ノーザンプトン近郊にあるシルバーストーンで開催されたグランプリでは、1984年にランディ・マモラ、85年にフレディ・スペンサー、86年にワイン・ガードナーと、ドニントンパークに移るまでの終盤の3年間、Hondaライダーが優勝している。往年の名ライダーの名前が優勝者として次々に登場してくるシルバーストーンの歴史。24年ぶりの復活に大きな関心が集まっている。シルバーストーンは、F1で使用するフルコースだけでなくショートコースなど、いくつものレイアウトがある。24年ぶりのグランプリ開催に向け、シルバーストーンはWGPのために大幅なコース改修を実施、新しいレイアウトによるニューサーキットが準備された。
前戦イタリアGPで今季初優勝を達成したダニ・ペドロサ(Repsol Honda Team)は、シルバーストーンを皮切りに、オランダ・アッセン、そして自身のホームGPとなるカタルニアと続く3連戦に闘志満々。今季2勝目と2連勝に闘志を燃やす。開幕戦カタールGPではセットアップが決まらず苦戦のレースとなったが、ニューシャシーを投入した第2戦スペインGPから第3戦フランスGP、第4戦イタリアGPと確実に前進して優勝にこぎつけた。総合ポイントでも2位に浮上。念願のタイトル獲得に全力を尽くす構えだ。
チームメートのアンドレア・ドヴィツィオーゾも、イギリスGP2連覇と今季初優勝に闘志を燃やす。ドニントンパークでの最後のグランプリとなった昨年の大会では、断続的に雨が降る難しいコンディションのレースを見事に制して、MotoGP初優勝を達成した。ドヴィツィオーゾは、ドニントンパークで開催されたイギリスGPでは、125cc、250cc、MotoGPと3クラスすべてをHonda車で制したただ一人のライダー。24年ぶりにグランプリが開催されるシルバーストーンで、一年ぶりの優勝を狙う。
開幕戦から好調な走りを見せ、表彰台にあと一歩に迫るランディ・デ・ピュニエ(LCR Honda MotoGP)も、リニューアルされたシルバーストーンでの戦いに闘志を燃やす。今大会はすべてのライダーが初めて経験するサーキットとなるが、これ以降、アッセン、カタルニアと得意のサーキットが続くだけに、シルバーストーンで勢いをつけ、あと一歩に迫る表彰台を獲得する意気込みだ。
第3戦フランスGPで6位、第4戦イタリアGPで5位と着実に調子を上げているマルコ・メランドリ(Team San Carlo Honda Gresini)も今大会は今季初表彰台と初優勝を狙う。ヨーロッパラウンドに入ってマシンのセットアップが進み、本来の実力を取り戻してきた。優勝戦線にからめる実力があるライダーだけに、ここからの巻き返しに注目される。天候が不安定なことで知られるイギリス。昨年同様、フラッグ・トゥ・フラッグのレースを得意とする選手だけに、荒れた天候になれば一躍、優勝候補の一角に浮上しそうだ。
メランドリのチームメート、マルコ・シモンチェリも、この数戦、調子を上げてきた。レースでは序盤のミスでポジションを落とし、思ったようなリザルトを残せていない。しかし、マシンのセットアップが決まってきた前戦イタリアGPでは、トップ6を狙えたと上り調子をアピール。今大会は、その自信を結果につなげる意気込みだ。
昨年、ドニントンパークで開催されたイギリスGPの250ccクラスで優勝している青山博一(Interwetten Honda MotoGP)も、相性のいいイギリス大会で今季ベストリザルトを狙う。青山は着実に前進するタイプ。第3戦フランスGP、第4戦イタリアGPでは、開幕戦カタールGPの10位に届かない連続11位だったが、内容は格段によくなっている。また、初めてのサーキットでは過去、好成績を残してきた。24年ぶりに復帰するシルバーストーンで一気に上位進出の期待が膨らんでいる。
激戦が続いているMoto2クラスは、今大会も激しい戦いになりそうだ。4戦を終え、2勝を挙げて総合首位のトニー・エリアス(Gresini Racing Moto2)は、前戦イタリアGPで表彰台を逃し、その雪辱に燃えている。総合2位の富沢祥也(Technomag-CIP)も、フランスGPで転倒リタイア、イタリアGPではラスト2周まで2位を走行していたが、荒れた路面にハンドルを取られロスして6位に終わっているだけに、今大会は3戦ぶり今季3回目の表彰台と今季2勝目に気合を入れている。総合11位の高橋裕紀(Tech 3 Racing)も前戦イタリアGPで8位完走。ここからの巻き返しに燃えている。Moto2クラスは、激しいレース同様にチャンピオン争いも大接戦。毎戦激しく順位が入れ替わっているだけに、ここからの3連戦が、チャンピオン争いの大きなカギを握ることになりそうだ。
ダニ・ペドロサ(MotoGP ランキング2位) 「前回のムジェロで優勝できたので、シルバーストーンは心身ともに、とてもいい状態でサーキット入りできる。イタリアGPはとてもすばらしいレースだった。その勢いをキープするためにも、これからも全力でがんばらなければならない。シルバーストーンは初めてなので、いま言えることはほとんどない。どういうサーキットなのか知るためにビデオなどでチェックしたが、F1とは使用するコースが違うので、あまり参考にならなかった。印象としてはアクセルを開けている時間が長く、右コーナーが多いということ。以前のアッセンのような古いタイプのサーキットのような印象だった。今回は何の予備知識もないまま金曜日のフリー走行を迎えることになるが、それはみんな同じなので、仕方がない。とにかく少しでも早くコースに順応するよう努力したい。ここからの3連戦は、とても重要だし、ミスは絶対にできない」
アンドレア・ドヴィツィオーゾ(MotoGP ランキング4位) 「昨年まで開催されていたドニントンパークは大好きだった。ドニントンでは3クラスで優勝しているし、なくなったのは残念。しかし、シルバーストーンもすごく楽しみにしている。いま、シルバーストーンのデータはなにもないが、それはどのチームも同じ。今大会はだれにとっても、チャレンジの大会となると思う。レイアウトは高速で、RC212Vとの相性はいいと思う。しかし、実際に走ってみないとわからないので、初日が楽しみだ。開幕戦からここまで4戦、とてもいい状態で戦えている。4戦で3回の表彰台。特にイタリアGPは自分にとってホームGPだったし、とてもいい気分で今大会を迎えられる。今大会はワンランク、ステージを上げて優勝したいし、優勝を目標にベストを尽くしたい」
ランディ・デ・ピュニエ(MotoGP ランキング6位) 「開幕戦から前回のイタリアGPまで、完ぺきとは言えないがいい状態で戦えている。これからもこの状態を維持していかなければならない。そして、トップとの差をさらに縮められるように努力していきたい。新しいサーキットのレースは、いつも新鮮で楽しい。みんな同じ条件だからね。シルバーストーンは高速サーキットだというほかは、正直、何も知らない。走ったことがあるライダーに聞けば、路面がバンピーだというくらいの情報しかない。とにかく、英国の天気はいつも不安定で雨が多い。初めて走るサーキットだということもあるし、早くコースに慣れてマシンのセットアップを進めたい。天気がいいことを願っている」
マルコ・メランドリ(MotoGP ランキング7位) 「みんな初めて経験するサーキットなので、とても面白いレースになるんじゃないかなと思っている。しかも、英国の天気は不安定で、今週も天気がどうなるかわからないからね。何が起きるかわからないという点でも、面白いレースになると思う。前回のイタリアは、予選まではうまくセッティングが決まらなかったが、決勝になってすごくいい状態になった。今週は走り始めからいい状態を作りたいし、予選でも2列目までに並びたい。そうすれば、リザルトも大幅によくなるはずだ」
マルコ・シモンチェリ(MotoGP ランキング9位) 「初めて走るシルバーストーンはすごく楽しみにしているけれど、ドニントンパークが大好きだったので、ドニントンでレースができないのはちょっと残念だ。前回のイタリアは、マシンの状態がとてもよくなって、大きなステップを刻めたと思う。決勝ではコースアウトして大きく遅れ、それを結果につなげられなかった。今回はトップ5-6でフィニッシュできるんじゃないかと自分でも期待している。イタリアは、結果はあまりよくなかったが、内容にはとても満足している。着実にステップを刻めている。ムジェロでHondaが優勝したことも、期待を抱かせるうれしい出来事だった」
青山博一(MotoGP ランキング13位) 「フランス、イタリアと同じ11位だったが、レース内容は、イタリアの方が確実によかった。マシンの状態も着実に進歩しているし、セッティングの幅も多少、出てきたと思う。自分としては、ル・マンとムジェロは、250cc時代に表彰台に立ったことがないサーキットだった。苦手ではないのだが結果を残せていないサーキットだったということを考えれば、この2つの11位完走は、ここからの戦いにつながると思う。シルバーストーンは、走ったことがあるライダーがいないと思うし、みんな初めての経験になる。初めてのサーキットでレースをするのは嫌いではないので、今週はとても楽しみにしている」
トニー・エリアス(Moto2 ランキング1位) 「前回のイタリアGPは、総合2位の富沢より1点多くポイントを取ったという点ではよかったが、5位という順位には正直、満足していない。とにかく、ムジェロは厳しいウイークだった。いまでも、あのときこうしていればよかったんじゃないかと考えてしまうほど悔しくてがっかりした。ムジェロは抜き合いの激しいレースだった。ポジションを上げるのは大変だが、落とすのは実に簡単なサーキットだった。ムジェロがシーズンを通じて最も悪いレースになることを願っている。今回のシルバーストーンは優勝を狙いたい。3連戦の最初のレース。ここでいいリザルトを残すことはとても重要だからね」
富沢祥也(Moto2 ランキング2位) 「前回のイタリアはとても面白いレースができたと思うけれど、6位という内容には、かなりがっかりした。自分としては2位になれると思ったし、手応えもあった。最後に自分のミス、ギャップに乗ってタイムをロスしなければいけたと思う。その点が悔やまれるけれど、100%の走りはできたと思っている。フランス、イタリアと2戦連続で表彰台に立てなかったのも悔しい。今回のシルバーストーンは初めてのサーキット。みんな同じ条件になるので、いい結果を狙いたい」
高橋裕紀(Moto2 ランキング11位) 「前回は8位という結果だったが、内容は悪くなかった。開幕から4戦の中で予選グリッドが一番悪く、完走した順位でもスペインGPの4位より悪いが、現状を認識する上で内容あるレースになったと思う。とにかく最後まで走って、マシンの状態を確認できたし、データも得られた。順位は決して喜べるものではないが、ここから先の戦いを考えると、大きな意味を持つレースになったと思う。シルバーストーンは見るのも走るのも初めて。初めてのサーキットは嫌いじゃないので楽しみにしている」